年功序列制度のメリット・デメリット|維持・廃止のポイントも解説


「年功序列とは」のイメージ画像


勤続年数や年齢に応じて賃金・役職などが上がる制度を「年功序列制度」といいます。年功序列制度は終身雇用を前提としており、企業側にとっては長期的に人材育成できるメリットがあります。


しかし近年、社会情勢の変化によって終身雇用が成り立たなくなっていることから、年功序列制度を見直し、成果主義へと移行する企業が増えています。


本記事では、年功序列制度のメリット・デメリットや、廃止する企業が増加している理由などを深掘りします。年功序列を廃止または維持する際のポイントも解説しますので、「自社の人事評価制度を見直したい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。


目次[非表示]

  1. 1.年功序列とは?
    1. 1.1.年功序列制度が普及した背景
    2. 1.2.成果主義との違い
  2. 2.年功序列制度のメリット
    1. 2.1.従業員が定着しやすい
    2. 2.2.長期的に人材を育てられる
    3. 2.3.人事評価システムを構築しやすい
  3. 3.年功序列制度のデメリット
    1. 3.1.社員の高齢化にともない人件費が増える
    2. 3.2.優秀な若手人材の離職につながりやすい
    3. 3.3.業務がマンネリ化し生産性が下がりやすい
  4. 4.年功序列を廃止する企業が増加している理由
  5. 5.年功序列を維持したい場合のポイント
    1. 5.1.評価制度を見直して賃金格差を是正する
    2. 5.2.社員がスキルアップできる環境を整える
  6. 6.年功序列を廃止したい場合のポイント
    1. 6.1.経営戦略を明確化し、成果主義への移行計画を立てる
    2. 6.2.新しい評価制度や教育制度を設定する
  7. 7.まとめ


年功序列とは?

年功序列とは、人事評価の際に社員の勤続年数や年齢を加味して評価を行ない、賃金・役職を決める制度のことです。勤続年数が長く、年齢が上であるほど、賃金・役職も高くなっていきます。


年功序列は「勤続年数が長いほど企業への理解が深く、業務スキルもあり、企業に貢献している」という考えが土台となっている人事評価制度です。


社員が定年退職するまで、ひとつの企業で勤め上げる「終身雇用」が前提の評価制度となっており、従来多くの日本企業で導入されてきました。


年功序列制度が普及した背景

年功序列制度は、高度経済成長期に生まれ、日本企業に定着したといわれています。戦後の日本では、企業が成果を上げるため人材確保を急務としており、労働者側は安定した生活を求めていました。


年功序列制度は、こうした双方のニーズに合致する人事評価制度だったため、企業側・労働者側に広く受け入れられ普及していきました。勤続年数に応じてほぼ自動的に昇給・昇格が叶う年功序列制度は、戦後日本の高度経済成長を長らく支えていたのです。


成果主義との違い

年功序列制度と正反対の評価方法に「成果主義」があります。成果主義とは勤続年数や年齢によらず、社員の業績・スキル・目標達成度などを評価基準として、賃金・役職を定める人事評価制度のことです。


成果主義は年功序列制度とは異なり、勤続歴の浅い若手社員であっても、実績次第で先輩社員を追い抜いて昇進できます。社員のモチベーション向上や、生産性向上につながりやすいことから、近年導入する企業が増えています。


年功序列制度のメリット

ここからは、年功序列制度のメリット・デメリットをより具体的に解説します。年功序列制度を廃止するか維持するかは、制度のメリット・デメリットをどちらも把握したうえで検討しましょう。


従業員が定着しやすい

年功序列制度は、勤続年数が長くなればなるほど昇給・昇進しやすい評価制度です。同じ企業に勤め続ける恩恵が大きい制度なので、従業員が定着しやすいメリットがあります。


また、従業員がひとつの企業に長く勤めると、帰属意識や連帯感が強まります。従業員同士のチームワークが良くなり、成果につながる点もメリットといえるでしょう。


長期的に人材を育てられる

年功序列制度は、終身雇用を前提とした評価制度です。人材を自社に長く定着させ、部署異動により複数の業務を経験してもらいながら、将来のマネジメント層を育成できます。


また一般的な傾向として、年功序列制度を継続している企業には、勤続歴の長いベテラン社員が多く在籍しています。ベテラン社員が多ければ、若手社員の教育にしっかり人員を割けるため、業務研修などの育成プログラムを実施しやすいメリットもあります。


人事評価システムを構築しやすい

年功序列制度は勤続年数や年齢が、人事評価の基準となります。評価基準がシンプルでわかりやすいため、明確な人事評価システムを構築しやすいでしょう。


また従業員の勤続年数が長くなると、一人ひとりのスキルや経験値、業務適性なども会社側が把握しやすくなります。従業員の特性をもとに、適材適所な人材配置ができる点もメリットです。


年功序列制度のデメリット

続いて、年功序列制度のデメリットを詳しく見ていきましょう。


社員の高齢化にともない人件費が増える

年功序列制度は、社員の勤続年数や年齢に連動して賃金が上昇します。勤続歴の長い社員が増加すると、自動的に企業の人件費が高騰してしまうのです。


大きく経済成長し続けている企業であれば問題ありませんが、バブル崩壊後、日本企業が高度経済成長期のような成果を出し続けるのは難しい状況となっています。そのため、年功序列制度によって上がり続ける人件費を問題視し、人事評価方法を成果主義へ変更する企業が増加しています。


優秀な若手人材の離職につながりやすい

年功序列制度は、勤続歴や年齢が人事評価の基準となるため、勤続歴の浅い若手社員がベテラン社員以上の成果を上げても、昇給・昇格につながりにくいデメリットがあります。


高い成績を出せる優秀な若手社員が「頑張りが評価につながらない」「実績が正当に評価されない」と不満を抱きやすいため、モチベーションを保てずに離職してしまう可能性が高くなります。


業務がマンネリ化し生産性が下がりやすい

一般的に、年功序列による人事評価では、業績よりも勤続歴が重視されています。


人事評価における業績の評価割合が低いため、従業員が「無理に高い成果を上げなくても、最低限の業務をこなせばよい」といった考え方になりやすく、生産性低下につながりやすい傾向があります。


年功序列を廃止する企業が増加している理由

前述したように、年功序列制度にはメリットとデメリットがどちらも存在しています。バブル崩壊後、社員の高齢化にともなう人件費高騰を問題視する企業が増え、年功序列制度を廃止するケースが相次ぎました。


また、リーマンショックなどによって日本企業の経済成長が滞り、人材育成にかかるコストが削減されやすくなっている点も、年功序列の廃止に影響しています。


社会の変化が激しい昨今においては、新卒者を長期間かけて育成するより、即戦力人材を採用して短期間で業績を上げた方が、企業にとって利益が大きいと判断されるようになってきたのです。


こうした社会情勢の変化により、年功序列を廃止して成果主義へ移行する企業が増加しています。年功序列と成果主義どちらの評価基準を取り入れるかは、自社の業績や社風、人材育成にかけられるコストなどを多角的に考えて判断するとよいでしょう。


年功序列を維持したい場合のポイント

ここからは、年功序列制度を維持したい場合、または廃止したい場合のポイントをそれぞれ解説します。


評価制度を見直して賃金格差を是正する

一般的に年功序列の組織下では、業績の高い若手社員の待遇が、中堅層の社員に比べて低くなりがちです。


優秀な若手社員が、中堅層との待遇差に不満を感じて離職しやすいため、人事評価における業績の評価割合を高めるなど工夫して、賃金格差をなるべく是正しましょう。


人事評価に勤続歴と業績が両方反映される仕組みを導入すれば、優秀な若手社員のモチベーションを保ちやすくなります。加えて、中堅社員の生産性向上にもつながるでしょう。


社員がスキルアップできる環境を整える

年功序列制度を維持する場合は、社員の生産性や向上心を適切に保つため、スキルアップできる教育体制を整えることも重要です。

  • 勤続年数や役職などで区切りをつけて段階的に業務研修を実施する
  • 定期的に部署異動を実施して新しい業務経験を積んでもらう
  • 社員の資格取得を支援する福利厚生制度を設ける


上記のように、社員がスキルアップできる環境を整えておくことで、「ただ長く在籍していれば評価される」というマンネリ化した雰囲気が社内に醸成されるのを防げます。社員の向上心が刺激され、生産性アップにつながるでしょう。


年功序列を廃止したい場合のポイント

年功序列を廃止し、成果主義へ移行したい場合は、新たな評価制度や経営戦略を設ける必要があります。移行計画を立て、段階的に成果主義を導入しましょう。


経営戦略を明確化し、成果主義への移行計画を立てる

成果主義を導入したいからといって、いきなり人事評価制度を変更すると、社員が混乱してしまいます。成果主義を導入するときは、自社の新たな経営戦略を明確化し、移行プランを立てて計画的に変更しましょう。


「時代の変化に適した経営戦略を策定し、その戦略を遂行するために成果主義の導入が必要」という旨を、既存社員へきちんと説明すれば、大きな反発を受けることなくスムーズに導入できるでしょう。


新しい評価制度や教育制度を設定する

成果主義の導入にともない、新しい評価制度や教育制度の制定が必要となります。

  • 自社の職種に適した評価基準・評価方法の設定
  • 新たな人事評価制度の設定にともなう賃金体系の変更
  • 成果主義の評価制度に対応できる人材育成プログラムの設定


上記のような制度の変更や新設を行ない、新しい体制下でスムーズに業務遂行できるよう、環境を整えましょう。


また、成果主義を導入することにより、勤続歴の長い中堅~ベテラン社員の待遇が低くなる場合、労働契約法に抵触する可能性があります。


労働条件を労働者にとって不利益な内容へ変更する場合は、労働者の合意を得る必要があるため、必ず個別で説明する場を設けましょう。


まとめ

年功序列制度の特徴や、廃止する企業が増加している理由、廃止または維持する際のポイントを解説しました。


年功序列は、日本企業の標準的な評価方法として、長らく活用されてきた制度です。年功序列制度にはメリット・デメリットが両方あるため、年功序列であることを魅力的に感じる求職者もいます。


企業にとって大切なのは、年功序列/成果主義どちらだったとしても「その評価制度を魅力的に感じる人材」をターゲットにして求人広告を作成し、自社に適した人材を集めることです。


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