中小企業における人材育成の課題とは? 従業員の定着率を向上するための教育のポイント
採用市場における人材獲得競争が激しくなっている今、人材の定着や生産性の向上のための取り組みは中小企業において重要な経営課題の一つとなっています。
なかでも企業の経営資産となる人材は、長期的に安定した事業を運営していくために欠かせない存在です。
人材育成に注力できていない場合、従業員のモチベーションが低下したり、将来のキャリアに希望を持てずに離職されたりすることもあります。このような問題を防ぐために、人材育成の取り組みを強化することがカギとなります。
この記事では、中小企業が人材育成に取り組むことで期待できる効果や課題、教育のポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.人材育成に取り組む効果
- 1.1.①定着率の向上
- 1.2.②従業員の成長意欲の向上
- 1.3.③生産性の向上
- 1.4.④顧客満足度の向上
- 1.5.⑤採用要件の緩和
- 2.中小企業における人材育成の課題
- 2.1.時間や予算を確保するのが難しい
- 2.2.人材育成に関するノウハウ・スキルがない
- 2.3.人材育成の優先度が低い
- 3.人材育成の課題を解決する教育のポイント
- 3.1.①人材育成をマニュアル化・動画化する
- 3.2.②中小企業の強みを生かす
- 3.3.③助成金や補助金を活用する
- 4.まとめ
人材育成に取り組む効果
人材育成に取り組むことで、企業や従業員、顧客などによい効果がもたらされると期待できます。
①定着率の向上
1つ目は、人材の定着率を向上できることです。
入社したばかりの従業員に十分な教育・研修を実施しない場合、業務に慣れるまで時間を要するほか、「期待されていない」「役に立たない」と感じてしまい離職につながる可能性があります。
従業員がスキルを習得するための機会を設けることで、業務に慣れるスピードを早められるほか、仕事に前向きに取り組めるようになります。
また、将来的に管理職や専門職を目指している従業員の場合、自身のスキル向上を図ることが仕事のやりがいにつながることもあります。キャリアアップを支援する教育・研修を取り入れることで、長く働きたいと思える意欲を醸成できます。
②従業員の成長意欲の向上
2つ目は、従業員の成長意欲を高められることです。
人材育成を行い、業務に必要なスキルや専門知識を身につけてもらうことで、「学んだことを日々の業務で活かしたい」という気持ちが醸成されやすくなります。その結果、精力的に業務に取り組んでもらえるようになると考えられます。
③生産性の向上
3つ目は、生産性の向上が期待できることです。
中小企業における人材不足の問題に対応するには、限られた人材で生産性を確保することが重要です。
人材育成によって従業員一人ひとりのスキルが向上すると、業務効率や作業品質が高まり会社全体の生産性を高めることにつながると考えられます。
④顧客満足度の向上
4つ目は、顧客満足度の向上を図れることです。
人材育成を行うことで、業務品質や作業ペースが向上して質の高いサービスを顧客に提供できるようになります。
また、マナー研修をはじめとした顧客への対応に関する教育を行い、従業員の対応力を高めることで顧客満足度の向上につながると期待できます。
⑤採用要件の緩和
5つ目は、採用要件を緩和できることです。
社内の教育制度を体系化して人材育成ができる仕組みを整えると、人材を募集する際の採用要件(応募資格)を緩和できるようになります。業界・職種での経験がない人を受け入れられることで、採用の間口を広げられます。
▼採用要件を緩和する例
- 業界知識を習得できるマニュアルを整備して、業界未経験者を受け入れる
- 入社後の研修・教育体制が整備して、職種未経験者を受け入れる
特に中小企業では、求人の母集団形成に課題を持つケースが多いことから、採用の間口を広げられるのは重要な要素といえます。
母集団形成の他にも、中小企業が陥りがちな採用課題と解決策は以下の記事で解説しておりますので、あわせてご参考ください。
▼中小企業の採用課題とは?新卒・中途採用どちらでも使える具体的な解決策
中小企業における人材育成の課題
人材育成に取り組むと中小企業にさまざまな効果をもたらすことが期待できますが、実施にあたってはいくつか課題もあります。
時間や予算を確保するのが難しい
人手不足の課題を抱える中小企業では、一人ひとりの業務量が多くなりやすく、人材育成のための時間を確保するのが難しいケースがあります。
また、人材育成のための研修や教育プログラムの導入などに十分な予算を確保するのが難しく、人材育成が後回しになってしまうことも考えられます。
人材育成に関するノウハウ・スキルがない
社内に人材育成に関するノウハウ・スキルを持つ人物がいない場合、従業員への教育が進まなかったり、指導の質にばらつきが生じたりするケースがあります。
効率的に従業員の人材育成を進めるためには、コミュニケーションスキルやコーチングスキルなどが求められます。
人材育成の優先度が低い
人材育成は直接的な業績に関わる部分ではないため、経営層から重要度が低く捉えられてしまう可能性があります。
人材育成に時間がかかることや、人材育成に関するスキル・ノウハウが不足していることも相乗して、コスト削減の対象となってしまうケースも考えられます。
人材育成の課題を解決する教育のポイント
中小企業における人材育成の課題を解決するには、効率的にスキルの習得・強化を図れる環境をつくることが重要です。また、コストの負担を抑えるために、助成金・補助金を活用することも一つの方法です。
①人材育成をマニュアル化・動画化する
人材育成にかける時間・コストを抑えつつ、限られた教育担当者で育成を進めるために、カリキュラムや指導方法などをマニュアル化・動画化することが重要です。
人材育成の内容をマニュアル化・動画化することで、教育担当者による指導内容を均一にできるほか、従業員に共有して自律的にスキルの習得を促せるようになります。
▼マニュアル化・動画化する際のポイント
- 業務ごとの作業内容・フローを図表や動画で見やすくまとめる
- 従業員のスキルレベルに応じて必要な知識・教育内容を整理する
業務に関する動画については、以下のような活用方法があります。
▼動画の活用例
職種・業務内容 |
活用例 |
営業 |
商材またはシーン別に顧客と営業担当者のロールプレイングの様子を まとめて、OJTや座学研修に活用する |
接客 |
基本の接客マナーや受け答え、シーン別の対応方法などのお手本をまとめて、入社時の研修に活用する |
製造 |
人の手で行う作業や製造機械・設備の取り扱い方などを収録して、従業員への教材に使用する |
採用 |
経験豊富な採用担当者による面接(Web面接)の様子を録画して、ほかの担当者への教材に使用する |
人材育成のマニュアルや動画を作成する際は、厚生労働省が公開している『職業能力シート』『キャリアマップ』を活用することも有効です。
なお、Web面接の録画についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
人材育成の手法となるOJTについてはこちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『職業能力評価基準』
②中小企業の強みを生かす
中小企業が人材育成に取り組む際は、経営層・部門間の距離が近く従業員の意見が反映されやすいことや、コミュニケーションがとりやすいことなどの強みを生かすこともポイントの一つです。
▼中小企業の強みを生かした人材育成の例
- 経営層・育成担当者・従業員が直接話せる場を設けて、スキルの重要度や希望に応じて研修・教育プログラムを絞る
- 従業員同士で勉強会やワークショップが開ける機会を設ける
スキルの重要度や従業員の希望に応じて研修・教育プログラムを絞ったり、従業員同士でスキルを強化し合える機会を設けたりすることで、人材育成にかかるリソースやコストを抑えられる場合があります。
③助成金や補助金を活用する
政府が実施している中小企業の人材育成を支援する助成金や補助金を活用して、コストの負担を抑える方法もあります。
▼人材育成に関する助成金・補助金制度 ※2023年8月28日現在
- 人材開発支援助成金
- キャリアアップ助成金
助成金・補助金の金額や受給要件、対象となる企業の条件などは制度によって異なるため事前に確認しておくことが重要です。
出典:厚生労働省『人材開発支援助成金』『キャリアアップ助成金』
まとめ
この記事では、中小企業における人材育成について以下の内容を解説しました。
- 中小企業が人材育成に取り組む効果
- 中小企業における人材育成の課題
- 人材育成の課題を解決する教育のポイント
中小企業が人材育成に取り組むことで、従業員の定着率や成長意欲の向上、生産性の向上、顧客満足度の向上、採用要件の緩和などのメリットが期待できます。
人材教育に関するリソースやコストなどの課題を解決するには、効率的に教育を行うためのマニュアル化・動画化をはじめ、中小企業の強みを活かした教育の仕組みを取り入れること、助成金・補助金を活用することがポイントです。
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