定年退職は何歳?引き上げは法律上の義務?企業の実態や再雇用の方法も解説
少子高齢化の影響から、多くの企業が労働人材の確保に急ぐ今。長い実務経験や豊富な知識を持った定年退職者は貴重な戦力であり、再雇用などで働き続けてもらう企業も多いです。
そこで、この記事では「定年退職年齢は何歳にしたら良い?」「定年退職年齢の引き上げについてよく耳にするが、法律上で義務となっているのか?」「再雇用を進めるにはどうしたら?」といった疑問にお答えしていきます。
目次[非表示]
- 1.定年退職は何歳になったら?
- 1.1.そもそも定年退職制度を定めるべきか
- 1.2.定年退職は何歳?
- 1.3.定年退職のタイミングは?
- 2.高年齢雇用安定法の改正による影響
- 2.1.定年退職年齢の引き上げ措置
- 2.2.継続雇用制度の導入措置
- 2.3.定年制の廃止措置
- 3.定年退職や継続雇用の年齢を引き上げるメリット・デメリット
- 4.定年退職や継続雇用の年齢を引き上げる時のポイント
- 4.1.賃金制度・評価制度の見直し
- 4.2.雇用契約や就業規則の変更
- 5.継続雇用制度とは?
- 6.再雇用の進め方
- 7.シニア層人材の採用成功事例
- 8.まとめ
定年退職は何歳になったら?
従業員が一定の年齢となったら退職となる「定年退職」制度。多くの企業が導入していますが、
取り入れるか否かは企業に決定権があり、法律で定められているわけではありません。
この章では、定年制の設定についてアンケート調査のデータを用いて解説します。
そもそも定年退職制度を定めるべきか
大多数の企業が定年制を敷いているのが現状です。例えば、厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、94.4%の企業が定年制を定めています。
企業規模が大きくなるほど定年制を定める企業が多くなり、従業員1000人以上の企業に至っては99.3%もの企業が定めています。従業員30~99人の企業でも、93%が定年制を導入していることが分かりました。また、職種別で定める企業は2.1%とほとんどなく、94.4%が職種問わず一律で設定しています。
定年退職は何歳?
上記調査によると、72.3%の企業が「60歳」を定年としています。「65歳以上」を定年としている企業は24.5%。平成17年以降の調査において過去最高値であり、平成29年調査で65歳以上を定年としている企業は17.8%でした。
ここから読み取れることは、やはり高齢化・労働人口の減少の影響が大きいということ。人材の確保も難しくなっていることから、徐々に定年の年齢を引き上げている企業が増えていることがうかがえます。
また、高齢者の雇用を推進するための法改正もこの変化に影響しているでしょう。次章ではこの法改正について説明します。
定年退職のタイミングは?
定年退職年齢に達した際にどのタイミングを退職日とするかは企業に委ねられています。「定年退職年齢になった日」「定年退職年齢になった日の月末」「定年退職年齢になった日の給与の締め日」「定年退職年齢になった年度末」など様々です。給与計算の都合など状況に合わせて設定しましょう。
なお、定年退職のタイミングについても就業規則に記載必須であり、そのため従業員によって対応を変えることはできません。
高年齢雇用安定法の改正による影響
「高年齢者雇用安定法」は高齢者の職業安定などを目的とした法律です。少子高齢化、高齢者の働き方の多様化に伴って何度も改正が行なわれています。
2024年時点だと、定年を65歳未満としている企業は、以下3つのうちいずれかの措置を行なうことが義務付けられています。
- 65歳までの定年退職年齢引き上げ
- 65歳までの継続雇用制度の導入
- 定年制の廃止
このうち「65歳までの継続雇用制度の導入」は対象者を条件つきで限定しても良い、経過措置が取られていました。しかし、2025年4月に予定している改正で「希望者する全員」に65歳までの継続雇用しなければならなくなります。
これにより定年年齢の引き上げ、継続雇用、定年なし、いずれの選択をした場合も「65歳までの雇用確保が完全義務化」されることになりました。
各処置の詳細を見ていきましょう。
定年退職年齢の引き上げ措置
そもそもこれらの措置には、年金受給開始年齢の後ろ倒しが関係しています。老齢基礎・厚生年金は原則65歳から受け取ることができます。しかし年金制度の改正により、66歳~74歳に繰下げ、増額した年金を受給できるようになりました。そのため高齢者の無収入期間を防ぐために、定年退職年齢の引き上げや同等の措置が求められます。
定年退職年齢を引き上げる措置も認められていますが、あまりスタンダードな方法ではありません。定年に関する就業規則の変更のみで対応できますが、引き上げた分人件費がかさむため。次に紹介する継続雇用制度の導入措置が一般的です。
継続雇用制度の導入措置
厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によれば、一律定年制を定めている企業の中で継続雇用制度を導入している企業は94.2%となっています。多くの企業が設けているこの制度は、勤務延長制度・再雇用制度に分かれており、人気の制度です。後ほど詳しく解説します。
定年制の廃止措置
措置の一つとして定年制を廃止する方法があります。経済協力開発機構(OECD)が2024年1月に定年廃止を提言しているなど注目が集まる措置ですが、実際に行なうにはなかなか難しいでしょう。定年制を廃止しようとなると、年功序列制をベースにしている企業が多い日本においては、若年層・中堅層・高齢層を公平に扱うための人事システムを新たに構築しなければならないためです。
定年退職や継続雇用の年齢を引き上げるメリット・デメリット
法改正により何らかの措置を求められる定年制の問題。定年退職年齢を引き上げることで、企業にとってどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下でご紹介します。
定年退職や継続雇用の年齢を引き上げるメリット
- 労働力の確保
少子高齢化に伴い、労働力の確保は年々難しくなっています。そのような今、高齢労働者は貴重な戦力です。また、内閣府の「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査」によると、高齢期以降の労働意欲を持っている方々は多いです。「何歳まで収入を伴う仕事をしたいか」という質問に対して、60歳以上の男女の多くが仕事をする選択肢を選んでいます。
- 技術継承やコスト削減
長年の経験で培ったノウハウを活かしてもらえることは、定年退職や継続雇用の年齢を引き上げる大きなメリットです。十分なスキルを有しており、すでに企業のことを理解している分、業務をスムーズに進められます。また、新たな人材を採用し、育成するコストも抑えられます。さらに、再雇用制度であれば、戦力はそのままに人件費も削減することができるのです。
定年退職や継続雇用の年齢を引き上げるデメリット
組織の新陳代謝、次世代の育成が進まないことが主なデメリットとして挙げられます。その対策として「役職定年」を設ける企業も。定年退職や継続雇用の年齢を引き上げる上で、若手層・中堅層に早めに役職を与える、大きな仕事を任せるといった、組織の活力を維持するための施策も必要でしょう。
定年退職や継続雇用の年齢を引き上げる時のポイント
定年退職や継続雇用の年齢引き上げを行なう際には、いくつか気を付けたいポイントがあるため、ここから詳しく説明していきます。
賃金制度・評価制度の見直し
定年後の雇用時には最低賃金を守りながら、定年前の50%~70%の賃金に設定するのが一般的です。「同一労働同一賃金」の原則に則り、不合理な差が出ないように配慮して賃金制度を見直しましょう。
また、併せて評価制度についても見直すことをおすすめします。多くの企業で年功序列制度が浸透しており、再雇用社員の評価が難しいためです。若手層のモチベーション低下といった弊害も考えられるでしょう。定年退職や継続雇用の年齢引き上げに際して、柔軟に活用できる評価制度を再構築するのがベストです。
雇用契約や就業規則の変更
定年退職や継続雇用の年齢を引き上げる際は、雇用契約書の雛形、就業規則の変更・周知などが必要です。就業規則の変更時は労働基準監督署への届け出を行なわなければなりません。就業規則変更届・労働組合の意見書を提出しましょう。
継続雇用制度とは?
継続雇用制度とは、定年を過ぎた従業員を継続して再雇用する制度のことです。「再雇用制度」という名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。再雇用制度は、継続雇用制度の一つです。継続雇用制度にはもう一つ、勤務延長制度という制度があります。この章では、継続雇用制度の種類について説明します。
再雇用制度
定年退職した従業員と再度、雇用契約を締結する制度です。実務経験豊富な人材を確保できること、人材育成を任せられること、新たに採用を行なう必要がないことから、この制度を導入する企業は多いです。
以前とは異なる雇用形態、条件(労働時間・業務内容・賃金など)で雇用し、以前の役職は辞任となるのが一般的です。契約社員や嘱託社員へ切り替えるケースが多く、賃金も以前の50%~70%程度に。待遇の変更により人材流出が懸念されるため、防止策を取っておきましょう。
勤務延長制度
従業員が定年に達した後、労働条件はあまり変えずに雇用を続けるのが勤務延長制度です。条件面の変更がない分、これまでと変わらない人件費は確保する必要がありますが、当人からの不満が出にくいことが特徴です。そのため、特殊なスキルが求められる職種など、代わりの人材が見つからない場合に向いている制度だと言えます。
再雇用の進め方
定年を迎える従業員への対応は、企業にとって「やり方が分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。この章では再雇用の進め方を説明していきます。
対象者に意思を確認
まずは従業員に対して、再雇用の希望を確認しましょう。トラブルを避けるために、継続雇用に関する通知は個別に行なうのがおすすめです。
希望者には「再雇用希望申出書」を提出してもらうと明確です。また、「雇用条件に折り合いがつかず、再雇用に至らない」「本人が希望しない」など、定年退職となった場合は、念のため「再雇用辞退申出書」を提出してもらいましょう。
雇用条件を提示
再雇用希望者と個別面談を行ない、雇用条件などを確認。本人の希望する働き方をヒアリングし、お互いの認識を共有しておくことが大切です。というのも前述した通り、再雇用は「給与減額」「職位変更」「今の部下が上司に」など、モチベーション低下につながるケースが少なくありません。再雇用後も気持ち良く働いてもらうために配慮しながら進めましょう。
再雇用の手続き
合意が取れたら、雇用締結の手続きを実施。定年退職の手続き、退職金の支払いも必要なため、準備を進めておきます。雇用条件によっては雇用保険や社会保険関係の加入有無が変わるため、併せて確認しておきましょう。
シニア層人材の採用成功事例
ここまで既存従業員の再雇用について取り上げてきました。
人材確保のため定年年齢を引き上げや継続雇用を選択する企業が多いように、今後は高年齢層の活躍も増えていくことが予想されます。そこで、労働人材を確保する方法として、シニア層の新規採用もあります。
シニア層を狙った求人はあまりないため、応募数や採用成功に期待できる手法です。そこで、この章ではシニア層の採用成功事例を取り上げます。
今回取り上げる新雪運輸株式会社は食品の低温・常温物流を手がけており、ドライバー採用に『エン転職』を利用しています。シニア層の採用に狙いを絞って求人を掲載することで、掲載ごとに安定して採用を叶えてきました。
「ドライバーの仕事は長時間の運転となるため、運転経験が豊富なシニア層を狙いたい」と考えた新雪運輸。『エン転職』のコピーライターが作成したシニア層向けのアピール文を求人冒頭に掲載しました。その結果、ドライバーは応募が集まりにくい職種ですが、毎掲載30名ほどの応募があり、2名ほど採用できています。
▼新雪運輸の掲載求人(一部抜粋)
▼事例の詳細はコチラ
まとめ
少子高齢化が著しく進んでいる今、人材確保はどの企業にとっても大きな課題です。この記事では定年退職年齢の引き上げや継続雇用制度の利用について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
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