人材育成とは? 重要性が高まる背景や基本の進め方を解説
企業の経営戦略を実現して、持続的な事業成長や競争力の強化を図るには、重要な経営基盤の一つとなる“人材”が持つ能力を最大限に生かすことが重要です。
そのためには、人材育成を通して自社が求める能力・スキルの強化に取り組み、企業に貢献する人材へと成長を促進させる必要があります。
企業の人事・採用担当者のなかには、「人材育成は何のために行うのか」「どのように進めればよいのか」などと基礎的な知識から理解を深めたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、人材育成の目的や重要性が高まる背景、基本的な進め方をポイントとともに解説します。
なお、中小企業における人材育成と教育のポイントについては、こちらの記事で解説しています。
目次[非表示]
- 1.人材育成とは
- 2.人材育成の重要性が高まる背景
- 2.1.人手不足の深刻化
- 2.2.デジタル化による自人材需要の変化
- 2.3.グローバル化の進展
- 3.人材育成の基本的な進め方
- 3.1.①目的を明確にする
- 3.2.②スキルマップを作成する
- 3.3.③人材育成計画を策定する
- 3.4.④振り返りとフィードバックの実施
- 4.まとめ
人材育成とは
人材育成とは、業務に関する知識・スキルを従業員に習得させて、能力の向上を図る取り組みのことです。企業の成長・発展に貢献できる戦力となる人材を育成して、組織目標の達成や業績の向上につなげることが目的となります。
企業が人材育成に取り組み、従業員一人ひとりの能力が最大限に発揮されることで、以下のような効果が期待できます。
▼人材育成によって期待できる効果
- 業務の効率化とパフォーマンスの向上
- 成長意欲の醸成による離職の防止
- チームワークの強化
また、人材を資本と捉えて経営戦略や人事戦略と連動させ、将来のビジョンを実現するための人材を戦略的に育てることで、企業価値を持続的に高められます。その結果、競争力の強化や企業イメージの向上に貢献するほか、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応できる組織力を身につけられます。
なお、人材育成を進めるには、経営戦略や人事制度と連動させた人材育成マネジメントが求められます。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
人材育成の重要性が高まる背景
近年、人材育成の重要性が高まっています。その背景には、主に以下が挙げられます。
人手不足の深刻化
日本では、少子高齢化の進行によって労働力となる生産年齢人口(15~64歳)が減少しており、企業の人手不足が深刻化しています。
採用市場においても人材獲得競争が激しくなるなか、企業が安定した経営活動を行うには、今いる人材が持つ能力を最大限に引き出して、一人ひとりのパフォーマンスと生産性を高める必要があります。
デジタル化による自人材需要の変化
社会や産業のデジタル化が進行していることで、今後の人材需要が変化すると予測されています。
ITに関する専門的かつ高度なスキル・技術を持つ人材の需要が高まる一方で、AIやロボットに代替できる業務については需要が減少すると考えられます。
このような産業構造の変化に対応するためには、今後必要とされるスキル・技術を備えた人材の育成に取り組むことが求められます。
グローバル化の進展
グローバル化が進展するなかで企業の持続的な成長を実現するには、行動や意識の面での人材育成も不可欠です。
例えば、業務に対する基礎的・専門的な能力だけでなく、多様性を受容して他者と協働する能力や問題発見力、革新性などを持ち、新たな価値を生み出せる人材が挙げられます。
このように、企業を取り巻く環境が変化するなかで、持続的な成長・発展を目指すには、経営基盤となる人材の育成に取り組むことが重要といえます。
なお、人材育成の課題についてはこちらの記事をご確認ください。
人材育成の基本的な進め方
人材育成を進める際は、目的と従業員が持つ現状の能力を明らかにしたうえで、人材育成計画を策定して、定期的な振り返りとフィードバックを繰り返すことがポイントです。
①目的を明確にする
何のために人材育成を行うのか、目的を明確にする必要があります。
企業の課題や将来のビジョンによって、人材育成の目的は異なります。「どのような人材を育成して何を目指すのか」を明確にすることで、人材育成計画の方針が定まり、社内全体の認識を統一できます。
また、目的を達成するために、現状の人材面に関する課題・ニーズと必要とする人材像のギャップを把握することがポイントです。
▼人材像のギャップを把握するポイント
- 各部門における人材の構成を洗い出して現状を把握する
- 経営層や人事・採用担当者だけでなく、業務部門へヒアリングを行い人材面に関する課題・ニーズを抽出する
- 経営戦略や人事戦略を踏まえて、将来に必要とされる人材像を部門・職種・階層別に設定する
なお、中長期的な視点で人材育成の道筋を明らかにするために、人材育成ロードマップの作成が有効です。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
②スキルマップを作成する
スキルマップとは、部門ごとの業務・役職に必要なスキルを一覧化して、各従業員がどのレベルに達しているかを記載した表のことです。
▼スキルマップのイメージ
画像引用元:厚生労働省『職業能力評価シートについて』
習得が必要なスキルと各従業員の立ち位置が明らかになることで、レベルに応じた教育・指導方法を検討しやすくなり、体系的な人材育成を行えます。
▼スキルマップを作成するポイント
- 部門ごとに業務別・役職別に必要なスキルを洗い出す
- スキルを習得する難易度別に4~6つほどの階層に分ける
- 各階層で習得するスキルを定める
- 経営戦略や人事戦略、経営ビジョンを達成するために必要なスキルを加える
- 各階層でスキルの習得を判断する具体的な評価基準を定める
出典:厚生労働省『職業能力評価シートについて』
③人材育成計画を策定する
スキルマップで従業員が持つスキルのレベルを把握したあとは、具体的な育成スケジュールや育成手法をまとめた人材育成計画を策定します。
人材育成計画を立てる際は、現状の従業員が持つスキルのレベルと必要とする人材像とのギャップを埋めるための目標を設定することがポイントです。「いつまでにどのレベルのスキルを習得するか」といった各従業員の目標を設定することで、具体的な育成手法とスケジュールを検討できるようになります。
目標を設定する際は、ベーシック法やSMARTの法則などのフレームワークを活用することが有効です。
▼ベーシック法
4つの要素 |
概要 |
目標項目の決定 |
向上・改善・維持・創出の4つの目標から何を達成するかを定める |
目標達成基準の設定 |
目標の達成度合いを把握できるように、具体的な数値や状態などの基準を定める |
期限の設定 |
いつまでに目標を達成するか、具体的な期限を設ける |
達成計画の設定 |
目標達成のために必要なプロセスを詳細に定める |
▼SMARTの法則
5つの要素 |
概要 |
Specific(具体性) |
達成する目標とそのプロセスを明確かつ具体的に定められているか |
Measurable(進捗の測定可否) |
目標への達成率や進捗度合いを、数値で測定できるか |
Achievable(実現可能性) |
達成可能な目標か、また非現実的な目標設定となっていないか |
Realistic(最終目的との関連性) |
最終的な目的を達成するための段階的な目標が設定されているか |
Time-related(期限の設定) |
目標達成までの期限を定めているか |
また、代表的な育成手法には、以下が挙げられます。
▼代表的な育成手法
育成手法 |
概要 |
OJT |
職場での実務を通して上司から仕事を学ぶことで実践的なスキルを習得できる |
Off-JT |
職場以外の場所で実施されるセミナーや研修など、実務とは異なる場で新たなスキルを磨ける |
eラーニング |
オンライン上のコンテンツを利用して、個々のペースで学習を進められる |
メンター制度 |
先輩社員が後輩社員に対して業務上のサポートをしたり、人間関係づくりやキャリア形成などのフォロー・アドバイスを行ったりする |
ジョブローテーション |
一定期間で職場や職種を転換して、幅広い部署・職務での経験を積むことで、業務スキルの向上、適性の見極めにつなげられる |
なお、人材育成を行う指導者に求められるスキルについては、こちらの記事をご確認ください。
④振り返りとフィードバックの実施
人材育成計画に沿って運用を開始したあとは、定期的に従業員による振り返りと指導者によるフィードバックを実施することが重要です。
目標の達成度合いや取り組み方、習得スピードなどを振り返ることで、成長意欲の実感と新たな課題の発見につながります。
また、指導者がよい点・改善が必要な点を伝えて評価やアドバイスを行うことで、従業員のモチベーションが高まり、自発的な考えと行動を促せます。
人材育成計画どおりにスキルの習得が進まない場合には、計画内容や目標の見直しも検討することも必要です。
まとめ
この記事では、人材育成について以下の内容を解説しました。
- 人材育成によって期待できる効果
- 人材育成の重要性が高まる背景
- 人材育成の基本的な進め方
人手不足の深刻化やデジタル化による人材需要の変化、グローバル化の進展を背景に、企業における人材育成の重要性が高まっています。人材育成を通して自社が求める能力・スキルの強化に取り組むことで、持続的な成長と企業価値の向上に結びつくと期待できます。
ただし、積極的な人材育成を行っていても、早期離職されてしまうと自社の成長・発展につながらなくなります。早期離職を防ぐには、採用段階から成長意欲のある人材を見極めることも重要です。
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