アルムナイ制度で即戦力を採用! メリット・デメリットや導入事例を解説

近年、コロナ禍の影響によってエリアによって転職希望者数が減少しており、労働市場の動きに停滞が見られています。 一方、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少によって、新型コロナ感染拡大前からの人手不足は依然として続いています。

そのような状況のなかで、「新たな人材を確保するのが難しい」「自社の要件にマッチする転職希望者となかなか出会えない」などの課題を持つ人事・採用部門の担当者さまもいるのではないでしょうか。

そこで注目されているのが、“アルムナイ制度”です。アルムナイ制度は、新たな人材確保が難しい採用市場において、安定した経営資源を確保するために有効な採用手法と期待されています。

この記事では、アルムナイ制度の概要とメリット・デメリット、導入事例について解説します。


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目次[非表示]

  1. 1.アルムナイとは?
  2. 2.アルムナイ制度とは
  3. 3.アルムナイ制度が注目されている理由
    1. 3.1.労働人口減少による採用難
    2. 3.2.労働者の価値観や働き方の多様化
  4. 4.アルムナイ制度のメリット
    1. 4.1.①採用ミスマッチを減らせる
    2. 4.2.②即戦力人材を確保できる
    3. 4.3.③社内の活性化が期待できる
    4. 4.4.④企業イメージの向上を図れる
  5. 5.アルムナイ制度のデメリット
    1. 5.1.①既存従業員の待遇に配慮が求められる
    2. 5.2.②退職へのハードルを下げる可能性がある
    3. 5.3.③再雇用に対する後ろめたさを払しょくする必要がある
    4. 5.4.④経験やスキルが現在の業務に適しているとは限らない
  6. 6.アルムナイ制度に適している人材の特徴
  7. 7.アルムナイ制度を導入するときのポイント
    1. 7.1.再雇用の条件を明確に定める
    2. 7.2.アルムナイ制度を社内に周知する
    3. 7.3.受け入れ体制を整える
  8. 8.アルムナイ制度の導入事例
    1. 8.1.ウェルカムバックを歓迎する風土づくり
    2. 8.2.退職者との関係維持のためのネットワーク形成
    3. 8.3.エン・ジャパンのWelcome Back制度
  9. 9.まとめ


アルムナイとは?

アルムナイ(alumni)には「卒業生・同窓生」という意味があります。元々の意味から派生し、人事や採用の領域では「企業の退職者・退職者の集まり」「企業のOB・OG」などの意味合いで使われています。


アルムナイ制度とは

アルムナイ制度とは、退職・転職した現役世代の元従業員を再雇用する制度のことです。人材不足が深刻化する近年では、新たな人材を確保することが難しくなっているため、一度退職・転職した従業員を再雇用するアルムナイ制度に注目が集まっています。
 
今まで退職者に関しては、理由を問わずネガティブな印象を持たれがちでした。しかしアルムナイ制度は、かつて自社で働いていた退職者・転職者を貴重な人的資源ととらえて組織化することで、安定した雇用につながると期待されています。
 
なお、アルムナイ制度は主に「企業を自主的に退職・転職した人材」を再雇用するときに導入されます。

企業によっては、アルムナイ制度を活用して雇用安定化を図るために「退職者・転職者と定期的に連絡をとる」「自社のアルムナイネットワークを構築して情報共有する」などの取り組みを実施しているケースもあります。 


アルムナイ制度が注目されている理由

アルムナイ制度が近年注目されている理由には、「労働人口の減少による採用難」「価値観や働き方の多様化」が挙げられます。


労働人口減少による採用難

日本社会は現在、少子高齢化の影響により、労働人口が減少しています。働き手が少なくなっているため、ひとりの求職者を複数の企業で取り合う状況が続き、企業の採用難易度は年々上昇しています。
 
こうした状況では、自社の業務を経験したことがあり、スキルや知識が身についている人材は貴重です。業務未経験の人材を採用して育成するよりも、早く活躍できるため、即戦力を確保する方法のひとつとしてアルムナイ制度が活用されています。


労働者の価値観や働き方の多様化

労働者の価値観や働き方が多様化していることも、アルムナイ制度が注目される理由のひとつです。従来の日本社会はフルタイム出社勤務で、週5日働くのが一般的でした。しかし近年では、在宅勤務や時短勤務など、柔軟な働き方を希望する労働者が増えています。
 
転職市場も活発化しているので、企業が安定的に良い人材を確保するには、今までにない工夫が必要です。自社に適応できる人材を安定的に採用するため、アルムナイ制度を導入して、人員確保に努める企業が増加しています。


アルムナイ制度のメリット

アルムナイ制度を導入することで、事業運営に欠かせない人的資本を安定して確保できることが期待されます。具体的なメリットには、次の4つが挙げられます。


①採用ミスマッチを減らせる

1つ目のメリットは、採用ミスマッチを減らせることです。

自社で以前働いていた従業員は、業務内容や社風、人間関係などにすでに理解があるため、入社後にイメージのギャップが生まれにくくなります。

また、在籍中にその人の能力や人間性などを把握していることから、自社が求める人材を見極めやすくなります。このように、従業員と企業の双方の視点からミスマッチを防ぐことで、早期離職のリスクを軽減できます。


なお、採用のミスマッチが起きる原因については以下の記事でご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▼採用ミスマッチの理由とは? 早期離職を防ぐための4つの対策

​​​​​​​   採用ミスマッチの理由とは? 早期離職を防ぐための4つの対策 企業が採用活動を行うなかで、採用ミスマッチが生じて早期離職につながってしまうケースがあります。従業員が早期離職すると、採用コストの損失につながるほか、ほかの従業員のモチベーション低下や生産性の低下を招く可能性があるため、対策が求められます。この記事では、採用ミスマッチが起こる主な理由と早期離職を防ぐための対策について解説します。 エン・ジャパン株式会社



②即戦力人材を確保できる

2つ目のメリットは、即戦力人材を確保できることです。

再雇用する従業員は、競合他社への転職で新たなスキル・経験を積んでいる可能性があるため、退職前よりもよいパフォーマンスを期待できます。

また、すでに自社の商材や業務内容などを理解しているため、再入社後は即戦力人材としての活躍も見込めます。


③社内の活性化が期待できる

3つ目のメリットは、社内の活性化が期待できることです。

一度退職・転職した従業員が別の分野で培った知識・経験が自社に持ち込まれることで、新たな知見・価値観が創出されて社内の活性化につなげられます。

従業員との情報・意見の交換が促進されると、事業の拡大や新商品・サービスの開発につながることも期待できます。


④企業イメージの向上を図れる

4つ目のメリットは、企業イメージの向上を図れることです。

アルムナイ制度は、「転職をした人も大切にする会社」「事情によって退職した人の再雇用を支援する会社」として、好印象につながることが期待できます。

また、退職者・転職者と継続的かつ良好な関係性を築くことは、従業員からの信頼につながり、企業のブランディングにも貢献すると考えられます。


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アルムナイ制度のデメリット

アルムナイ制度は、人材の確保だけでなく、定着化や即戦力化にもメリットをもたらします。ただし、導入時には注意しておきたいデメリットもあります。


①既存従業員の待遇に配慮が求められる

1つ目のデメリットは、既存従業員の待遇に配慮が求められることです。

現役の従業員が、再雇用した人物との待遇の差に不満を感じると、モチベーションの低下や離職につながる可能性があります。従業員の不平・不満を生むと、再雇用した人物との人間関係の構築が難しくなることも考えられます。

再雇用する前には、社内で制度説明を行い、ほかの従業員の理解を深めるとともに、再雇用の条件や待遇について公平な基準を設けることが重要です。

また、再雇用後は再雇用者とほかの従業員が良好な関係性を築けるように、両者へのフォローを実施する必要があります。


②退職へのハードルを下げる可能性がある

2つ目のデメリットは、退職へのハードルを下げる可能性があることです。

アルムナイ制度そのものが「退職しても再雇用してもらえる」という認識を生んでしまい、結果的に退職へのハードルを下げることにつながるリスクがあります。

採用手法としてアルムナイ制度を導入する際は、再雇用に関する条件を明確にして、再雇用のために必要なスキル・経験などを設けておくことが重要です。


③再雇用に対する後ろめたさを払しょくする必要がある

アルムナイ制度によって退職者を再雇用する際、退職者側が古巣で再び働くことに対して、後ろめたい気持ちを抱く場合があります。
 
「○○という理由で退職したのに、また戻ってきても大丈夫なのかな?」
「退職理由を当時の上司に○○と説明したから、復職したら既存社員から反感を買うのでは…?」
 
上記のように、自身が退職したときの理由や背景などに関して、後ろめたい気持ちを抱いてしまうケースがあるのです。
 
このような状態のまま再雇用した人材を放置すると、業務生産性や職場の人間関係に悪影響を及ぼしてしまいます。アルムナイが再雇用に対して、後ろめたい気持ちを感じている場合は、企業側で適切なケアを施しましょう。


④経験やスキルが現在の業務に適しているとは限らない

アルムナイ制度を導入するときは、退職者を再雇用するときの条件を明確に設定する必要があります。自社での業務経験があるとはいえ、退職者の保有スキルなどが、現在の業務内容や事業方針に適しているとは限らないからです。
 
退職者の保有スキルなどが、現在の業務内容や事業方針に適していない場合、再雇用することでかえって現場を混乱させてしまう可能性があります。
 
業務の生産性や既存社員のモチベーションが低下する恐れがあるため、退職者の保有スキルなどの条件が、再雇用に値するかどうかをきちんと見極めましょう。


アルムナイ制度に適している人材の特徴

アルムナイ制度を導入しているからといって、自社の退職者ならば誰でも再雇用して大丈夫というわけではありません。アルムナイ制度を使っての再雇用に適している人材(再雇用に積極的な人材)と、そうでない人材がいるため、両者の主な違いを把握しておきましょう。
 
以下の表は、パーソル総合研究所が発表した資料「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査 結果報告書」より、アルムナイ制度に積極的な人材と、消極的な人材の特徴をまとめたものです。

アルムナイに積極的/消極的な個人


出典:パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査 結果報告書」
 
アルムナイ制度を使って退職者を再雇用するときは、上記の表のうち「アルムナイに積極的な個人」の特徴に当てはまる人材を再雇用するとよいでしょう。


アルムナイ制度を導入するときのポイント

アルムナイ制度を導入するときのポイントを3つ解説します。導入準備を進める際の参考にしてください。


再雇用の条件を明確に定める

アルムナイ制度を導入するにあたり、退職した元社員の再雇用条件を明確に定めましょう。再雇用の条件が明確でないと、既存社員から「会社を退職しても簡単に復職できる制度」と勘違いされてしまう可能性があります。
 
下記のように復職の条件を明確に定めておき、誰もがすぐに再雇用されるわけではない点を既存社員に理解してもらいましょう。

  • 自社に○年以上勤めていた人
  • 退職前の人事評価が○ランク以上だった人
  • 退職前にチームリーダー以上の役職に就いていた人 など……


アルムナイ制度を社内に周知する

再雇用の条件などを明確に定めたら、アルムナイ制度導入の旨を社内に周知します。下記のような内容を社内に周知し、アルムナイ制度への理解を深めてもらいましょう。

  • アルムナイ制度を導入する目的や理由
  • アルムナイ制度の基本情報
  • 制度に関する問い合わせ先


受け入れ体制を整える

アルムナイ制度を導入すると、以前勤めていた人が再び入社することになるため、業務現場の受け入れ体制をしっかりと整えておく必要があります。アルムナイを採用するにあたり、現場社員へのケアがないと、反発を招いてしまう可能性があるためです。
 
アルムナイを再雇用する前に、現場社員と個別面談して話す場を設けるなど、現場側の受け入れ体制に配慮した採用フローを構築しましょう。


アルムナイ制度の導入事例

ここでは、経済産業省の資料を基に、アルムナイ制度を導入している企業の事例を紹介します。


ウェルカムバックを歓迎する風土づくり

三菱ケミカル株式会社では、人材の多様性を促進することを目的に、企業に必要な専門性を有する人材を確保するためのアルムナイ制度を導入しています。

“ウェルカムバック”として自社に戻った人材を、“社外でスキルアップをして、自社で成果を上げる目的意識の明確な人材”として歓迎する風土を醸成しています。

出典:経済産業省『人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集


退職者との関係維持のためのネットワーク形成

株式会社荏原製作所では、自社の退職者との関係性を維持するために、“エバルムナイ(=荏原製作所のアルムナイ)”と呼ばれるネットワークを形成しています。

多様な人材の獲得をはじめ、協業やオープンイノベーションの促進が制度を導入する主な目的としています。退職者との関係を維持・構築するネットワークには、クラウド型SNSシステムを採用しており、社内のニュースやキャリア採用の情報を随時発信しています。

出典:経済産業省『人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集


エン・ジャパンのWelcome Back制度

エン・ジャパン株式会社では、“Welcome Back制度”として、2014年よりアルムナイ制度を導入しています。


▼エン・ジャパンのWelcome Back制度

ライフイベントによって退職した人や、キャリアプランを理由に転職した人を対象に再雇用を行っています。過去に活躍していた信頼できる人材を確保して、事業拡大の促進や多様な働き方の実現を図ることを目的とします。


事例の詳細については、こちらをご確認ください。

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まとめ

この記事では、アルムナイ制度について以下の内容を解説しました。


  • アルムナイ制度の概要
  • アルムナイ制度のメリット・デメリット
  • アルムナイ制度の導入事例


退職・転職した現役世代の元従業員を再雇用するアルムナイ制度には、採用ミスマッチを防ぎつつ、即戦力人材を確保したり、社内の活性化を図ったりできるメリットがあります。人材を大切にする企業として、信頼やイメージの向上につながることも期待できます。

アルムナイ制度は、求職者にとっても魅力的な採用手法といえるため、求人媒体で制度の詳細や過去事例などをアピールすることが有効です。


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「エン転職 採用ノウハウ編集部」は、HR業界で活躍している複数のメンバーで構成されています。構成メンバーは、現役の人事労務、1000社以上の企業を支援してきた採用コンサルタント、10年以上の経験を持つ求人専門のコピーライターなど。各領域の専門的な知識に基づき、企業の経営者・人事・採用担当者のお役に立てるように記事を執筆しています。 ※「エン転職 採用ノウハウ」はエン・ジャパン株式会社が運営している情報サイトです。
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