年功序列は時代遅れ?今の日本にあった雇用システムを徹底分析
年功序列の評価制度を長く採用してきたけど、今の時代にあっているんだろうか。そう、疑問を抱いている方は、きっと少なくないのではないでしょうか。
成果主義という評価制度もよく耳にするようになった今の日本。年功序列は少しずつ時代遅れになりつつあります。
では、これからの時代、どのような雇用システムが求められているのでしょうか。本記事では、成果主義と比較した年功序列のメリット・デメリット、今後の採用活動の変化などをまとめています。年功序列を見直すべきか検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
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目次[非表示]
- 1.年功序列とは?
- 2.年功序列が日本で定着した背景
- 3.年功序列のメリットとは?
- 3.1.定着率向上に期待できる
- 3.2.育成計画が立てやすい
- 3.3.ノウハウが溜まる
- 4.年功序列のデメリット
- 4.1.若手のモチベーションが上がらない
- 4.2.人件費が膨れ上がる
- 4.3.生産性が低くなる
- 5.年功序列と成果主義の違いとは?
- 6.年功序列が機能しなくなってきた理由
- 6.1.経済の低迷
- 6.2.労働人口の減少
- 6.3.IT技術による事業スピードの加速
- 7.年功序列の崩壊が、採用にどのように影響していくか?
- 8.まとめ
年功序列とは?
年功序列とは、従業員の年齢や勤続年数によって給与やポジションが上がる人事制度のこと。年齢や働く年数を重ねるほど、個人のスキルが上がり、会社としてもノウハウが蓄積されるという考えのもと、日本で定着してきました。一方、個人の成果を評価する人事制度を成果主義といいます。
年功序列が日本で定着した背景
戦後になってから、年功序列の仕組みができあがったと言われています。戦後まもなく高度経済成長期を迎えた日本では、企業が業績を伸ばすために人材の確保が重要な状況でした。また、戦争を経験した日本の労働者は、安定した生活を求めていました。
こうした背景により、企業にとって人材を長く確保してノウハウを溜められる年功序列は、時代にあった人事評価制度だったのです。労働者にとっても安定的に収入が上がっていく働き方があっていました。企業と労働者のニーズがマッチしていた訳です。年功序列は、日本に少しずつ定着し、日本経済の発展を支えていきました。
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年功序列のメリットとは?
年功序列は、急速に経済成長を遂げた日本に定着してきただけに、メリットがあります。従業員が自社で長く働いてくれることを期待でき、その前提で長期的に育成できるだけでなく、会社にノウハウを蓄積することが可能なのです。
定着率向上に期待できる
1社で長く勤めるほど給与やポジションが上がっていくのが、年功序列です。すぐに辞めてしまうと収入面においてデメリットが大きいため、長く働くことを選択する人が多くなります。
また、ずっと同じ職場で働いていると、会社に対して帰属意識が高まるもの。従業員同士の連帯感が強くなり、人間関係の軋轢も生まれにくいともいわれています。
着実な収入アップや会社の居心地の良さにより、従業員の定着率向上につながりやすいのです。
育成計画が立てやすい
年功序列では、年齢や勤続年数によって給与やポジションが上がっていくので、人事評価制度の基準が明確。評価基準を従業員と共有でき、振り返りを行ないやすいのが特徴です。従業員一人ひとりの適性やスキルを把握できることで、課題をきちんと捉え、本人にあった育成計画を立てられます。
また、従業員それぞれの傾向をつかめることは、適材適所の人材配置を行なうことにもつながります。将来的な組織体制を見据えて、誰を幹部候補として育てていくのかも判断しやすいのです。
もちろん、幹部候補を育てていくには、長い時間をかけて進めていくことが前提。従業員が成長に欠かせない経験を積めるよう、転勤やジョブローテーションなどを行なう必要が出てくるでしょう。
ただ、組織体制を変えるには、多くの予算を使います。もし、すぐに会社を辞められてしまったら、投資した分を回収できません。そういった意味でも、従業員の定着率アップにつながる年功序列は、育成計画を立てやすいといえます。
ノウハウが溜まる
従業員は経験を重ねていくにつれて、より専門的な知識・スキルを身につけることが可能です。従業員一人ひとりの成功体験を増やし、組織に共有することで、会社として独自のノウハウも蓄積できます。
また、ベテラン従業員が多く在籍することは、それだけ若手を育成できる人材が豊富ということです。次世代を担うメンバーにノウハウを引き継ぐことができます。
こうしたサイクルを生みやすいのが、年功序列です。ノウハウを蓄積し、継続的な事業発展を実現できます。
年功序列のデメリット
メリットがある反面、デメリットもあるのが、年功序列です。優秀な若手社員の確保が難しい上、ベテラン社員の比率が高まれば人件費の負担が大きくなってしまいます。生産性を高めにくいこともデメリットにあげられるでしょう。
若手のモチベーションが上がらない
年功序列では、いかに大きな成果を上げたとしてもなかなか評価されません。若手はいくらがんばっても、給与を上げづらいというデメリットがあります。
優秀な若手ほど、「先輩より成果を出しているのに評価してもらえない」と不公平に感じてしまう危険性があります。何のために働くのかがわからなくなり、仕事へのモチベーションや会社への帰属意識が下がってしまうでしょう。やりがいを感じられず、退職を選択する可能性もありえます。
また、戦後の日本のように安定した生活を求めている労働者ばかりではありません。さまざまな情報が簡単に入ってくるのが今の時代です。長く働くことを前提としない価値観の若者が増えています。全員が平等に給与が上がる年功序列は、成果が給与に反映される仕組みを求める若者にとっては不公平に感じる人事制度なのです。
人件費が膨れ上がる
年功序列では、年齢や勤続年数に伴って給与が上がっていくのが約束されていることになります。従業員全員が働くほど給与が年々上がっていく仕組みなので、社歴の長いベテラン社員が増えれば、それだけ企業は人件費の負担が大きくなるという訳です。
従業員数が長く変わっていなくても、企業は業績を伸ばしつづけなければ、人件費というコストだけが膨れ上がってしまいます。業績が縮小する状況になってしまったら、やむを得ずリストラを選択する必要も出てくるでしょう。
生産性が低くなる
あくまでも成果より、年齢や勤続年数を評価対象にしているのが年功序列です。そのため、「早く給与を増やしたい」「若いうちから重要なポジションを任されたい」といった希望が叶いにくい環境といえます。
「がんばっても評価されない」という状況では、従業員に前向きな姿勢がなかなか生まれません。むしろ、がんばり次第で評価が大きく変わらないのであれば、「求められていること以上の成果なんて出さなくてもいい」とマイナスな考えを持ってしまう可能性もあります。
「より成果を出すにはどうするべきか」と従業員同士の議論が活発に行なわれることはあまり期待できません。従業員一人ひとりのモチベーションが下がってしまえば、組織全体の生産性も落ちてしまいます。年々増える人件費と生産性のバランスが崩れて業績が悪化し、経営を圧迫する状況になることもあるでしょう。
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年功序列と成果主義の違いとは?
年功序列と成果主義を比較してみましょう。
年功序列は、ベテラン従業員の比率が高まることで人件費が増えてしまいますが、定年まで勤めあげる社員が多いなど、定着率が高い傾向にあります。採用コストを抑えやすいのがメリットです。
年齢や勤続年数ではなく、仕事の成果を評価するのが、成果主義。人件費を適切に配分しやすいメリットがあります。一方、従業員が成果重視についていけなかったり、優秀人材がより条件の良い環境に転職したりすることが起こりやすいのは、デメリット。定着率が低い傾向にあり、採用コストの負担が大きくなりやすいでしょう。
年功序列と成果主義には、それぞれメリット・デメリットがあるのです。
年功序列が機能しなくなってきた理由
年功序列で終身雇用を前提にし、新卒社員を一括で採用して時間をかけて育成していく。こうした、日本に定着してきた雇用システムを見直すべきだと、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長は提言しました。今の時代にあわなくなってきたからです。
現代の日本は、かつての高度成長期と違い、低成長期。少子高齢化で労働人口も減少しています。IT技術で事業サイクルのスピードが加速し、時代にあわせて柔軟に変化していくことがますます求められている状況です。企業が事業活動を行なっていく上で、年功序列がなかなか機能しづらくなってきました。
経済の低迷
日本では、1955年から1973年までを高度成長期と呼びます。この時期は、飛躍的に経済が発展し、多くの企業が右肩上がりの業績を見込める状況でした。ただ日本は、1974年から1990年まで安定成長期となり、1991年からは低成長期に入ることになります。
低成長期のきっかけとなったのが、バブル崩壊。株価や地価は一気に下がりました。高度成長期と違い、経済が発展しない状況。企業の生き残りをかけて競争は激化していきます。多くの企業が事業を拡大する見通しがたたなくなりました。
利益を増やすのが難しくなれば、コストを下げなければなりません。そのため、大きなコストとなる人件費が年々膨れ上がっていく年功序列が、現実的ではなくなっていったのです。従業員を定年まで雇い、年齢や勤続年数によって昇給や昇格させる体制では、経営を維持できない企業が増えていきました。
労働人口の減少
仕事に就いている中核の労働力となる年齢の人口を生産年齢人口といいます。具体的には「15歳から64歳まで」です。この生産年齢人口は、少子高齢化によって減少しています。
総務省の国勢調査によると、生産年齢人口は1995年がピークで8716万人。そこから10年後の2005年で8409万人、さらに10年後の2015年では7629万人となり、減少しつづけます。
その後も少子高齢化の進行は止まりません。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によると、生産年齢人口は2030年に6773万人、2060年には4418万人まで減少すると見込まれています。
生産年齢人口が減少する中で、各企業は労働力を確保するために生産性を上げなければいけない状況になりました。新卒社員一括採用ではなく、年齢に関係なく優秀な人材を採用する動きへと変わっていったのです。
各企業の優秀な人材獲得に向けた動きは活発になります。結果、年齢や社歴がさまざまな従業員で組織を構成することになり、年功序列の評価で機能しなくなっていきました。優秀な人材ほど不公平感を抱き、より条件や環境の良い企業に移ってしまうからです。年齢に関係なく、生産性の高い従業員を評価する制度に変える必要が出てきました。
※出典/2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を含む)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計)
IT技術による事業スピードの加速
IT技術やテクノロジーの発展によって、人が行なってきた業務内容は変化していきました。たとえば、企業への導入が進むRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)もその1つ。ロボットによって単調作業を自動化できるシステムです。人間に比べ、作業スピードの速さや処理の正確さに優れています。
人がわざわざ行なわなくもいい業務が増えてきたことで、長く蓄積してきた知識やノウハウなどは昔ほど価値がなくなってきました。つまり、経験を積み重ねてきたベテラン社員ほど活躍し、成果が出せる状況ではなくなってきたのです。
むしろ、こうした時代の変化に柔軟に対応できる人材をいかに確保できるかが、企業にとっては重要。IT技術やテクノロジーの進化によって事業のサイクルが早くなったことが背景にあります。世の中の動きにあわせた事業の変化を、よりスピーディーに行なう必要性が高まっているからです。
時代にあう優秀な人材を確保するために、各企業は年功序列による評価制度を見直していかなければならなくなっていきました。
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年功序列の崩壊が、採用にどのように影響していくか?
日本式の雇用システムである「メンバーシップ型雇用」から、「ジョブ型雇用」へとシフトする傾向が強くなっていくといわれています。
メンバーシップ型雇用とは、新卒社員を一括で採用する雇用システムです。日本の多くの企業がこの方法で採用活動を行なっています。転勤やジョブローテーションを繰り返すことを前提とした総合職で採用し、長期的に育成していくためです。年功序列で定年まで従業員の雇用を守り、会社に人を合わせていく「会社基準」の雇用といえます。
一方、ジョブ型雇用とは、職務(ジョブ)や勤務地、労働時間が限定された雇用契約のことをいいます。採用で重視されるのは、スキル。専門スキルを持つ人材が辞めてしまった時に、同等レベルのスキルを持つ人材を採用するケースがジョブ型雇用にあたります。仕事に人を合わせていく「仕事基準」の採用といえるでしょう。
成果主義を取り入れる欧米諸国の企業で多くみられるのが、ジョブ型雇用です。年功序列では優秀な人材の確保が難しくなってきた日本では、大手企業を中心にメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へのシフトが進んでいます。
まとめ
「経済の低迷」「労働人口の減少」「IT技術の進化」などにより、企業が事業活動を行なっていくには、時代にあった優秀人材の確保が欠かせません。年功序列の評価制度では時代にそぐわなくなってきました。
とはいえ、年功序列を求める人材も一定数います。評価制度を急に成果主義に変えてしまうと、従業員の不安や不満が大きくなりかねません。徐々に体制を変えていく必要があるでしょう。
成果主義へのシフトやジョブ型雇用を進めていくには、新しい評価制度を別途用意し、新たに採用するポジションに適用していくのも、有効な手段です。
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