人材要件とは? 設定項目や設定時の流れ、便利なフレームワークも解説
人材要件とは、「自社の経営ビジョンや事業戦略を達成するために必要な人材の人物像」を明確に定義したものです。人材要件を定めておくと、選考でどのような人材を確保すればよいか明確になるため、ミスマッチの少ない採用を行なえるなどのメリットがあります。
本記事では人材要件について、設定するべき項目や設定時の流れ、便利なフレームワークなどを解説します。「自社にしっかり定着し、活躍してくれる人材を確保したい」とお悩みの方は、ぜひ本記事を参考に、人材要件を設定してみてください。
目次[非表示]
- 1.人材要件とは?
- 1.1.人材要件を定める目的・メリット
- 1.2.採用ペルソナとの違い
- 2.人材要件で定めるべき項目
- 3.人材要件を定めるときの流れ
- 3.1.自社の経営方針や理念への理解を深める
- 3.2.募集ポジションの業務内容を洗い出す
- 3.3.関係部署へヒアリングして条件を整理する
- 4.人材要件の定め方・便利なフレームワーク
- 4.1.人材要件フレーム
- 4.2.MUST・WANT・BETTER・NEGATIVE
- 4.3.コンピテンシーモデル
- 4.4.氷山モデル
- 5.人材要件を定めるときのポイント
- 5.1.新卒採用・中途採用で条件を変える
- 5.2.人材へ求める条件を厳しくしすぎない
- 5.3.定期的に条件を見直して改善する
- 6.まとめ
人材要件とは?
人材要件とは、「自社の経営ビジョンや事業戦略を達成するために必要な人材の人物像」を明確に定義したものです。主に採用選考で、どのような人材を採用するべきか判断する際に役立つため、採用要件とも呼ばれています。
人材要件を定める目的・メリット
人材要件を定める目的は「一定の審査基準を設けて求職者を客観的に評価し、自社に適した人材を見極めやすくすること」です。人材要件を設定しておくと、以下のようなメリットがあります。
- 求職者に対し、採用担当者の主観に頼らない客観的な評価ができる
- 求職者を評価する難易度が下がり、採用選考の効率化につながる
- 採用のミスマッチを防いで早期離職を防止できる
人材要件を何も定めないまま採用活動をすると、「採用担当者ごとに求職者への評価がバラバラになってしまう」「自社に合わない人材へ内定を出してしまう」などの問題が生じやすくなります。
そうした問題を解消し、自社で定着・活躍しやすい人材を効率よく確保するため、人材要件を明確に定めておく必要があるのです。
採用ペルソナとの違い
人材要件と似ている意味の言葉に「採用ペルソナ」があります。採用ペルソナとは、自社で採用したい人材の条件を持ち合わせた、架空の人物像のことです。
採用ペルソナを決めるときは、人材要件で設定したさまざまな条件をもとに「年齢・性別・居住地・ライフスタイル」などのパーソナリティな部分をより具体的に定めていきます。
つまり、「自社で採用したい架空の人物像」が採用ペルソナで、採用ペルソナを決めるための諸条件が人材要件なのです。人材要件をもとに採用ペルソナを定めておくことで、自社で確保すべき人材の人物像がより明確になります。
採用ペルソナについては、以下の記事で詳しく解説しています。採用ペルソナの具体的な作り方などを説明していますので、ぜひご覧ください。
▼採用活動におけるペルソナの作り方とは? 設計のポイントと活用できるテンプレート
人材要件で定めるべき項目
人材要件は企業や募集ポジションによって、定めるべき項目が異なります。以下は、人材要件を決めるときに最低限定めておきたい項目です。
以下の項目を参考にしながら、自社で募集する業務や役職に応じて、要件を適宜変更するとよいでしょう。
項目 |
人材に求めたいこと |
属性 |
年代・性別・居住地域 など |
性格・人柄 |
主体性・協調性・誠実さ・ストレス耐性 など |
経歴 |
学歴・職歴・前職での実績 など |
能力 |
コミュニケーション能力・論理的思考力・問題解決能力・語学力・リーダーシップの有無 など |
スキル |
専門的な技術・知識・保有資格・免許 など |
その他 |
人材へ期待する行動・役割 |
人材要件を設定するときは、自社で活躍している既存社員の特徴を踏まえて定めるのがおすすめです。高いパフォーマンスを発揮している社員の特徴を洗い出し、それと近い人物を採用できるように人材要件を定めておけば、自社への適性があって優秀な人材を確保できる可能性が高くなります。
人材要件を定めるときの流れ
続いて、人材要件を定めるときの一般的な流れを解説します。自社に適した人材を採用するためには、まず自社の方針や業務内容などへの理解を深めることが大切です。人員を補充する部署とうまく連携して、適正な人材要件を定められるようにしましょう。
自社の経営方針や理念への理解を深める
人材要件を決める前に、まずは自社の経営方針や経営理念、事業戦略などへの理解を深めましょう。いきなり人材要件を決めると、自社の方針とずれた条件を設定してしまう恐れがあるからです。
以下のような考え方で、自社への理解を深めて、必要な人物像のベースを固めましょう。
- 自社が事業を通して何を達成することを目標としているのか理解する
- そのためにはどのような組織を作る必要があるのか想定する
- その理想的な組織をつくるためには、どのような人材が必要なのか考える
また、自社の方針への理解を深めたら、人材要件を設定するとともに、採用計画を立てることも大切です。「○○という事業目標を達成するため、いつまでに・どこの部署へ・何人の人材を補充する」といった中長期的な採用計画を立てて、企業の成長につながる採用を行いましょう。
採用計画の具体的な立て方は、以下の資料で詳しく解説しています。無料でダウンロードいただけますので、ぜひお役立てください。
▼失敗しない採用計画の立て方 ポイントを詳しく解説
募集ポジションの業務内容を洗い出す
自社の経営方針や経営理念、事業戦略などへの理解を深めて、求める人物像のベースを固めたら、募集ポジションの業務内容を洗い出しましょう。募集ポジションの業務内容に適性があり、スキルフィットする人材へ内定を出せるようにするためです。
「営業部の人員を補充するが、採用選考は人事部が行なう」などのように、採用担当者が募集ポジションとは別の部署で働いている場合は、この工程を特にしっかりと行なう必要があります。業務内容の洗い出しは、具体的かつ詳細に行いましょう。
関係部署へヒアリングして条件を整理する
続いて、人材を補充する部署へヒアリングし、人材へ求める内面的な条件をより明確にしていきます。
人材要件は人事・採用担当者や、経営層だけの意見で定めてはいけません。現場社員の意見も取り入れた方が、職場に馴染む性格特性・価値観・考え方の人材を採用しやすくなるからです。
スキルなどの業務遂行能力が自社に適しているだけでなく、内面的にも自社にフィットし、定着しやすい人材を採用するため、関係部署へのヒアリングは必ず行ないましょう。
また、性格特性・価値観・考え方などがフィットする人材を採用したいときは、カルチャーフィットを重視した採用活動をするのも良い手です。カルチャーフィットを採用活動に取り入れる方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
▼カルチャーフィットとは? 採用に取り入れる手順や見極め方を解説
人材要件の定め方・便利なフレームワーク
人材要件を定めるときに使える便利なフレームワークを4つ紹介します。人材要件は、ただ漠然と考えるよりも、フレームワークを使った方が明確に定められます。以下のフレームワークから、自社に適した方法を選んでみましょう。
人材要件フレーム
人材要件フレームでは、人材に求めたいことを「MUST(必要条件)/WANT(十分条件)」の2つにわけて設定します。
MUSTは人材に必ず求めたい条件、WANTはあると望ましい条件です。人材要件フレームの枠に沿って考えていくと、人材へ求める条件に自然と優先順位をつけられます。
MUST(必須条件) |
人材に必ず求めたい条件
|
WANT(十分条件) |
人材にあると望ましい条件
|
MUST・WANT・BETTER・NEGATIVE
前述した人材要件フレームにBETTERとNEGATIVEの2項目を加えて、より詳しい条件を定める方法もあります。この場合は「MUST(必要条件)/WANT(十分条件)/BETTER(あればなお良い条件)/NEGATIVE(不要な条件)」という優先順位となります。
この4項目で人材要件を定める場合は、以下の手順がおすすめです。
- まずは、人材に求めることをMUSTとNEGATIVEの2項目におおまかに分ける
- MUSTに分類した条件のうち、業務遂行のための必須条件ではないと判断したものを、優先度順にWANT・BETTERへ振り分ける
WANTよりも優先度の低い条件や、人材に求めない不要な条件もひと通り定めておくことで、迷いなく人材選考を進められるようになるでしょう。
コンピテンシーモデル
コンピテンシーモデルとは、自社で高い実績を出している活躍社員の性格特性や、行動特性などを洗い出し、その特徴を抽出して設定する「理想的な社員の人物像」のことです。
人材要件を設定する際、自社のコンピテンシーモデルを明らかにすることで、活躍社員に近い優秀な人材を確保できる可能性が高くなります。コンピテンシーモデルを活用した人材要件の設定方法は、以下の通りです。
- 自社で高い実績を出している活躍社員の性格特性・行動特性を調査する
面談で本人へヒアリングを実施する・本人に適性検査を受検してもらう・周囲へアンケート調査を実施するなど - 活躍社員に共通する特徴を洗い出す
- 活躍社員に共通する特徴を、新たに採用したい人材の条件・人物像に落とし込む
コンピテンシーモデルを調査するなら、活躍社員の性格特性・行動特性を数値的に可視化できる適性検査「TALENT ANALYTICS(タレントアナリティクス)」がおすすめです。コンピテンシーモデルの調査を検討している方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▼エン・ジャパンの適性検査「TALENT ANALYTICS」とは?人材の見極めで悩む方、必見!
氷山モデル
氷山モデルとは「物事の見えている部分と、見えていない部分を両方踏まえて、全体像をとらえる」という考え方です。人材要件の設定以外にも、さまざまな分野で利用されています。
人材要件の設定に氷山モデルを用いる場合は、人間の目に見える特徴と、目に見えない特徴の両方に着目し、それぞれ必要な条件を定めていきます。人材における氷山モデルを表した、以下の図をご覧ください。
図にある通り、人材要件の場合は「目に見える特徴=行動や態度等」「目に見えない特徴=スキル・知識・性格・価値観等」となります。それぞれの項目に対して、自社に必要な人材の特徴を当てはめていくと、採用するべき人物像がより具体的に見えてきます。
人材要件を定めるときのポイント
最後に、人材要件を定めるときのポイントと注意点を3つ解説します。適正な人材要件を定めて、採用活動をよりスムーズに進めるため、以下の3点を押さえておきましょう。
新卒採用・中途採用で条件を変える
人材要件を定めるときは、新卒採用と中途採用で条件を変えるようにしましょう。新卒採用と中途採用では、人材へ求める条件や、人選で重視すべき項目が異なるからです。
新卒採用は、選考の対象が学生です。社会人経験のない人材が選考対象となるため、基本的には保有スキルよりも「性格・価値観・考え方・仕事への熱意・仕事へのポテンシャル」などを重視して人材を評価する必要があります。
対して中途採用は、すでに社会人として働いた経験のある人が選考対象です。そのため、人材の「スキル・能力・知識・業務経験・前職での実績」などを評価し、求職者がどのくらい自社の業務に適性があるか判断する必要があります。
新卒採用と中途採用では、チェックするべき項目が異なるため、人材要件を別々に設定した方が、より適切な採用を行なえるのです。
人材へ求める条件を厳しくしすぎない
人材要件を設定するときに求める条件を厳しくしすぎると、該当する人材が極端に少なくなり、「採用できる人材が誰もいない…」という状況に陥ってしまいます。
特にMUST(必須条件)を増やしすぎると、本来なら採用に値する人材に不合格判定を出して、取り逃がしてしまう恐れがあります。非現実的なほど厳しい条件を定めるのは、やめておきましょう。
定期的に条件を見直して改善する
人材要件は、一度設定して終わりというものではありません。設定した要件をもとに採用選考をおこない、採用した人材の動向をチェックして、「定めた人材要件は本当に適正だったか」を定期的に見直す必要があります。
検証を行なった結果、採用した人材が定着・活躍していない場合は、条件を見直して改善しましょう。最初に定めた人材要件が適正でなかったとしても、PDCAサイクルを回して繰り返し効果検証・改善を行なっていけば、次第に定着率の高い優秀な人材を確保できるようになります。
まとめ
人材要件とは、「自社の経営ビジョンや事業戦略を達成するために必要な人材の人物像」を明確に定義したものです。
人材要件を設定することには、「求職者を客観的に評価しやすくなる」「採用のミスマッチが防止され、人材の定着率向上につながる」などのメリットがあります。フレームワークを活用して、自社を成長させるために必要な人材の条件を具体的に設定しましょう。
自社に定着・活躍する人材を採用するには、人材要件を定めて面接で人材を見極めるほか、「求人の書き方を工夫して、適性の高い人材からの応募を集める」という方法も有効です。適正の高い人材からの応募を集めたい方は、ぜひ『エン転職』をご利用ください。
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