法定時間外労働とは? 所定時間外労働との違いや残業のルールなどを解説
時間外労働(残業)には、法定時間外労働と所定時間外労働があります。また、時間外労働への手当にもいくつか種類があり、手当ごとに賃金の割増率が異なるため、「ややこしくてよく分からない…」と感じる方も多いでしょう。
そこで本記事では、時間外労働の種類や意味、法律で定められたルール、各手当の賃金の割増率などをわかりやすく解説します。時間外労働への理解を深め、正しく運用するために、ぜひ本記事をお役立てください。
目次[非表示]
- 1.時間外労働の定義とは?
- 2.法定内残業と法定外残業の違いとは?
- 2.1.法定内残業
- 2.2.法定外残業(法定時間外労働)
- 3.時間外労働に関する法律の規定
- 3.1.36協定を締結する必要がある
- 3.2.時間外労働には上限時間がある
- 4.時間外労働の賃金について
- 4.1.通常の法定外残業(法定時間外労働)の割増率
- 4.2.固定残業代制(みなし残業代制)
- 5.まとめ
時間外労働の定義とは?
時間外労働(残業)には、法定時間外労働と所定時間外労働があります。簡単にご説明すると、2つの意味は以下の通りです。
- 法定時間外労働=法律によって定められた法定労働時間を超えて労働すること
- 所定時間外労働=企業によって定められた所定労働時間を超えて労働すること
まずは2つの違いについて、詳しく見ていきましょう。
法定時間外労働
法定時間外労働とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」を超えて労働することです。
法定労働時間は、労働基準法により「原則1日8時間・週40時間以内」と定められています。また原則として、使用者は「週少なくとも1回」は、労働者へ休日を与えなくてはなりません。
法定労働時間(労働基準法第32条、第40条)
【原則】
・使用者は、1週間に40時間を超えて労働させてはならない。
・使用者は、1日に8時間を超えて労働させてはならない。
引用:厚生労働省「現行の時間外労働規制の概要 ①労働時間法制について」
上記の法定労働時間を超えて、労働者を働かせる場合は、36協定(労使協定)を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。
所定時間外労働
所定時間外労働とは、企業によって定められた「所定労働時間」を超えて労働することです。企業が所定労働時間を設定するとき、法定労働時間を超えてはいけません。
また基本的に、所定労働時間は「始業~終業までの時間帯から、休憩時間を差し引いた時間」を指します。たとえば始業9時・終業17時・休憩12時~13時という場合、企業が定めた所定労働時間は7時間です。
法定内残業と法定外残業の違いとは?
続いて、法定内残業と法定外残業の違いを解説します。簡単に言うと、2つの違いは以下の通りです。
- 法定内残業=所定労働時間は超えているものの、法定労働時間は超えていない残業
- 法定外残業=所定労働時間も法定労働時間も両方超えている残業
以降で、上記の違いを詳しく解説します。
法定内残業
法定内残業とは、労働基準法によって定められた法定労働時間「原則1日8時間・週40時間」以内に収まる範囲で行なわれた残業のことです。
たとえば、所定労働時間が9時~17時(休憩1時間含む)の場合に、従業員が20時まで残業したとします。この場合、企業が定めた所定労働時間は1日7時間。つまり、法定労働時間の8時間よりも、1時間短くなります。
そのため従業員が残業した17時~20時までのうち、17~18時までは法定内残業の扱いとなります。18時~20時までは、法律で定められた法定労働時間を超えて残業しているため、法定外残業として扱われます。
法定外残業(法定時間外労働)
法定外残業とは、労働基準法によって定められた法定労働時間「原則1日8時間・週40時間」を超えて行なわれた残業のことです。企業側は従業員の法定外残業に対して、割増賃金を支払わなくてはなりません。
たとえば、所定労働時間が9時~17時(休憩1時間含む)の場合に、従業員が20時まで残業したとします。この場合、所定労働時間は7時間であるため、法定労働時間の8時間よりも、労働時間が短くなります。
つまり、残業時間のうち17時~18時までは法定内残業、18時~20時までは法定外残業ということです。割増賃金の対象となる残業時間は、法定外残業だけなので、18時~20時の残業代のみ割り増しで計算されます。
時間外労働に関する法律の規定
時間外労働には以下のように、労働基準法で定められたルールがあります。
- 36協定の締結
- 残業時間の上限
- 割増賃金の計算(割増率)
ここからは、時間外労働に関する法律の規定を解説します。
36協定を締結する必要がある
使用者が従業員に法定時間外労働をさせるには、あらかじめ36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。36協定とは、労働基準法第36条によって定められている労使協定の通称です。
労働基準法第36条では、時間外労働および休日労働に対して、以下のように定められています。
労働基準法 第36条(時間外及び休日の労働)
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
時間外労働には上限時間がある
36協定を締結したからといって、使用者が労働者を無限に残業させられるわけではありません。時間外労働には、法律で定められた上限時間があります。
労働基準法によって定められている時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」です。使用者は原則として、上限時間を超えて従業員を残業させることはできません。
ただし、「繁忙期で一時的に多くの残業が必要になる」などの特別な事情により、上限時間を超えた残業が必要な場合は、「特別条項付き36協定」を締結すれば、例外的に下記の条件で上限以上の残業が認められます。
時間外労働 |
年720時間以内 |
時間外労働+休日労働 |
月100時間未満 |
時間外労働の賃金について
最後に、時間外労働の賃金について解説します。前述したように、企業は従業員が法定労働時間を超えて残業した場合、割増賃金を支払わなくてはなりません。
また、あらかじめ一定の残業時間を設定し、その残業代を固定給に含めて従業員へ支払う「固定残業代制(みなし残業代制)」もあります。いずれにしても賃金を正確に計算し、正しく支給することが大切です。
通常の法定外残業(法定時間外労働)の割増率
従業員が法定労働時間を超えて残業した場合、企業側は残業手当として割増賃金を支払う必要があります。1ヶ月当たりの残業手当の計算方法は、以下の通りです。
1ヶ月の残業手当 = 1時間当たりの賃金(時給)× 割増率 × 1ヶ月の残業時間 |
また、1時間当たりの賃金(時給)は、以下の計算式で算出します。
1時間当たりの賃金(時給)= 1ヶ月当たりの賃金(月給)÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 |
月給には基本給や役職手当、資格手当などが含まれます。通勤手当や家族手当、住宅手当などは、残業手当の計算には含まれないので注意しましょう。
また、残業手当には「時間外手当・休日出勤手当・深夜手当」という3つの種類があります。各手当の割増率は以下の通りです。
- 法定外残業の割増率=25%
- 休日出勤手当の割増率=35%
- 深夜手当の割増率=法定外残業の割増率25%に加えて、さらに25%(=50%)
残業手当の計算については、以下の記事でより詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
▼残業手当の計算方法とは? 残業代の種類や割増率などを解説
固定残業代制(みなし残業代制)
固定残業代制(みなし残業代制)とは、あらかじめ一定の残業時間を設定し、その残業代を固定給に含めて従業員へ支払う制度のことです。企業側は実際に残業が発生したかどうかに関わらず、固定残業代の含まれた賃金を、労働者へ毎月支給します。
また、あらかじめ設定された「みなし残業時間」を超える時間外労働が発生した場合は、超過分の残業代を別途上乗せして支給する必要があります。「賃金に一定の固定残業代を含めて支給すれば、従業員を無制限に残業させられる」というわけではないので注意しましょう。
まとめ
時間外労働の種類や意味、法律で定められたルール、各手当の賃金の割増率などを解説しました。時間外労働には、法定時間外労働と所定時間外労働があります。このうち割増賃金の対象となるのは、法定時間外労働のみです。
時間外労働手当(残業手当)は正しく支給し、従業員が安心して働ける環境を整えましょう。時間外労働手当をきちんと支給する企業は、労働者にとって働き続けやすい優良な企業といえます。
ただし労働者の多くが、各手当に関する情報だけで、就労先を決めるわけではありません。自社に適した人材を集めるためには、求人上で給与制度をはじめとする「自社の魅力」をしっかりとアピールする必要があります。
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