離職率の平均や計算方法は?高い会社の特徴と従業員を定着させる離職対策
せっかくコストも時間もかけて採用したのに、すぐに退職となってしまった…。
入社から数年かけて育ててきた、今後を期待する社員が退職となってしまった…。
そんな経験がある方もいらっしゃるかもしれません。どちらも非常に辛いですよね。
そもそも、自社の離職率が平均と比較して高いのか低いのか、よく分からない…という方も多いと思います。そこで、本記事では離職率の平均値や計算方法を解説。さらに具体的な離職防止策をご紹介します。貴社の定着率アップに、ぜひお役立てください。
▼退職を防ぐ20の具体策を個別に解説したより詳細な資料を以下から無料でダウンロードいただけます。ぜひご参考ください。
目次[非表示]
- 1.離職率とは?
- 2.離職率の平均は13.9%
- 3.離職率の計算方法
- 4.離職理由
- 4.1.離職理由のホンネと建前
- 5.離職率が高い労働環境の特徴
- 5.1.給与など待遇面が良くない
- 5.2.労働時間が長すぎる
- 5.3.ハラスメントが横行している
- 5.4.人間関係が良くない
- 5.5.評価制度や教育制度が適切でない
- 6.離職を防ぐ20の対策
- 6.1.離職対策一覧
- 6.2.納得度が高い評価制度にする
- 6.3.上司と定期面談する機会をつくる
- 6.4.メンター制度をつくる
- 7.離職率をチェックするときの注意点
- 8.離職率が高いと感じたら、採用段階から対策を
離職率とは?
離職率とは、「常用労働者」に対する「離職者」の割合のことを指します。
常用労働者とは、期間を定めずに雇われている人か、1ヶ月以上の期間を決めて雇われている人のことを言います。
そして離職者とは、常用労働者の中で「退職した」「解雇された」「他企業へ出向した」「出向元へ戻っていった」 というような人達を指します。
ちなみに、同じ企業内で、別事業所へ転出した人は、離職者ではありません。
離職率の平均は13.9%
離職率とは、従業員数に対して一定期間のうちにどれだけの人が退職したかを示す割合です。
厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」によると、離職率は13.9%でした。以下は
平成19年から令和3年までの離職率推移です。
平成19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
令和元 |
2 |
3 |
15.4 |
14.6 |
16.4 |
14.5 |
14.4 |
14.8 |
15.6 |
15.5 |
15.0 |
15.0 |
14.9 |
14.6 |
15.6 |
14.2 |
13.9 |
男女別の離職率推移
同じく厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」によると、令和3年の男性離職率は「12.8%」、女性離職率は「15.3%」でした。
以下は、平成19年から令和3年までの男女別離職率推移です。
年度 |
平成19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
令和元 |
2 |
3 |
男性 |
13.0 |
12.2 |
14.4 |
12.1 |
12.3 |
12.6 |
13.6 |
14.0 |
13.5 |
13.3 |
13.8 |
12.9 |
14.0 |
12.8 |
12.8 |
女性 |
18.8 |
18.0 |
19.0 |
17.6 |
17.2 |
17.6 |
18.7 |
18.4 |
17.7 |
17.6 |
17.3 |
17.1 |
18.2 |
15.9 |
15.3 |
産業別の離職率
業界ごとの離職率は以下のようになります。
業界 |
離職率 |
宿泊業・飲食サービス業 |
25.6% |
生活関連サービス業・娯楽業 |
22.3% |
サービス業(他に分類されないもの) |
18.7% |
教育・学習支援業 |
15.4% |
医療・福祉 |
13.5% |
卸売業・小売業 |
12.3% |
学術研究・専門技術サービス業 |
11.9% |
運輸業・郵便業 |
11.5% |
不動産業・物品賃貸業 |
11.4% |
鉱業・採掘業・砂利採取業 |
10.0% |
製造業 |
9.7% |
建設業 |
9.3% |
金融業・保険業 |
9.3% |
情報通信業 |
9.1% |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
8.7% |
複合サービス事業 |
8.1% |
離職率が高い業界は「宿泊業」「飲食サービス業」。続いて、「生活関連サービス業」「娯楽業」「サービス業(他分類されないもの)」となりました。
一方、離職率が低い業界は「情報通信業」「電気・ガス・熱供給・水道業 」「複合サービス事業」「製造業」といった結果に。離職率の高低差は17.5ポイント。離職率は、業界によっての大きな差があると言えます。
離職率の計算方法
実は離職率の算出方法について法律上の明確な定めはありません。さまざまな計算方式があります。その中でも厚生労働省が実施している雇用動向調査での計算式は次の通りです。
離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%)
その他にも、以下のような計算方法があります。
年度ごとの離職率 |
起算日(年度初め)から1年間の離職者数 ÷ 起算日における在籍者数 × 100 |
新卒の離職率 |
年度初めに入社した新卒のうち1年以内に離職した社員数 ÷ 同年度に入社した新卒社員数合計 × 100 |
中途の離職率 |
年度内に入社した中途社員のうち1年以内に離職した社員数 ÷ 同年度に入社した中途社員数合計 × 100 |
(例)1年間の全社員の離職率の計算方法
4月1日の社員数が300名の会社で、1年間に10名の社員が離職した場合(雇用動向調査で用いられている計算式を活用 )。
10 ÷ 300 × 100(%) = 3.33…%
その年の離職率は「約3%」になります。
(例)新卒3年以内の離職率の計算方法
会社の定着率が高いか低いかを判断する指標の1つとして、「新卒3年以内の離職率」があります。例えば2023年に10名の新卒社員が入社し、2023~2025年にそのうち3名が退職した場合。
3 ÷ 10 × 100(%) = 30%
2023年度入社の新卒3年以内の離職率は「30%」という計算になります。
離職理由
「体調の問題」、「家族の問題」など様々な離職理由がありますが、多くの場合その理由が本心ではありません。実に、2人に1人が本当の離職理由を伝えていない事実があります。
このように、離職理由にはホンネと建前があり、ホンネの離職理由の中にこそ、会社が解決すべき問題が含まれています。
離職理由のホンネと建前
転職者が持つ、転職・退職理由のホンネとタテマエを、転職コンサルタントに伺いました。
その結果が、上記の図です。これを見ますと、タテマエでは「スキルアップしたい」「能力を発揮したい」といった理由が多い一方、ホンネでは「報酬」「人間関係」「評価」といった理由が多いことが分かります。
もし自社で「退職をしたい」といった人が出てきたら、本人の言葉を聞くことも大事ですが、「報酬」「人間関係」「評価」といった点に不満があるのではないか、こちらからヒアリングしてみても良いかもしれません。
離職率が高い労働環境の特徴
続いて、離職率が高くなりやすい労働環境の特徴を具体的に5つ解説します。自社に当てはまる部分がある場合は、改善策をとりましょう。
給与など待遇面が良くない
離職理由の本音にもあるように「報酬をあげたい」と考えている労働者は多いものです。給与や賞与などの待遇面が相場より低いと、労働者が他社へ流れてしまう可能性が高くなります。
12職種分のスキル別「給与相場」を以下の記事でご紹介しておりますので合わせてご覧ください
▼給与相場レポート│人事・採用担当が知りたい職種 × スキル別の年収実態
また、給与や賞与のほか、以下のような待遇面の不満から離職が増えるケースもあります。
・残業代が出ない
・福利厚生が少ない
・休日の日数が少ない
・有給休暇を取得しにくい雰囲気がある
・リモートワークなど柔軟な働き方を選べない
労働時間が長すぎる
長時間労働が当たり前になっている企業は、社員が疲弊しやすいため、離職率が高い傾向にあります。
・深夜残業が常態化している
・残業しないと評価されない風潮がある
・業務目標が高く休日出勤しないと達成できない
会社の中にこういった風潮があると、社員の疲労感や不信感が高まり、離職につながりやすくなります。
ハラスメントが横行している
パワハラ・セクハラ・モラハラ・マタハラなど、ハラスメントが社内で横行していると、社員がストレスを抱えやすくなります。
ハラスメントは社会的に許されない行為です。ハラスメントの対象となった社員が、精神的・肉体的に不調を抱えてしまう可能性があるので、必ず会社として防止策をとりましょう。
ハラスメントは一般的に、上司から部下へ行なわれやすいものですが、場合によっては同僚同士でも生じる可能性はあります。全従業員へ定期的にハラスメント研修を実施するなどして、ハラスメントを許容しない環境を整えましょう。
人間関係が良くない
社内の風通しが悪く、人間関係が良くないのも、離職率が高い企業の特徴です。チームや部署の垣根を越えて、スムーズなコミュニケーションがとれるように、職場環境を改善する必要があります。
社内報で他部署の様子を広報して親近感を持てるようにしたり、定期的に他部署との交流会を設けたりするなど、社内の風通しが良くなるよう工夫するとよいでしょう。
評価制度や教育制度が適切でない
以下のように、多くの社員が「人事評価制度や教育制度が適切でない」と感じてしまう場合も、離職率が高くなります。
・社員の頑張りが人事評価に反映されない
・人事評価制度が適切でなく、公平性を感じられない
・教育制度が充実していないため、不安なまま実務をこなさなくてはならない
人事評価制度は、社員が「客観的に評価されていて納得できる」と感じられるような制度を整えましょう。人材教育に関しては、メンター制度などを導入して社員へのフォロー体制を強化したり、定期的な研修などを用意して、社員が自分の成長を感じられる機会をつくったりするのがおすすめです。
離職を防ぐ20の対策
「離職率平均」や「業界別の離職率」を見て、「自社の離職率は高そう…」と感じた場合、対策が必要です。離職率が高いままだと、採用コストが無駄になったり、組織のモチベーションが下がって連鎖退職につながってしまったり、社内にノウハウがたまらなかったりと様々なデメリットが生じます。
そこで離職を防ぐ対策として、20の具体策をご紹介します。貴社の離職率改善・定着率向上に、ぜひお役立てください。
▼退職を防ぐ20の具体策を個別に解説したより詳細な資料を以下から無料でダウンロードいただけます。ぜひご参考ください。
離職対策一覧
以下の離職を防ぐ20の対策の中から、ピックアップして詳細を解説します。
- 報酬を上げる
- 福利厚生を充実させる
- 納得度が高い評価制度にする
- 上司(管理職)の教育を行なう
- 上司と定期面談する機会をつくる
- 人事と定期面談する機会をつくる
- 社員からの相談室を設ける
- 育成・研修方法を変更する
- 企業の方向性・ビジョンを共有する
- 称賛文化をつくる
- 多様なキャリアパスをつくる
- 柔軟な働き方を実現しやすい環境をつくる
- 仕事量を改善する
- 転勤可否を都度確認しておく
- 社内交流を活性化させる
- メンター制度をつくる
- 企画から社員が行なう社内プロジェクト
- 定期的にストレスチェックを行なう
- 風通しの良い環境にする
- 企業理念の浸透を行なう
納得度が高い評価制度にする
人事評価に納得できない場合、「自分はこの会社で評価されない」と離職を考えるキッカケになりやすいでしょう。参考までに、評価の納得度を高めるポイントをいくつかご紹介します。
■ 評価軸を「可視化」して、透明性をもたせる
「◯◯ができるようになったら昇給」「□□を達成すれば昇格」といったように評価軸を可視化すると、納得度が高くなります。何ができれば昇給・昇格できるのか指針が明確になるため、社員もモチベーションも高く仕事に取り組めます。
■ 上司(評価者)と評価基準の共通認識を持つ
評価する側とされる側で評価基準にズレがあると、納得のいく結果になりません。上司(評価者)と目標を設定する際に、基準をすり合わせるのがオススメです。
■360度評価を取り入れる
評価者が上司1人だけだと、個人の主観によって評価が偏る可能性があります。また、上司が見ていないところで社員が頑張っているケースも少なくありません。そこで、上司だけでなく周りの社員からの評価も集める「360度評価」を取り入れることで、評価の客観性を高めることができます。
上司と定期面談する機会をつくる
上司との面談は、特に「入社後の活躍度」を向上させる効果があるとされています。目標に対するヒアリングだけでなく、部下の現状や悩みに寄り添い、部下の能力を引き出す定期面談の実施が有効です。
定期面談は部下の成長を促す「人材育成」のための時間であるため、「今」だけでなく「未来」のキャリアについても話すとよいでしょう。今後についても相談できる環境をつくることで、上司と部下の信頼関係を作りやすく、良好な関係性を築く機会にもなります。
人事と定期面談する機会をつくる
人事との面談は、特に「離職の防止」に効果があるとされています。上司や周囲の社員には話しづらい内容の相談先があるだけで、入社後の早期離職を防止しやすくなります。
会社・仕事にギャップを抱いていないか、入社から3か月間、月1回程度のペースで定期面談することをオススメします。
メンター制度をつくる
メンター制度とは、新入社員や若手社員のキャリア形成や職場における悩みに対して、先輩社員が助言する制度のことです。
新入社員に「困ったら相談してね」と伝えていても、声をかけづらくて相談しづらいといった悩みをよく耳にします。「メンター制度」として制度化されている、相談先が決まっていることで、
悩みを相談しやすく、安心感を持てたり、職場に早く馴染めるといった効果があります。また、メンターとなる先輩社員にとっても、責任感や帰属意識が生まれやすく、企業定着を促す効果があると言われています。
離職率をチェックするときの注意点
最後に、企業の離職率をチェックするときの注意点を2つ解説します。企業の離職率をチェックするときは、以下の2点を念頭に置いておきましょう。
離職率だけで企業を評価しない
離職率は企業の労働環境などを推し量るひとつの指標となります。しかし、単に離職率だけで企業の良し悪しを評価することはできないので、注意が必要です。
たとえば以下のような場合は、職場の労働環境や人間関係などが悪くないにもかかわらず、一時的に離職率が高くなります。
- 繁忙期などにより一時的に短期雇用の従業員を増やす場合
- ある特定の期間に多くの従業員が定年退職を迎える場合
上記のようなケースも考えられるため、一概に「離職率が高いから従業員が働きにくい企業なのだ」とは言い切れないのです。単純に離職率の数値だけを見て、企業の良し悪しを判断することはできないので、評価を誤らないよう気を付けましょう。
業種や企業規模によっても離職率の平均値は異なる
離職率の平均値は、業種や企業規模などにより異なります。たとえばベンチャー企業やスタートアップ企業は、大企業に比べて従業員の流動性が高いため、離職率も高くなりやすい傾向があります。
加えて、ベンチャー企業やスタートアップ企業には、「必要な知識・スキル・経験を身につけたら、キャリアアップのためにすぐ転職したい」と考える人材が集まりやすい傾向もあります。離職率が高いからといって、必ずしも労働環境に問題があるとは言い切れません。
また業種によっては、特定の専門スキルがある人材を有期雇用する「ジョブ型採用」を実施しているケースがあります。従来の終身雇用とは異なり、必要な期間のみ企業と人材が雇用関係となる契約で仕事を進めているので、契約期間が終了すれば解雇となります。
上記のように離職率の平均値が、業種や企業規模などによっても左右されることを念頭に置き、企業の離職率をチェックしましょう。
離職率が高いと感じたら、採用段階から対策を
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
離職率平均は現時点で、13.9%。ただし、業界によっても大きな差があるため、自社の業界と比較して自社の離職率が高いのか、低いのか判断する必要があります。
相場と比較して離職率が高いと感じた方のために、「離職を防ぐ20の対策」をご紹介してきましたが、制度の見直し、新たな制度設計、風土の醸成などを伴うものも多く、実行に移すまでに時間がかかるものも少なくありません。
より早期に離職率を改善したいとお考えであれば、採用段階から離職防止に向けた対策をするのが有効です。会社・仕事とのマッチ度が高い人を採用できれば、離職リスクも軽減できます。
入社後に活躍・定着する人材を採用したいのであれば、ぜひ『エン転職』をご活用ください。『エン転職』は日本最大級となる1000万人の会員を保有する、中途採用向け求人サイトです。
『エン転職』の強みの1つに「入社後の定着率の高さ」が挙げられます。エン・ジャパンが「入社1年以内の離職率」に関する調査を行なったところ、『エン転職』経由の入社者は「他サイト」と比較して離職率が半分以下であることが判明しました。
入社後活躍する人材の採用において、最も企業のお力になれるサービスは、『エン転職』をおいて他にいないという自負があります。ぜひ以下のお問い合わせ窓口からお気軽にご相談ください。
▼退職を防ぐ20の具体策を個別に解説したより詳細な資料を以下から無料でダウンロードいただけます。ぜひご参考ください。