ウエルビーイング経営とは? 5つの要素や取り組み方、企業事例を解説
ウエルビーイング経営とは、社員一人ひとりが肉体的・精神的に健康で、社会的にも満たされており、幸福度の高い状態となれる環境を整備する経営方法のことです。ウエルビーイングには「肉体的・精神的に健康で、社会的にも満たされた状態」という意味合いがあります。
近年、ウエルビーイング経営に多くの注目が集まっており、実際に取り組む企業も増えてきています。しかし、具体的にどのような取り組みをすべきか、頭を悩ませている方も多いでしょう。
そこで本記事では、ウエルビーイング経営についてわかりやすく解説します。ウエルビーイング経営を実践するための5要素や実施方法、実施している企業の事例などを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.ウエルビーイングとは?
- 2.ウエルビーイング経営とは?
- 3.ウエルビーイング経営を行なうための要素
- 3.1.PERMAモデルの5要素
- 3.2.Gallup社が提唱する5要素
- 4.ウエルビーイング経営のメリット
- 4.1.社員のモチベーションが上がる
- 4.2.生産性や企業価値が向上する
- 4.3.社員の定着率が上がる
- 4.4.新しい人材を確保しやすくなる
- 5.ウエルビーイング経営の実施方法
- 5.1.労働環境や待遇を改善する
- 5.2.社内のコミュニケーションを活性化する
- 5.3.定期的に従業員満足度調査を行なう
- 6.ウエルビーイング経営の実施例
- 7.まとめ
ウエルビーイングとは?
ウエルビーイング(Well-being)は「幸福・健康」といった意味のある言葉です。世界保健機関(WHO)憲章の前文で使用されており、「肉体的・精神的に健康で、社会的にも満たされている状態」と定義されています。
また、日本の厚生労働省では、ウエルビーイングを以下のように説明しています。
「ウエルビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。
ウエルビーイング経営とは?
ウエルビーイング経営とは、社員一人ひとりが肉体的・精神的に健康で、社会的にも満たされており、幸福度の高い状態となれる環境を整備する経営方法のことです。
ウエルビーイング経営は、自社の利益向上だけを追求するのではなく、組織の運営に携わる者すべてが、心身ともに健康で幸せに過ごせる状態を目指します。
厚生労働省では、少子高齢化による人口減少・社会構造の変化のなかで、ウエルビーイングの向上と、生産性向上の好循環を実現するための企業の取り組み方として、以下のような対応が重要であるとしています。
【就業面からのウエルビーイングの向上】
技術革新等の劇的な変化に直面し、ライフスタイルが多様化する中では、就業面からのウェル・ビーイング(※)の向上を図り、労働者一人ひとりが、自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を安心して送れる社会を築いていくことが重要。
【具体的な対応】
働き方を労働者が主体的に選択し、円滑な移動や転換、マルチキャリアパスを可能とするための環境整備の推進
企業による個人の希望・特性等に応じた雇用管理の推進、多様な働き方の実現
ウエルビーイング経営を行なうための要素
続いて、ウエルビーイング経営に欠かせない要素として、よく参考にされている下記2つの考え方を紹介します。
- PERMAモデルの5要素
- Gallup社が提唱する5要素
それぞれの考え方を詳しく見ていきましょう。
PERMAモデルの5要素
PERMAモデルとは「ポジティブ心理学の父」として世界的に知られているアメリカの心理学者マーティン・セリグマン博士が2011年に提唱した、ウエルビーイングを高める要素のことです。
マーティン・セリグマン博士は、人々が心身ともに健康で持続的に幸福を感じ、ウエルビーイングを高めるためには、以下5つの要素を満たすことが重要だと提唱しています。
- Positive emotion:ポジティブな感情
- Engagement:物事への没頭・没入
- Relationship:他者との良好な人間関係
- Meaning:人生の意味・意義
- Accomplishment:物事の達成・成功・達成感
Gallup社が提唱する5要素
アメリカでコンサルティングサービスなどを行なっているGallup社は、以下の5要素がウエルビーイングを高めるために重要だと提唱しています。
- Career Wellbeing(仕事による幸福)
- Social Wellbeing(良好な人間関係による幸福)
- Community Wellbeing(地域コミュニティによる幸福)
- Physical Wellbeing(身体的な幸福)
- Financial Wellbeing(経済的な幸福)
Gallup社は上記の5要素が国や地域、文化、宗教的背景を問わず、幸福を感じるために重要だとしています。ウエルビーイング経営を実践する際は、Gallup社が提唱する5要素またはPERMAモデルを参考にして、自社の環境を整えるとよいでしょう。
ウエルビーイング経営のメリット
ここからは、ウエルビーイング経営の具体的なメリットを4つ解説します。
社員のモチベーションが上がる
ウエルビーイング経営を実践し、企業の労働環境や就労条件が改善されると、社員のモチベーションアップにつながります。幸福度の高い環境が整備されれば、仕事によるストレスが軽減され、社員のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
生産性や企業価値が向上する
心身ともに健康で満たされている状態の社員が増えると、社内の人間関係も良好に保たれる傾向があります。就労環境が自然と改善され、働きやすい職場づくりが成功することにより、社員一人ひとりの生産性が向上するでしょう。
社員個人の生産性が上がれば、企業全体の成果も向上しやすくなります。ウエルビーイング経営を実施することで、結果的に企業価値を高められるといえるでしょう。
社員の定着率が上がる
ウエルビーイング経営は、組織の運営に携わるすべての人々が健康で幸福な状態を目指す経営方法です。そのためウエルビーイング経営を行なっている企業は、社員の満足度が高く、定着率も高い傾向にあります。自社の定着率を改善できれば、採用コストの削減にもつながるでしょう。
また社員の定着率が高く、離職率が低い企業は、ベテラン社員から若手社員へのノウハウの継承もスムーズです。組織として生産性の高い状態を維持できるでしょう。
なお、自社の離職率が高くてお悩みの方には、以下の記事も参考になります。離職率を下げるための対策を具体的に知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
▼離職率が高い会社の特徴とは|離職率を下げる対策8選も解説
新しい人材を確保しやすくなる
ウエルビーイング経営を行なうと、従業員が働きやすい環境を整えられるため、新たな人材を確保しやすくなります。従業員がストレスなく働ける環境を用意できることは、企業としての大きな魅力のひとつだからです。
ウエルビーイング経営を実施することにより、自社のイメージが良好となり、多くの求職者から「この企業で働いてみたい」と感じてもらえる機会が増えるでしょう。
ウエルビーイング経営の実施方法
続いて、ウエルビーイング経営の具体的な取り組み方法を解説します。すべての項目を並行して実施するのが難しい場合は、できる内容から少しずつ着手するとよいでしょう。
労働環境や待遇を改善する
職場は1日のなかで長い時間を過ごす場所です。労働環境や待遇を改善し、社員の肉体的・精神的な負荷を軽減できるよう工夫しましょう。
具体的な労働環境・待遇の改善策には、以下のようなものが挙げられます。
- 長時間労働や休日出勤の是正
- 業務分担の見直しによる負荷軽減
- 休日制度の見直し・有給休暇の取得推進
- フレックスタイム制・リモートワークの導入
- 人員配置の最適化・システム導入による業務効率化
社内のコミュニケーションを活性化する
社内の人間関係が悪いと、従業員のストレスが増えて、生産性の低下につながります。社内のコミュニケーションを活性化し、人間関係を円滑にすることも、ウエルビーイング経営のために重要な取り組みといえるでしょう。
社内のコミュニケーションを活性化するには、以下のような取り組みを実施するのがおすすめです。社員同士が良好な関係性を築きやすい制度やシステムを導入し、社内の風通しを改善しましょう。
- コーヒーブレイクを導入する
- 定期的に1on1ミーティングを行なう
- 社員同士の交流会を実施し費用を補助する
- 社内イベント・社内サークルなどの活動を推奨する
- メンター制度などフォローアップのための制度を導入する
- コミュニケーションが手軽にとれるチャットツールを導入する
定期的に従業員満足度調査を行なう
ウエルビーイング経営を実施する際は、定期的に従業員満足度調査(ES調査)を行なうのも効果的です。従業員満足度調査は、自社の従業員が職場環境・人間関係・仕事内容などについて、どのくらい満足できているかを測る調査のことです。
従業員満足度調査を行なうことによって、ウエルビーイング経営の進捗や成果をチェックできます。定期的に従業員の心身の状態を確認し、改善すべき点があった場合は、取り組み方を見直しましょう。
ウエルビーイング経営の実施例
最後に、ウエルビーイング経営を実施した企業の事例を紹介します。下記の事例を参考にして、自社に適したウエルビーイング経営の取り組み方を考えてみましょう。
楽天株式会社
楽天株式会社は、ウエルビーイング経営の一環として、以下のような取り組みを行なっています。
- 従業員の心身の健康状態を分析する「ウェルビーイングサーベイ(調査)」の実施
- 従業員の心の健康および職場全体のストレス傾向を把握する「ストレスチェック」の実施
- ヨガやストレッチ、ウォーキング、体操教室などの社内イベントを定期的に開催
味の素株式会社
「Eat well, Live well」のスローガンで有名な味の素株式会社では、以下のような取り組みを実施しています。
- 「食・料理」を通じてウエルビーイングに向き合うプロジェクトを開催
- 社員が自分自身の健康状態を知り、セルフケアを推進する活動の実施
また、アメリカでコンサルティングサービスなどを提供するGallup社と連携して、「調理の楽しさ」「共食」とウエルビーイングとの関係を調査するグローバルな活動も行なっています。
参考:味の素株式会社「わたしたちのウェルビーイング」
株式会社デンソー
自動車の部品メーカーである株式会社デンソーは、社員の健康を重要な経営資源と考え、ウエルビーイングの取り組みを実施しています。
- 社員の定期検診などのデータをもとに健康状態を数値で「見える化」
- 数値化した社員の健康状態の更なる改善を目指して行動指針を策定
- 各職場に「健康リーダー」を設けてチームの状態を把握・改善
参考:株式会社デンソー「サステナブルな社会は『健康』から始まる」
まとめ
ウエルビーイング経営を実践するための5要素や、取り組み方法、実施している企業の事例などを解説しました。ウエルビーイング経営とは、社員一人ひとりが肉体的・精神的に健康で、社会的にも満たされており、幸福度の高い状態となれる環境を整備する経営方法のことです。
ウエルビーイング経営には「社員の定着率向上」「生産性の向上」などの成果を得られる可能性があります。
社員が働きやすい環境を整えることによって、自社が求職者から見て魅力的な企業となり、新たな人材を確保しやすくなるメリットもあります。ウエルビーイング経営は、採用成功率を高めたい企業にもおすすめの経営方法といえるでしょう。
しかしウエルビーイング経営は、始めてからすぐに効果が出るものではありません。経営方針や計画を策定し、長期的に取り組んでいく必要があります。
「人手不足を解消するため、入社後に定着・活躍する人材をすぐに採用したい」という場合は、ウエルビーイング経営以外の取り組みも並行して実施するとよいでしょう。
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