メンター制度とは? 目的やメリット・デメリット、導入手順などを解説
メンター制度とは、先輩社員が新入社員や中途入社者の精神的・業務的なサポートをする制度です。新しく採用した人材の定着率を高める効果があることから、多くの企業で導入されています。
本記事ではメンター制度の導入目的やメリット・デメリット、実施する際のポイントなどを解説します。メンターに必要なスキルも紹介しますので、制度の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.メンター制度とは?
- 1.1.エルダー制度との違い
- 1.2.コーチングやティーチングとの違い
- 2.メンター制度を導入する目的
- 3.メンター制度を導入するメリット
- 4.メンター制度を導入するデメリット
- 5.メンター制度の導入手順
- 5.1.メンター制度の運用ルールを定める
- 5.2.メンターとメンティーの選定・マッチング
- 5.3.メンターとメンティーへの事前研修
- 5.4.メンタリングを実施
- 5.5.実施内容の振り返り・課題の洗い出し
- 6.メンターに必要なスキル
- 6.1.ヒアリング力・コミュニケーション能力
- 6.2.秘密を守り信頼関係を構築する力
- 6.3.仕事に関する知識・経験・スキル
- 7.メンター制度を行なうときのポイント
- 7.1.メンターとメンティーのミスマッチに注意する
- 7.2.メンティーに寄り添う姿勢を見せる
- 7.3.メンターのフォローを行なう
- 8.まとめ
メンター制度とは?
メンター制度とは、先輩社員が新入社員や中途入社者の精神的・業務的なサポートを行なう制度です。人材の定着率を高めたり、社員同士のコミュニケーションを活発化させたりする効果があることから、新入社員だけでなく勤続歴の浅い若手社員にも実施されるケースがあります。
メンター制度ではサポート役の先輩社員をメンター、サポートされる側の後輩社員をメンティーと呼びます。メンティーが相談しやすい環境をつくるため、メンターには「新入社員と年齢が近い他部署の先輩社員」を割り当てるのが一般的です。
エルダー制度との違い
エルダー制度とは、新しく採用した人材を早期育成するために行なうOJTの一種です。メンター制度と混同されがちですが、目的やサポート内容が少し異なります。メンター制度とエルダー制度の違いを下記にまとめました。
メンター制度 |
エルダー制度 |
|
主な目的 |
新入社員や中途入社者の定着率向上 |
新入社員や中途入社者の早期育成 |
サポート役 |
新しく採用した社員と年齢が近い、他部署または同部署の先輩社員 |
新しく採用した社員と年齢が近い、同部署の先輩社員 |
サポート内容 |
業務的なサポートだけでなく精神面のサポートも行なう |
業務的な指導を行なって早期育成を目指す |
コーチングやティーチングとの違い
メンター制度と似ている教育方法に、コーチングやティーチングと呼ばれる方法もあります。コーチングやティーチングは、あくまでも業務上の指導・サポートを行なうものです。
基本的には、メンター制度のように、新入社員の精神面までサポートするわけではありません。教育制度は、方針の違いに注意して導入しましょう。
メンター制度を導入する目的
メンター制度を導入する主な目的は、新入社員や中途入社者の離職を防止することです。厚生労働省が調査した資料によると、新入社員の3~4割が入社から3年以内に離職しているため、離職防止の取り組みが必要であると判明しています。
厚生労働省は、令和2年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況を取りまとめましたので公表します。
就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年度と比較して1.1ポイント上昇)、新規大学卒就職者が32.3%(同0.8ポイント上昇)となりました。
■ 新規学卒就職者の就職後3年以内離職率 ( )内は前年比増減
【 中学 】52.9% (▲4.9P) 【 高校 】 37.0% (+1.1P)
【 短大等 】42.6% (+0.7P) 【 大学 】 32.3% (+0.8P)
引用:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
また、日本労働組合総連合会が行なったアンケート調査では、新入社員が仕事に対する不安や悩みを感じたとき、相談できる相手が社内にいない状況であることが示唆されています。
出典:日本労働組合総連合会「入社前後のトラブルに関する調査2022」
こうした傾向を踏まえ、新入社員や中途入社者が社内で困り事を相談できず、離職しやすい状況を改善するために、多くの企業でメンター制度が導入されています。
メンター制度を導入するメリット
メンター制度には以下のようなメリットがあります。
- 新入社員の定着率が高くなる
- メンターを担う先輩社員の指導力が向上する
- 社員同士のコミュニケーションが活発化し、組織の風通しが良くなる
2020年12月、中途採用向け求人サイト「エン転職」などを運営するエン・ジャパンが、甲南大学 尾形教授とオンボーディングの共同研究を行ない、結果を公表しました。オンボーディングとは、採用した社員の受け入れから定着、戦力化を早期に行なうための施策群のことです。
この研究調査によると、メンター制度は「中途入社者のパフォーマンス向上・中途入社者の所属部門の業績向上・中途入社者の配属された職場のコミュニケーション活性化」など、多方面で好影響があると判明しています。
新しく入社した人材が、相談しやすい存在を社内につくることは、個人のパフォーマンスだけでなく職場全体にも良い影響を及ぼすのです。詳しい調査内容と結果は、以下のページでご覧いただけます。
▼『中途入社者のオンボーディング』と『入社後活躍』に関する調査・分析 ~甲南大学 尾形教授との共同研究~
メンター制度を導入するデメリット
メンター制度を導入するデメリットには、以下の3点が挙げられます。
- メンターを担う先輩社員の業務負担が増える
- メンターとメンティーの相性に注意する必要がある
- メンターの指導力によってメンティーの定着率が左右される
メンター制度は、新入社員や中途入社者のオンボーディングに効果的な施策です。しかしメンターとメンティーの相性や、メンターを担う先輩社員の指導スキルによって効果が変わります。
メンターとメンティーの相性が悪いと、困ったときに相談しづらいため、メンティーの定着率低下につながります。また、メンターの指導スキルが低い場合、メンティーのパフォーマンスが低下する可能性もあるでしょう。
メンター制度を導入したからといって、必ず良い効果が出るわけではないので、人選とマッチングには細心の注意が必要です。加えて、メンター役を担う先輩社員の業務負担を軽減させる工夫も必要となります。
メンター制度の導入手順
続いて、メンター制度の導入手順を5つのステップに分けて解説します。
メンター制度の運用ルールを定める
まずはメンター制度の導入にあたり、運用ルールを定めましょう。
- メンターの選出方法や選出基準
- メンティーとの相性を判断する方法
- メンタリング(サポートを行なうこと)の実施期間や回数
上記のようなルールを明確に定め、メンター制度の導入に向けて体制を整えます。ルールを定めたらマニュアルを作成し、制度導入後も定期的に運用改善しましょう。
また、メンティーが相談しやすい環境をつくるため、メンタリングで話した内容に守秘義務を課すことも大切です。
メンターとメンティーの選定・マッチング
次に先輩社員のなかから、メンターにふさわしい人を選定し、メンティーとのマッチングを図ります。メンターを選ぶときは、業績だけでなく人柄にも配慮し、メンティーと相性が良さそうな先輩社員を選びましょう。
メンターとメンティー双方の特性をチェックし、相性に配慮してマッチングを行なうには、適性検査を活用するのがおすすめです。適性検査を実施すると双方の価値観や考え方、性格特性、行動特性などの内面を数値化して分析できます。
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メンターとメンティーへの事前研修
人材の選定とマッチングが完了したら、メンターとメンティーに対し、メンター制度を開始するための事前研修を行ないます。事前研修では、以下のような内容を双方に伝えましょう。
- メンター制度の目的
- お互いに期待されている役割や行動
- メンタリングの実施方法・期間・回数
- メンタリング時に問題が発生した場合の解消方法
事前研修で制度の目的や運用ルールなどをきちんと共有し、メンターとメンティーが混乱することなく、スムーズにメンタリングへ臨めるよう配慮しましょう。
メンタリングを実施
事前研修を終えたら、運用ルールに則ってメンタリングを開始します。実施段階では、以下の2点に注意しましょう。
- メンターを担う先輩社員の業務負担を軽減させる
- メンターとメンティー両方に対して適宜フォローを行なう
メンターを担う先輩社員は、通常業務にプラスしてメンタリングを行ないます。メンタリング実施期間が終わるまでは、一時的に負担が増えるため、メンターの通常業務を同部署の社員で分担するなどして負担軽減に努めましょう。
また、メンタリングを実施しているからといって、メンターとメンティーを放っておいてはいけません。メンタリング時に何らかの問題が発生している可能性もあるので、上長が双方に適宜フォローを入れるなどして、放置状態にならないよう考慮しましょう。
実施内容の振り返り・課題の洗い出し
メンタリング実施期間が終わったら、内容の振り返りと、課題の洗い出しを行ないます。メンターとメンティー両方にアンケートや面談などを実施し、メンタリングの成功点・課題点・制度への要望などをヒアリングしましょう。
実施内容の振り返りは、あくまでも「自社のメンター制度をより効果的に運用するために行なうこと」です。守秘義務違反となる内容は、聞き出さないよう配慮しましょう。
また、ヒアリングした内容は社内で共有し、運用マニュアルへ反映させることが大切です。定期的に運用改善を行なえば、自社のメンター制度の効果が高まり、人材の定着率向上につながります。
メンターに必要なスキル
続いて、メンターを担う先輩社員に必要なスキルを3つ解説します。メンター制度は、メンターの指導力によって効果が左右されるため、以下3つのスキルがある社員を選定しましょう。
ヒアリング力・コミュニケーション能力
メンターにはヒアリング力・コミュニケーション能力が欠かせません。メンタリング実施時にメンティーの話をよく聞き、適切なアドバイスやサポートを行なわなくてはならないため、傾聴力・会話力のある人材を割り当てましょう。
秘密を守り信頼関係を構築する力
メンティーが働きやすい環境をつくるため、メンタリング実施時に話した内容には、基本的に守秘義務が課されます。メンターには、きちんと秘密を守る誠実さが必要です。
また、メンターとメンティーに信頼関係がないと、悩み事があっても相談しにくい状況となってしまいます。他者を委縮させることなく、良好な信頼関係を構築できる対人スキルが不可欠です。
仕事に関する知識・経験・スキル
メンターには、仕事に関する相談に応えられるだけの知識・経験・スキルも必要です。他部署の新入社員・中途入社者のサポートを行なう場合であっても、自社の業務に対する基本的な知識や、心構えを教えられる人材が適しています。メンティーのお手本となれるような先輩社員を、メンターに抜擢しましょう。
メンター制度を行なうときのポイント
最後に、メンター制度を行なうときのポイント・注意点を3つ解説します。
メンターとメンティーのミスマッチに注意する
メンター制度を行なうときは、メンターとメンティーのミスマッチが起こらないよう気を付けましょう。メンティーと相性の良くない社員をメンターにすると、メンタリングが余計なストレスとなってしまいます。
「悩みがあるけどメンターに相談しにくい・話しづらい」といった状態が続き、メンティーの早期離職につながる可能性もあるため、マッチングには最大限の注意を払いましょう。
メンティーに寄り添う姿勢を見せる
メンターはメンティーに寄り添う姿勢を見せることが重要です。間違ってもメンティーに対して、高圧的に説教したり、厳しく𠮟責したりするのはやめましょう。
時には先輩として、メンティーへアドバイスする場面もあります。いかなるアドバイスをするときも、相手への配慮を忘れず、敬意をもって話すよう心がけましょう。
メンターのフォローを行なう
前述したように、メンターを担う先輩社員は、通常業務にプラスしてメンタリングも実施します。メンターの業務負担が増え、過度な疲労やストレスを抱えてしまわないように、メンターへのフォローもしっかり行ないましょう。
- メンターの通常業務を同部署の社員で分担する
- メンタリング実施中、定期的にメンターへのフォロー面談を行なう
- メンターが困ったときに相談できるフォロー役の上司を決めておく
上記のような取り組みを実施し、メンターへのフォローを行なうことで、結果的に新入社員・中途入社者へのサポートもスムーズとなります。
まとめ
メンター制度の導入目的やメリット・デメリット、実施する際のポイントなどを解説しました。メンター制度には「新入社員や中途入社者の定着率向上」「社員同士のコミュニケーション活発化」などのメリットがあります。
きちんと運用ルールを定め、メンターの人選を適切に行なえば、新入社員や中途入社者の早期離職を防げるでしょう。
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