コンピテンシーとは? 類似用語との違いや面接・人事評価での活用方法
コンピテンシーとは、高い成果を上げている社員に共通する行動特性のことです。近年、コンピテンシーは採用面接や人材育成、人事評価などに活用されています。
しかし、似たような意味をもつ言葉との違いや、具体的な活用方法がわかりづらく、戸惑ってしまう方も多いでしょう。
本記事ではコンピテンシーについて、類似用語との違いや活用するメリット、具体的な活用方法などを解説します。コンピテンシーによる評価の導入手順もご説明しますので、採用活動や人事評価にお役立てください。
目次[非表示]
- 1.コンピテンシーとは?
- 2.コンピテンシーと類似している言葉との違い
- 2.1.スキルとの違い
- 2.2.アビリティとの違い
- 2.3.ケイパビリティとの違い
- 2.4.コア・コンピタンスとの違い
- 3.コンピテンシーを活用するメリット
- 4.コンピテンシーを活用するデメリット
- 5.コンピテンシーを活用できるシーン
- 6.コンピテンシーによる評価を導入する手順
- 6.1.① 社内のハイパフォーマーを調査
- 6.2.② コンピテンシーモデルを作成
- 6.3.③ 評価レベルの設定
- 6.4.④ 導入して定期的に改善する
- 7.まとめ
コンピテンシーとは?
コンピテンシーとは、社内で高い成果を上げている人物に共通する行動特性のこと。主に、以下の図の「見えにくい特徴」に該当する部分がコンピテンシーに当たります。
コンピテンシーによる評価は、ただ単純に行動や成果だけを評価対象とするのではありません。行動や成果の基となっている価値観や考え方、性格、思考パターンなどに着目して人材を評価します。
コンピテンシーが注目されている理由
近年、コンピテンシーが注目されている理由には、成果主義を導入する企業が増えてきた点が挙げられます。従来の年功序列による人事評価から、成果主義へと評価方法を移行するにあたり、以下のような問題が生じてしまうためです。
- 社員の成果をどうやって公正に評価するのか?
- 数値的な成果に結びつきにくい業務はどうやって評価するのか?
ひとつの会社内に多くの業務があり、そのなかには売上金額などのわかりやすい成果につながらない仕事もあります。単純に数値的な成果だけを評価する方針になってしまうと、「部下の育成」などの数字に直接つながらない仕事を軽視することになりかねません。
こうした問題点を解消するために、単純な成果主義ではなく、評価基準としてコンピテンシーを導入する企業が増えています。コンピテンシーを評価に活用すれば、数値的な成果だけでなく、行動方針や考え方などの多面的な項目で、人材を評価することが可能となります。
コンピテンシーと類似している言葉との違い
コンピテンシーと類似しており、混同されやすい言葉に「スキル・アビリティ・ケイパビリティ・コアコンピタンス」などがあります。それぞれの言葉との違いを解説します。
スキルとの違い
スキルは勉学や研修、訓練などによって後天的に身につけた、専門的な技術や能力のことです。たとえば英語力やコミュニケーション能力などが、スキルに該当します。
コンピテンシーは、仕事で成果を上げるために必要な資質や、考え方などを全般的に指す言葉です。スキルを保有していても、それを発揮するコンピテンシーが備わっていなければ、成果につながらないと考えられています。
アビリティとの違い
アビリティには、能力や技量などの意味があります。アビリティは先天的であるか、後天的であるかを問わず、その人がもつ能力を総合的に指す言葉です。対してコンピテンシーは、アビリティを発揮するための行動特性を指します。
ケイパビリティとの違い
ビジネスにおけるケイパビリティは、企業のもつ「組織的な能力や強み」を意味する言葉です。特定の社員だけに一定以上の能力や強みがあっても、それらは企業のケイパビリティという扱いにはなりません。
対してコンピテンシーは、ハイパフォーマーに共通する行動特性を指します。言葉の対象が「社員個人であるか」または「企業や組織であるか」という点が異なります。
ケイパビリティについては、以下の記事で詳しく解説しています。自社のケイパビリティを把握し、向上させるメリットなどを紹介していますので、あわせてご覧ください。
▼ケイパビリティとは? ビジネスでの意味や考え方をわかりやすく解説
コア・コンピタンスとの違い
ビジネスにおけるコア・コンピタンスは、「他社に真似されにくい強み・自社の核となる能力」といった意味で使われます。自動車メーカーのエンジン技術などがコア・コンピタンスに該当します。
コア・コンピタンスもケイパビリティと同様に、言葉の対象が「企業」です。コンピテンシーは、社員個人の行動特性を指す言葉なので、意味合いや使用シーンが異なります。
コンピテンシーを活用するメリット
コンピテンシーを人事評価や採用活動などに活用する主なメリットは、以下の通りです。
- 自社に適した人材を確保できる
- 効果的な人材育成ができる
- 公平な評価を行なえる
コンピテンシーは、社内で高い成果を上げる人物に共通する行動特性のことです。コンピテンシーによる評価を採用に取り入れると、自社で活躍できる人材を確保しやすくなります。
また、社内のハイパフォーマーに共通する特性を把握し、社員の育成に活かせば、活躍人材を効率的に育成できる可能性が高いでしょう。社内に高い成果を上げられる人材が増えれば、生産性が向上するメリットもあります。
人事評価においては数値的な成果のみでなく、行動方針や考え方などによる複数の項目で、社員を明確に評価しやすくなります。人事評価の公平性が高まり、納得感のある評価を実施できるでしょう。
コンピテンシーを活用するデメリット
コンピテンシーを人事評価や採用活動などに活用する主なデメリットは、以下の通りです。
- コンピテンシーの策定に手間がかかる
- 定期的に見直す必要がある
部署ごとにハイパフォーマーの共通項目が異なるため、コンピテンシーの策定には、多くの時間と手間がかかります。業績の高い社員を部署ごとにピックアップし、各社員へのヒアリングや分析を行ない、行動特性を洗い出すのは手間のかかることです。
また、洗い出したコンピテンシーをどのように評価項目へ落とし込むか、各部署で決定するのにも時間がかかるでしょう。洗い出したコンピテンシーが必ず正しいとは限らないため、評価項目を適切に設定できず、運用がうまくいかない可能性もあります。
またコンピテンシーは、経営状況など環境の変化によって、徐々に変わっていきます。コンピテンシーの変化に合わせて、評価項目を改善する手間もかかるでしょう。コンピテンシーを活用する場合は、長期的にじっくり取り組む意識をもつ必要があります。
コンピテンシーを活用できるシーン
続いて、コンピテンシーの活用シーンを具体的に3つ解説します。
採用面接
コンピテンシーは、採用面接で応募者を見極めるため、多くの企業で活用されています。ハイパフォーマーの行動特性を分析してモデル化した「コンピテンシーモデル」を基準に応募者を評価し、応募者が自社で活躍できる要素をもっているか見極めるのです。
コンピテンシー面接の質問には、STARメソッドというフレームワークが用いられます。Situation(状況)・Task(課題)・Action(行動)・Result(結果)という4つの観点から、応募者の価値観や考え方、思考特性などを掘り下げる質問を行ないます。
以下の表はコンピテンシー面接の質問例です。STARメソッドに沿った質問で応募者の特性を掘り下げられる内容になっています。
項目 |
質問例 |
Situation(状況) |
過去に取り組んだ印象的なプロジェクトを教えてください |
Task(課題) |
プロジェクトにおいて何か課題に感じることはありましたか |
Action(行動) |
課題を解決するために何をしましたか |
Result(結果) |
行動の結果はどのようになりましたか |
なお、コンピテンシー面接については、以下の記事で詳しく解説しています。採用面接でコンピテンシーを活用したいとお考えの方は、ぜひチェックしてください。
▼コンピテンシー面接で候補者を見極めるには。STARメソッドによる質問例と実践のポイント
人材育成
コンピテンシーを人材育成に活用すると、効果的な教育を社員へ施すことが可能となります。各部署でハイパフォーマーをピックアップして行動特性を分析し、「どのような考え方で行動すれば高い成果を出せるのか」に着目した研修や育成プログラムをつくりましょう。
業務内容や職責ごとにコンピテンシーを策定し、高い成果を出すための考え方や、行動の仕方を身につけられる育成プログラムをつくれば、各部門で業績の良い社員を育てられる可能性が高くなります。
また、各部門のコンピテンシーに合わせて、個人目標を立ててもらうのもおすすめです。コンピテンシーに沿った目標を立てて、達成に向けて試行錯誤を繰り返すことで、成果につながる思考パターンを自然と身につけられるでしょう。
人事評価
コンピテンシーを人事評価に活用している企業も多くあります。評価項目にコンピテンシーを取り入れることで、社員の数値的な成果だけでなく、業務プロセスまで客観的に評価できるようになります。
数値的な成果に直接つながりにくい仕事に対しても、公正な評価ができるようになるので、社員の納得感が高まり、モチベーションアップにつながるでしょう。コンピテンシーによる評価方法や手順は、以降で詳しく解説します。
コンピテンシーによる評価を導入する手順
ここからは、コンピテンシーによる評価を導入するための具体的な手順を解説します。次の4ステップに沿って評価方法を定めれば、納得感の高い公正な評価が可能となるでしょう。
① 社内のハイパフォーマーを調査
まずは社内で高い成果を上げているハイパフォーマーを調査・分析します。ハイパフォーマーを複数ピックアップし、面談によるヒアリングやアンケート、適性検査などを用いて、価値観や考え方などの行動特性を洗い出しましょう。
② コンピテンシーモデルを作成
次に、ステップ①で調査したハイパフォーマーに共通している行動特性を抽出し、コンピテンシーモデルを作成します。コンピテンシーモデルには、以下の3つの作成手法があります。
▼実在型モデル
実在型モデルは、自社のハイパフォーマーを基に作成するモデルです。実在する社員が基礎となるため、コンピテンシーモデルを作成する際にもっともよく使われています。
実在型モデルを用いるときは、「ハイパフォーマーの特性に偏りがないか」「ほかの社員でも再現できるか」といった点に注意して作成しましょう。再現性がない場合は、コンピテンシーモデルをもう一度練り直す必要があります。
▼理想型モデル
理想型モデルは「自社にとって理想的な人材の人物像」を設定し、その人物像からコンピテンシーを抽出したモデルのことです。社内に該当するハイパフォーマーがいなくても策定可能であるため、モデル作成の難易度が低くなります。
理想型モデルを作成するときは、ハードルが高くなりすぎないよう注意しましょう。コンピテンシーの習得が難しすぎると、社員のモチベーション低下につながる可能性があります。
▼ハイブリッド型モデル
ハイブリッド型モデルは、前述した実在型モデルと理想型モデルを掛け合わせたモデルです。実在するハイパフォーマーのコンピテンシーと、自社で理想とする人材の特性を組み合わせて作成します。
ハイブリッド型モデルは、社内のハイパフォーマーにとっても参考になるでしょう。しかしこちらも、再現性の有無と習得の難易度には注意が必要です。
③ 評価レベルの設定
続いて、評価レベルを設定します。一般的に、コンピテンシーによる評価では、以下の5つのレベルが用いられます。
レベル |
概要 |
① 受動的行動 |
|
② 通常行動 |
|
③ 能動行動 |
|
④ 創造行動 |
|
⑤ パラダイム転換行動 |
|
④ 導入して定期的に改善する
評価レベルまで設定したら、コンピテンシーを人事評価や採用活動の場面で、実際に導入します。導入後は定期的に効果測定し、必要があれば評価方法を改善しましょう。
コンピテンシーは、経営状況など環境の変化によって変わるものです。自社の事業理念や目標、組織の方針が変わるタイミングで、新たに策定しなおす必要があります。
まとめ
コンピテンシーについて、類似用語との違いや活用するメリット、具体的な活用方法などを解説しました。コンピテンシーは、社内で活躍するハイパフォーマーに共通している行動特性のことです。
たとえば、コンピテンシーを採用面接に活かすと、自社で活躍する可能性が高い人材を採用しやすくなります。コンピテンシーを評価基準とする面接は、コンピテンシー面接とも呼ばれます。
自社にマッチする人材を採用するため、コンピテンシーによる評価を導入することは有効です。しかしコンピテンシーの分析や策定には、多くの時間と手間がかかるため、即座に取り入れるのは難しいでしょう。
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