コンピテンシー面接で候補者を見極めるには。STARメソッドによる質問例と実践のポイント
コンピテンシーとは、社内で高い成果を上げている人物に共通する行動特性を指します。企業の人事評価や人材育成などにコンピテンシーが活用されています。
採用面接においても、候補者の職務適性や組織風土との相性などを見極めるためにコンピテンシーが取り入れられています。このようなコンピテンシーに基づいた採用面接は“コンピテンシー面接”と呼ばれます。
企業の人事・採用担当者のなかには、「コンピテンシー面接と従来の面接は何が違うのか」「採用面接でどのような質問をするとよいのか」などと疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、コンピテンシー面接の概要や目的、フレームワークに基づいた質問例、実践のポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.候補者の本質を見極めるコンピテンシー面接とは
- 2.コンピテンシー面接を行う目的
- 2.1.職業適性を見極める
- 2.2.自社の風土や文化と合致しているかを確かめる
- 2.3.客観的かつ統一した基準で評価する
- 3.STARメソッドに基づくコンピテンシー面接の質問例
- 3.1.Situation(状況)
- 3.2.Task(課題)
- 3.3.Action(行動)
- 3.4.Result(結果)
- 4.コンピテンシー面接を行う際のポイント
- 5.まとめ
候補者の本質を見極めるコンピテンシー面接とは
コンピテンシー面接とは、候補者の行動特性や考え方の軸を基に、自社で成果を上げられるかどうかを判断する面接の手法です。
自社で高い成果を上げている従業員の行動特性を分析してモデル化した“コンピテンシーモデル”を基準に、候補者と照らし合わせて評価を行います。候補者がコンピテンシーモデルに近い行動特性を持っていれば、自社で成果を上げられることが期待できます。
コンピテンシー面接では、候補者が過去に取り組んできた行動に対して背景や意図を深掘りする質問を行い、行動特性を客観的に判断します。従来の面接とは、評価の対象や進行方法などに違いがあります。
▼従来の面接とコンピテンシー面接の違い
評価対象 |
評価方法 |
面接の進行 |
|
従来の面接 |
第一印象や質問の受け答え、経歴、スキル など |
面接官の判断で総合的に評価する |
志望動機や自己PRなどの表面的な内容を順番に聞く |
コンピテンシー面接 |
行動、思考、価値観、動機 など |
コンピテンシーモデルと比較して客観的に評価する |
候補者が過去にとった行動について質問と対話を重ねて、詳細を深掘りする |
コンピテンシー面接を行う目的
コンピテンシー面接は、候補者が自社の仕事内容に向いているか、風土や文化などの価値観がマッチしているかなどを見極めたいときに活用できます。
職業適性を見極める
コンピテンシー面接を行うと、ある出来事に対してどのような行動や考え方をするかを基準として、自社の職業における業務遂行能力を見極められます。
社内ですでに成果を出しているコンピテンシーモデルに近い行動特性や考え方を持った人材であれば、職業適性が高いと判断できます。
また、職歴や保有スキルといった表面的な要素だけでなく、内面的な要素を踏まえて将来の活躍が期待できるポテンシャルを見極めることが可能です。
自社の風土や文化と合致しているかを確かめる
自社の風土や文化と合致しているかどうかを判断することも、コンピテンシー面接を実施する目的の一つに挙げられます。
コンピテンシー面接では、候補者が過去に取った行動の理由・意図を尋ねることによって、事前に用意された回答ではない考え方や物事への価値観などを把握できます。
自社の風土や文化などと親和性の高い性格特性を持つ候補者を見極められると、カルチャー面でのミスマッチを防げるようになります。
客観的かつ統一した基準で評価する
コンピテンシー面接では、自社で高いパフォーマンスを発揮している従業員の行動特性を可視化したコンピテンシーモデルに沿って、候補者を客観的に評価することが可能です。
面接官の主観が入りにくくなるため、評価のばらつきを防いで面接の精度向上を図れます。また、質問を重ねて深掘りしていくことによって、誇張表現や矛盾点を見抜きやすくなり、候補者の本質を見極められます。
STARメソッドに基づくコンピテンシー面接の質問例
コンピテンシー面接の質問には、“STARメソッド”と呼ばれるフレームワークが用いられます。STARメソッドでは、Situation(状況)・Task(課題)・Action(行動)・Result(結果)の4つの観点から質問を掘り下げて面接を進行します。
Situation(状況)
Situationの項目では、候補者が過去に置かれていた状況について質問します。
▼質問例
- 「過去に取り組んだ印象的なプロジェクトを教えてください。」
- 「チーム内でどのような役割やポジションを担っていましたか?」
- 「プロジェクトに取り組んでいた期間はどの程度でしょうか?」
Task(課題)
Taskの項目では、これまでの就業経験のなかで何らかの解決が求められた課題について尋ねます。
▼質問例
- 「プロジェクトにおいて何か課題はありましたか?」
- 「チームにとってその課題は難易度が高いものでしたか?」
- 「課題が発生した原因は何だと考えていますか?」
Action(行動)
Actionの項目では、Taskで挙げられた課題を解決するために起こした具体的な行動について質問します。
▼質問例
- 「課題を解決するためにあなたが行ったことはありますか?」
- 「その行動を起こした理由を教えてください。」
- 「行動を起こすうえで何か苦労はありましたか?」
Result(結果)
Resultの項目では、候補者が起こした行動によってどのような結果がもたらされたのかについて質問します。
▼質問例
- 「行動の結果はどのようになりましたか?」
- 「起こした行動について、反省点や改善策などはありますか?」
- 「自分自身や周囲に対して、あなたの行動はどのような影響を及ぼしましたか?」
なお、STARメソッドを用いた面接の注意点や見極め精度を高める方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
コンピテンシー面接を行う際のポイント
コンピテンシー面接を実施する際は、新たに人材を採用したい部署や職種に応じたコンピテンシーモデルを作成して具体的な評価基準を定めることがポイントです。
①部署・職種ごとにコンピテンシーモデルを作成する
候補者を評価する軸となるコンピテンシーモデルは、人材を採用する部署や職種ごとに作成する必要があります。
自社で成果を上げられる人物の行動特性は、職務内容や役職などによって異なります。採用したい部署・職種ごとに活躍している従業員を洗い出して、それぞれに共通する要素からコンピテンシーモデルを作成することが重要です。
▼コンピテンシーモデルを作成するポイント
- 人事評価や業務実績などからハイパフォーマーを抽出する
- ハイパフォーマーへのヒアリングやアンケートを行い、共通する行動特性・思考パターンを分析する
- 組織のビジョンや採用方針を踏まえつつ、評価項目を設定する
②コンピテンシーレベルを基準に評価する
コンピテンシーレベルとは、行動特性のパターンを5段階に分類した評価基準のことです。
どれくらいのレベルに達する人材を獲得したいか、5段階に分けた行動特性をあらかじめ決めておくことで、面接官による候補者の評価にぶれが生じるのを防げます。
▼コンピテンシーレベル
段階 |
行動特性 |
1.受動行動 |
|
2.通常行動 |
|
3.能動行動 |
|
4.創造行動 |
|
5.パラダイム転換行動 |
|
③コンピテンシーモデルを定期的に見直す
コンピテンシーモデルは、定期的に見直すことがポイントです。
時代や環境が変われば、社内で成果を出す行動特性にも変化が生じる場合があります。過去に設定したコンピテンシーモデルを基準にし続けると、現場に合わない人材の採用によってミスマッチにつながる可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
この記事では、コンピテンシー面接について以下の内容を解説しました。
- コンピテンシー面接の特徴と従来の面接との違い
- コンピテンシー面接を行う目的
- STARメソッドに基づくコンピテンシー面接の質問例
- コンピテンシー面接を行う際のポイント
コンピテンシー面接では、過去の取り組み・状況において「どのような考え方や意図によって行動したのか」「物事に対してどのような価値観を持っているのか」といった内面的な要素を対話を重ねながら深掘りします。
従来の面接とは異なり、候補者の本質的な部分を客観的に評価できるため、職業適性や自社の風土・文化とのマッチ度などを見極めやすくなります。実施する際は、部署や職種に応じたコンピテンシーモデルを作成して具体的な評価基準を定めるとともに、定期的に見直しを行うことがポイントです。
また、自社にマッチする人材を効率的に見極めるためには、求人広告で詳細かつ正直な情報を提供して、応募前に企業理解を深めてもらうことも重要といえます。
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