人事戦略とは?│失敗しない立て方を事例つきで解説
・「新卒採用」も「中途採用」も以前と比べて難しくなっていると感じる
・「人事戦略」について社長に聞かれたけど、正直どういうものか分かっていない
・自社にも「人事戦略」は必要なのだろうか
・人事戦略の立て方が分からないので失敗しない手順が知りたい
本記事では、上記のような疑問や悩みにお応えします。
近年「人事戦略」を見直す企業が増えています。「人事戦略が必要なのは大手企業だけじゃないのか?」「自社の規模だとまだ人事戦略は立てるほどでもない」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
最初に結論からお伝えすると、世の中の多くの企業に「人事戦略」が必要です。大手企業だけでなく、中小企業でも人事戦略の策定・見直しを行うケースが、今増えています。
そこで今回は「人事戦略の定義」や「採用戦略や戦略人事との違い」「人事戦略に注目が集まる背景」「成功する人事戦略の策定フロー」について分かりやすくご紹介します。単なるケーススタディーではなく “自社に置き換えて使える内容” ですので、ぜひご活用ください。
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目次[非表示]
- 1.人事戦略とは?
- 1.1.採用戦略との違いは?
- 1.2.戦略人事との違いは?
- 2.人事戦略を立てるべき理由
- 2.1.少子高齢化に伴う人材獲得競争の激化
- 2.2.中小企業ほど採用難が顕著に
- 2.3.新卒一括採用・年功序列の崩壊
- 3.人事戦略を立てるメリット
- 3.1.人事・採用担当者の市場価値が高まる
- 3.2.選択肢の幅が広がる
- 3.3.求人に応募が集まりやすくなる
- 4.成功する人事戦略の立てる手順
- 4.1.経営戦略・経営目標を理解する
- 4.2.経営戦略と連動した人事目標を立てる
- 4.3.人事目標を施策・戦略に落とし込む
- 5.人事戦略の成功率をより高めるために出来ること
人事戦略とは?
人事戦略とは、人材の「採用・配置・育成・評価・定着」などの人事全般にかかわる業務や仕組みを改善することで、組織の生産性を高める動きです。
人事戦略は、経営目標に紐づいて考えます。経営目標を達成するために、人材面でのあらゆる課題を解決する方法を考えるのが人事戦略と言えます。
例えば、会社が「5年で売上を10倍にする」という経営目標を掲げたとします。その達成のために必要な人事戦略の一部として、以下が挙げられます。
5年で売上を10倍にするための人事戦略 | |
採用 |
・新卒で●名のメンバークラスの社員を採用する必要がある。
・中途で●名のリーダークラスの社員を採用する必要がある。
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配置 |
・事業企画、商品企画の強化が優先課題。異動で●名を確保する。
・リーダー以上の役職者●名を基幹事業に異動させる。
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育成 |
・採用した人材をマネジメントするために、リーダー以上を●名育成する必要がある。
・特定スキル・資格を保有する人の採用が難しいので、社内で育成する制度をつくる。
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評価 |
・リーダー以上の役職者を増やすために昇格チャンスを増やす。
・昇格基準を社内で作って明示する。
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定着 |
・採用だけでは目標の組織体制に追いつかない。離職率を5%下げる必要がある。
・定着率を高めるために待遇改善や、人事への相談窓口を設置する。
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採用戦略との違いは?
「採用戦略」は人事戦略の中の「採用に関する戦略」だけをさす言葉です。自社に必要な人材を採用するための戦略を意味します。
「いつまでに、どんな人材を、何名採用する必要があるか」だけでなく、こうした人材を「どのように採用するのか」まで考えるのが採用戦略です。
今世の中には求人があふれています。採用活動を行なえば、何百・何千という求人と比較されることは避けられません。比較されたうえで、自社の求人に応募してもらうために、内定承諾してもらうために、人事や採用担当者は様々な策を練ります。
そのため、採用戦略を練る方にはより「採用市場に関する知識や相場観」が求められます。失敗しない採用戦略の立て方は以下の記事で紹介しておりますのでご参考ください。
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戦略人事との違いは?
「人事戦略」と似た言葉に、「戦略人事」があります。実は「戦略人事」の定義は明確ではありません。戦略人事の語源は、経済学における「戦略的人的資源管理論(Strategic Human Resource Management)」といわれています。
ただし、「戦略的人的資源管理論」の中で戦略人事という言葉はあまりみかけません。「戦略的人的資源管理論」の研究の中で、「人事はもっと戦略的であるべきだ」という主張が広まったことで生まれた造語です。
そのため定義はあいまいですが、「戦略人事」を 「企業の経営目標を達成するために人材をマネジメントする仕組み・考え方・役割」という意味で使用するケースが多いです。
「人事戦略」との使い分けとして、「戦略人事」はより経営に近しい人事の役割として使用されます。企業が掲げる経営目標の達成のために、経営課題の解消のために、上流工程で人材に関する戦略を立てるのが「戦略人事」。その戦略人事をうけて、人事関連業務の効率化を図る運用上の戦略が「人事戦略」という風にイメージすると分かりやすいかと思います。
人事戦略を立てるべき理由
人事戦略は、「大企業」だけではなく、「中小企業」でも必要性が高まっています。なぜ今になって、人事戦略が注目されているのでしょうか?
簡単に要点をまとめると以下になります。
- 少子高齢化・労働人口減少など様々な要因で、以前より採用が難しくなる。
- 優秀人材の採用は、なおのこと競争率が高まる。
- 採用が難しくなったので、採用の成功率を高めるために「戦略」が必要になる。
- 採用ができないので、今いる社員を「育成」することで代替する必要が出てくる。
- 採用ができないので、今いる社員が辞めないように「定着」を促進する。
- そのために、採用・育成・定着などの人事戦略が見直される。
背景にある社会やビジネスの変化について、より詳細に解説していきます。
少子高齢化に伴う人材獲得競争の激化
採用難易度を測る指標の1つに、厚生労働省が公開している有効求人倍率があります。有効求人倍率は「求職者1人あたりに対して何件の求人があるか」を示す指標であり、高ければ高いほど「採用する企業にとっての競争相手が多い状態」=「採用が難しい状態」です。
以下が、2023年記事執筆時点の最新の有効求人倍率です。
リーマンショック以降は有効求人倍率が右肩上がりで伸び続け、2019年は「過去最高の採用難」とまで言われていたほどでした。
2020年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて有効求人倍率は低下。しかしこの傾向はあくまで一時的なもので、2023年には1.35倍まで上昇しています。さらに、少子高齢化の進行・労働人口の減少は今後も進むでしょう。
採用難が緩和されるとは考えにくく、むしろ人材獲得競争は激化していく見込みです。
中小企業ほど採用難が顕著に
次のグラフは、厚生労働省の調査に基づく「企業は人手不足を感じているかどうか」というデータです。
グラフで特に注目したいのは2点。
- 大企業(赤色)でさえも、人材不足を感じていること(-23%)。
- 中小企業(緑色)は、さらに顕著に人材不足を感じていること(-39%)。
採用活動を行うと、知名度が高い大手企業に応募が集まりやすい傾向があるのは事実です。その大企業でさえも、以前よりも応募が集まらなくなったと感じています。
中小企業はおのずと人材の獲得に苦労し、人手不足に悩まされ続けやすくなります。採用が難しくなっているからこそ、人事にも戦略が求められています。「うちは採用人数が少ないから戦略は必要ない」といったことはなく、中小企業も大企業同様、もしくはそれ以上に人事戦略が重要だと言えます。
新卒一括採用・年功序列の崩壊
日本では終身雇用・年功序列を長い間取り入れてきました。これらの制度は社員にとって「将来のキャリア・収入が約束されている」という反面、優秀な人材からすると、「入社直後から評価されるのが難しい」という不満を持たれやすい側面もあります。
さまざまな分野で優秀人材・即戦力採用の必要性が高まる中で、その採用可能性を高めるためにも、人事業務や仕組みの見直しに迫られている企業が増えており、今、人事戦略に注目が集まっています。
年功序列のメリット・デメリットについては以下の記事で詳しく解説しているので、是非合わせてごらんください。
人事戦略を立てるメリット
人事戦略を立てるメリットは様々ですが、代表的なメリットをご紹介します。
人事・採用担当者の市場価値が高まる
人事・採用担当者ご自身にとって、一番大きなメリットは「市場価値が高まる」ことです。経営目標や経営課題に紐づけて人事戦略を考えられる人は、「採用だけしかできない人事」よりも、多くの企業から必要とされます。
選択肢の幅が広がる
冒頭の例に挙げた「5年で売上を10倍にする」という経営目標を達成する場合、人事戦略がないとやみくもに「何とか必要な人数を採用しないと」と採用業務に追われることになります。
しかし、人事戦略を考えられるようになると「採用以外」の選択肢もできます。離職率を下げることで人員を維持したり、育成によって生産性を高めたり、配置転換で主要事業を強化したり。人事・採用担当として課題を解消する選択肢が増え、経営層に対して、経営目標達成のための道筋を論理的に説明できるようになります。
求人に応募が集まりやすくなる
優れた人事戦略は企業の「採用力」をも向上させます。採用上の競合求人が無数にある中で、応募を集める方法を考えていくためです。また、従業員の定着率を高めるための待遇・福利厚生・評価制度・働き方の見直しにより、「社員満足度の高い会社」へと変わっていくことも、採用力向上につながります。
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成功する人事戦略の立てる手順
それでは最後に、具体的な「人事戦略の立て方」を解説します。実際に、自社の状況にあてはめながら考えてみてください。
経営戦略・経営目標を理解する
経営と人事をつなげるのが「人事戦略」です。そのため、人事戦略を立てるためには、まず会社が目指すべき姿を、人事・採用担当者も理解する必要があります。
「長期経営計画」「中期経営計画」の他、「KGI」と「KPI」を意識すると良いでしょう。
「KGI(Key Goal Indicator)」は、企業が目指す最終的な目標。「KPI(Key Performance Indicators)」は、KGIを達成するために必要な中間目標です。KPIは複数あり、すべて達成したときに最終目標であるKGIが達成できるようになります。
例えば、KGIが「5年で売上10倍」だとしたら、KPIは「1年目で売上●倍、2年目で売上●倍…」といった各年の弾道の他、「販売単価を●円から●円まで向上する」なども考えられます。
経営戦略と連動した人事目標を立てる
経営戦略を達成するための「人事目標」を策定します。
例えば、KGI「5年で売上10倍」するために、KPI「1年で売上2倍」を経営戦略として目指す場合。
1年後に売上を2倍にするための人員計画を考えます。何名採用する必要があるのか?採用した人を育成するマネジメントポジションは追加で何名必要なのか?こうしたリーダー以上の役職者は、採用するのか?育成するのか?配置転換するのか?
また、1年で辞めていく人もいるはずです。辞める人もいる想定で何名採用するのかを考えなければなりません。それが現実的な採用人数ではないなら、離職率を下げるという選択肢も考える必要があります。離職率を下げるのであれば、待遇や評価も見直しを検討していきます。
このように、「採用・配置・育成・評価・定着」など人事業務の様々な側面から、達成の方法を考えます。考えるポイントは、目標は具体化すること。
「出来るだけたくさん採用する」ではなく、「6月までに●名、9月までに●名採用する必要がある」。「離職率を下げる」ではなく、「1年後までに離職率を10%下げる」といったイメージです。具体的な数字を持つことで、目標に対して進捗が良いのか悪いのかを判断しやすくなり、改善の施策も打ちやすくなります。
人事目標を施策・戦略に落とし込む
具体的な人事目標を立てたら、目標を達成するための「施策」や「戦略」に落とし込みます。
例えば、以下は人事目標を施策・戦略に落とし込んだ一例です。
人事目標 |
6月までに30名、9月までに60名採用する必要がある |
人事施策 |
・今利用している採用媒体だけでは達成できない。複数の採用媒体を利用する。
・採用媒体のプランをアップ。求人の露出量を増やす。
・ダイレクトリクルーティングなどの媒体以外の採用手法も始める。 ・採用ブログの更新頻度を上げ、SNSで拡散する。 |
人事戦略 |
・求人の打ち出しを長年変えていない。同時期に掲載される他社求人の
打ち出しを踏まえて差別化方法を検討する。
・ただ応募を集めるだけでなく入社後に活躍する可能性が高い人材を採用する。
そのために、自社で活躍している人材の傾向値を言語化する。
|
人事戦略の成功率をより高めるために出来ること
経営と人事を紐づけて考える必要があるため、精度の高い人事戦略を考えることは決して簡単ではありません。
人事戦略の中でも「採用戦略」は、重要度が高い反面、特に策定するのが難しいと言われています。社内の事情だけでなく、「待遇の相場観」や「他社の求人打ち出し」なども考慮する必要があるためです。
人事・採用担当者だけで採用戦略を考えるのは難しいため、ぜひエン転職にご相談ください。エン転職は、ただ応募を集めるだけでなく、他社と差別化する方法や、貴社で活躍・定着する可能性が高い方からの応募を集める方法をご提案いたします。
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