ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違い・メリット・デメリットを解説
ジョブ型雇用とは、仕事内容を明確に定義し、その仕事を担当するために必要な業務経験・スキル・知識・資格などをもつ人材を採用する手法のことです。近年、経団連の提言やグローバル化の影響などにより、ジョブ型雇用への関心が高まっています。
本記事では、ジョブ型雇用について深掘りします。従来型雇用との違いや、メリット・デメリット、導入手順、おすすめの採用手法などを解説しますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.ジョブ型雇用とは?
- 1.1.メンバーシップ型雇用との違い
- 2.ジョブ型雇用が注目される背景
- 2.1.経団連の提言があったため
- 2.2.大手企業が導入しているため
- 2.3.専門的人材を確保し競争力を向上させるため
- 3.ジョブ型雇用の企業側のメリット
- 4.ジョブ型雇用の企業側のデメリット
- 4.1.ゼネラリストの育成には不向き
- 4.2.会社側の都合で異動させるのが難しい
- 4.3.雇用条件により早期転職される可能性がある
- 5.ジョブ型雇用の導入ステップ
- 5.1.➀ 適用する職務範囲を決める
- 5.2.② 職務記述書を作成する
- 5.3.③ 職務ごとの価値を定める
- 5.4.④ 職務価値を等級に分けて賃金を決める
- 6.ジョブ型雇用におすすめの採用手法
- 6.1.求人サイト
- 6.2.ダイレクトリクルーティング
- 7.ジョブ型雇用の採用成功事例
- 8.まとめ
ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、職種ごとに業務内容を明確に定義し、その業務を担当するために必要な経験・スキル・知識・資格などをもった人材を採用する手法のことです。
ジョブ型雇用では業務上必要な技術や知識のほか、就労時間や勤務地などの就労条件も採用前の段階で人材へ提示し、企業と人材が双方合意したうえで雇用契約を締結します。
メンバーシップ型雇用との違い
メンバーシップ型雇用は、職種や業務内容にこだわらず新卒者を一括で大量採用し、入社後に人員配置する手法のことです。メンバーシップ型雇用で採用された人材は、部署異動や転勤によって定期的に配置転換され、長期間かけて育成されます。
日本では長らく「新卒採用・終身雇用」の流れが一般的だったため、現在もメンバーシップ型雇用を重点的に行なう企業は数多くあります。
しかし近年では、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用を採用する職務によって使い分ける企業も増えてきました。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の基本的な違いを以下の表にまとめましたので、参考にしてください。
ジョブ型雇用 |
メンバーシップ型雇用 |
|
基本的な方針 |
仕事内容に対して人材を割り当てる |
人材に対して仕事内容を割り当てる |
対象範囲 |
主に中途採用者が対象 新卒採用の一部も対象となるケースあり |
主に新卒採用が対象 |
給与 |
業務内容・業務難易度・責任範囲などに応じて決定 |
人材の職務遂行能力・勤務年数などに応じて決定 |
人員配置 |
業務内容・ポジションによっては異動がないケースもある |
定期的に異動あり |
昇格・昇級 |
業務実績を重視して実施される |
勤続年数や年齢を重視して実施される |
降格・降級 |
業務実績の良し悪しにより実施される |
基本的には実施されない |
人材育成 |
業務を考慮した内容で育成 |
年次を考慮した内容で育成 |
人材の流動性 |
高い。担当業務が終了した場合などに解雇される可能性あり |
低い。基本的に正社員が解雇される可能性は低い |
ジョブ型雇用が注目される背景
日本でジョブ型雇用が注目されている背景には、主に以下の3点が挙げられます。
経団連の提言があったため
ジョブ型雇用が注目され始めた要因のひとつに、日本経済団体連合会(経団連)の提言があります。
2020年、経団連は経営労働政策特別委員会で「日本型雇用システムをメンバーシップ型雇用ととらえること」および「メンバーシップ型雇用のメリットを活かしつつ、ジョブ型雇用の導入を推奨すること」を提言しました。
また2022年の同委員会では、ジョブ型雇用についてより強く推奨する提言を行なっています。こうした経団連の発表により、自社の雇用制度を見直す企業が増えているのです。
大手企業が導入しているため
経団連の提言を受け、大手企業を中心に雇用制度を見直す動きが活発化。日立製作所や資生堂など、日本を代表する企業が続々とジョブ型雇用の活用に踏み切り、注目が集まっています。
コロナ禍がきっかけでテレワークを導入し、勤務態度での評価が難しくなったポジションから、ジョブ型雇用を導入している企業もあります。
専門的人材を確保し競争力を向上させるため
近年はグローバル化の影響により、自社の競争力を向上させる必要性が高くなっています。デジタルに強いIT人材や、多言語に対応できるグローバル人材など、専門性の高い人材を確保するにあたり、ジョブ型雇用は有効です。
競争社会に対応できるハイスキルな人材を獲得するために、ジョブ型雇用の導入を検討する企業も増えています。
ジョブ型雇用の企業側のメリット
ここからは、企業側におけるジョブ型雇用のメリット・デメリットを解説します。まずはメリットから詳しく見ていきましょう。
専門スキル・知識のある即戦力人材を確保できる
ジョブ型雇用は、仕事内容に対して適切な人材を割り当てる採用方法です。そのため募集業務を遂行するために必要なスキル・知識・経験・資格などを有した専門性の高い人材を確保しやすいメリットがあります。
専門性の高い人材は、入社後すぐに即戦力として活躍できる可能性が高いでしょう。ジョブ型雇用は「人員不足をすぐに解消するため、即戦力人材を確保したい」といった場合に適した採用方法といえます。
業績や職務に応じて明確に人材を評価できる
ジョブ型雇用は、業績によって人材を評価します。人材の評価基準を明確に決めやすいため、客観的で公平な人事評価がしやすい点も、ジョブ型雇用のメリットです。
またジョブ型雇用では、採用選考においても、前職での業績や業務経験、保有スキルなどが評価対象となります。前職での業績を評価対象としないメンバーシップ型雇用に比べると、人材を明確に評価しやすいため、採用のミスマッチを防止しやすくなるでしょう。
新規事業を立ち上げる際に適した人材を揃えられる
ジョブ型雇用は、新規事業を立ち上げる際に、ベストなメンバーを組みやすい採用方法です。新規事業を立ち上げるにあたり、必要なスキルや経験値のある人材を確保しやすいため、より良い人員体制で事業をスタートできるでしょう。
またジョブ型雇用には、専門性の高いハイスキル人材を採用しやすい特徴もあります。そのため、新規事業で重要なポジションを担う能力がある人材を確保しやすい点も、メリットといえるでしょう。
ジョブ型雇用の企業側のデメリット
続いて、企業側におけるジョブ型雇用のデメリットを解説します。
ゼネラリストの育成には不向き
ジョブ型雇用は、特定の業務に適した人材を確保することに向いている採用方法です。特定業務のスペシャリストを採用・育成しやすいメリットがある反面、幅広い業務をこなすゼネラリストを採用・育成するのは難しいというデメリットもあります。
企業のなかで幅広い業務をこなし、部署をまたいで活躍できるゼネラリストを採用・育成したい場合は、ジョブ型雇用以外の方法で人材を確保したほうがよいでしょう。
会社側の都合で異動させるのが難しい
ジョブ型雇用は、業務内容に対して人材を割り当てる採用方法です。そのためジョブ型雇用によって確保した人材は、基本的に「特定の業務に特化したスペシャリスト」として働く雇用契約となります。
会社側の都合で採用時とは違う部署へ異動させたり、募集時とは違う業務を割り当てたりするのは難しいでしょう。ジョブ型雇用で採用した従業員本人の意向を確認せず、企業側が無理やり部署異動などを行なうと、雇用契約に反しているとして罰則の対象となる可能性があります。
雇用条件により早期転職される可能性がある
ジョブ型雇用は、給与などの雇用条件により、早期転職される可能性があります。自社と同じ業務内容で、自社よりも雇用条件の良い企業があった場合に、人材が他社へ流出しやすいからです。
他社に人材が流出しないようにするためには、自社の給与・賞与・休日数・福利厚生といった雇用条件をある程度の水準まで引き上げておく必要があります。同業他社の雇用条件をリサーチしたり、同業種の給与相場を調べたりして、離職対策をするとよいでしょう。
ジョブ型雇用の導入ステップ
ここからは、ジョブ型雇用の導入手順を解説します。以下の手順で準備を進めれば、スムーズに導入できるでしょう。
また、1~4のステップでジョブ型雇用を導入したあと、定期的に職務記述書や職務価値、賃金などを見直すことも大切です。導入後も運用改善を繰り返し、より適切な雇用が行なえるようにしましょう。
➀ 適用する職務範囲を決める
ジョブ型雇用は、特定の業務を遂行するにあたり、適した経験・スキル・知識・資格のある人材を採用する手法です。
業務ごとに人材を採用する必要があるため、まずは「自社にどのような業務があり、どのような人材を採用すべきなのか」を明確に洗い出しましょう。
業務内容によってはジョブ型雇用が適さない場合もあるので、いきなりすべての職務をジョブ型雇用に切り替えるのではなく、適用範囲を定めます。
エンジニア部門や情報セキュリティ部門など、ジョブ型雇用に切り替えやすい業務を担当する部門から、少しずつ導入していきましょう。
② 職務記述書を作成する
職務記述書(ジョブディスクリプション)とは、ジョブ型雇用を行なう部門の業務内容や業務範囲、必要スキルや資格免許などを明確にまとめた資料のことです。ジョブ型雇用を実施するにあたり欠かせない資料なので、部門ごとにしっかりまとめておきましょう。
一般的に、職務記述書(ジョブディスクリプション)には以下のような内容が盛り込まれます。
- 職種名・具体的な業務内容
- 必要なスキル・経験・知識
- 必要な資格・免許
- 職務等級・責任範囲
- 雇用形態・雇用期間
- 勤務場所・勤務時間
- 給与・賞与・休日数
- その他待遇・福利厚生 など
職務記述書(ジョブディスクリプション)を作るときは、該当業務を現在担当している社員が作成するか、該当業務の部門長が作成するとよいでしょう。
③ 職務ごとの価値を定める
職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成したら、社内における職務ごとの価値を定めます。該当の業務が自社にとってどの程度重要なポジションか、売り上げへの影響などさまざまな観点から考えて、価値を算出しましょう。
以下は厚生労働省が公表する「多様な働き方実現サイト」より、職務評価の手法を紹介したものです。社内における職務ごとの価値をどう定めればよいか迷った場合、参考にするとよいでしょう
▼単純比較法
- 社内の職務を1対1で比較し、職務の大きさが同じか、異なるかを評価する
- 比較の際、職務を細かく分解せず全体としてとらえて比較する
▼分類法
- 社内で基準となる職務を選び、職務分析をして「職務レベル定義書」を作成する
- 「職務レベル定義書」に照らし合わせて、もっとも合致する定義はどのレベルか判断し、職務の大きさを評価する
▼要素比較法
- 職務の構成要素別にレベルの内容を定義する
- 職務を要素別に分解し、もっとも合致する定義はどのレベルか判断する
- 分類法のように職務全体として判断するよりも、客観的な評価ができる
▼要素別点数法
- 要素ごとにレベルに応じたポイントをつけ、総計ポイントで職務の大きさを評価する
- 要素比較法と同様に、職務の大きさを構成要素別に評価する
- 職務の大きさをポイント数で表す点が、要素比較法と異なる
出典:厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト 職務評価の手法」
④ 職務価値を等級に分けて賃金を決める
社内における職務ごとの価値を定めたら、等級に分けて賃金を決めましょう。
職務等級は大雑把すぎると、正当性のある評価をしにくくなります。しかし細かすぎても、人事評価に手間がかかってしまうので、適切な区分になるよう注意しましょう。
また賃金を決めるときは、社内の序列だけでなく、同職務における他社の待遇相場にも配慮しましょう。
ジョブ型雇用は待遇を他社と比較されるケースが多いため、待遇が相場以下だと「求人への応募が集まらない」「より好条件な会社に人材をとられてしまう」などの不利益が生じる可能性があります。
ジョブ型雇用におすすめの採用手法
ジョブ型雇用を実施する際におすすめの採用手法は、求人サイトとダイレクトリクルーティングです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
求人サイト
求人サイトは、従来からよく利用されている定番の採用手法です。数多くの求人をひとつのプラットフォーム上でまとめて検索・閲覧できて便利なため、多くの企業・求職者から支持されています。
求人サイトは業種や職種、雇用形態など、さまざまな条件で求人を絞り込んで検索できます。求人サイトに自社求人を掲載しておくと、募集したい業務の経験者や有資格者に見てもらえる可能性が高いでしょう。
また、「クリエイティブ職の採用に強い」「営業職の採用に強い」など、特定の業種・職種の採用に特化した求人サイトもあります。自社で募集したい業務の採用に特化したサイトを活用すれば、ジョブ型雇用を効率よく行なえるでしょう。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、企業がスカウトメール機能などを使って、欲しい人材へ直接アプローチする採用方法です。サービス提供会社が保有する人材データベースに、サービス利用会社が直接アクセスし、人材の経歴を見てスカウトできます。
ダイレクトリクルーティングは、業務経験者や有資格者など、即戦力となれる人材の採用に適しています。ジョブ型雇用を実施する際、ダイレクトリクルーティングを活用すれば、募集ポジションに最適な人材を採用できる可能性が高いでしょう。
ダイレクトリクルーティングについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
▼ダイレクトリクルーティングとは?従来の採用方法との比較・サービスの選び方
ジョブ型雇用の採用成功事例
最後に、ジョブ型雇用の採用成功事例を2つ紹介します。以下はエン・ジャパンが運営する日本最大級の中途採用向け求人サイト「エン転職」での採用成功事例です。
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株式会社Lazoは、太陽光エネルギー発電設備の土地の仕入れから、施工までをワンストップで手掛けている会社です。工事増加にともない、エン転職で電気設備施工管理の増員を行ないました。
同社は「即戦力人材を確保したいが、応募数を獲得しづらい」などの採用課題を抱えていました。そこで求人広告を設計する際に、業務経験者がもつ転職ニーズを意識し、求人閲覧時に応募動機を形成できるよう工夫しています。
一般的に、施工管理の仕事は業務負担が重く、勤務時間も長いため「もっと働きやすい職場に転職したい」と考えている業務経験者が多くいます。そのニーズに着目し、休日数の多さや残業の少なさ、分業体制が整っていて事務作業の負担が少ない点などをアピールしました。
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まとめ
ジョブ型雇用について、従来型雇用との違いやメリット・デメリット、導入手順、おすすめの採用手法などを解説しました。日本社会は長い間メンバーシップ型雇用が主流でしたが、社会情勢の変化により、ジョブ型雇用にも注目が集まっています。
ジョブ型雇用は、メンバーシップ型雇用よりも人材の流動性が激しい手法です。ジョブ型雇用を成功させるためには、求人の書き方を工夫したり、待遇の相場観にあわせて打ち出す内容を変更したりする必要があります。
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