業務請負と業務委託の違いとは? 各契約の違いやメリット、注意点を解説
少子高齢化により労働力人口が減少し、人材確保の難易度が上昇している昨今。必要な労働力を確保するため、人材を直接雇用するのではなく、業務請負や業務委託を実施する企業も多くなっています。
しかし、外部業者へ業務を依頼するにあたり、「業務請負や業務委託はそもそも何が違うの?」「注意すべきことはある?」と疑問を抱くケースもあるでしょう。
本記事では業務請負や業務委託について、契約の違いやそれぞれのメリットなどを解説します。また、業務請負の際に注意すべき偽装請負についても、わかりやすく解説します。「自社の業務を外注したい」とお悩みの方は、ぜひ本記事をお役立てください。
目次[非表示]
- 1.業務請負(請負契約)は業務委託の一部
- 1.1.そもそも業務委託とは?
- 1.2.業務請負(請負契約)とは?
- 1.3.委任契約とは?
- 1.4.準委任契約とは?
- 2.業務請負と業務委託のメリット
- 2.1.業務請負(請負契約)のメリット
- 2.2.委任契約・準委任契約のメリット
- 3.業務委託契約書に明記すべき内容
- 4.業務委託をするときは偽装請負に注意
- 4.1.偽装請負とは?
- 4.2.偽装請負をしないための対策
- 5.まとめ
業務請負(請負契約)は業務委託の一部
自社の業務を外注するにあたり、業務請負や業務委託など似たような言葉が散見され、混乱している方も多いでしょう。
結論から言うと、業務請負は業務委託の一部です。業務委託という外注方法のなかに、業務請負が含まれています。業務請負は通常「請負契約」と呼ばれます。
また、業務委託には「委任契約・準委任契約」もあります。ここからは業務委託の基本的な情報や、各契約の違いを解説します。
そもそも業務委託とは?
業務委託とは、企業が「雇用契約を結んでいない個人」または「外部の業者」へ自社の業務を依頼することです。業務委託をした企業は、「契約通りに業務が完遂された/成果物が納品された」などの場合に、業務を完遂した業者に対して報酬を支払います。
業務委託を行なうときは、トラブル防止のため、業務委託契約書を取り交わすのが一般的です。しかし厳密に言うと、法律上に「業務委託契約」という契約方法が存在するわけではありません。
業務委託契約は、民法上の「請負契約・委任契約・準委任契約」の総称として使われている言葉です。以降で各契約の違いを解説します。
業務請負(請負契約)とは?
一般的に業務請負と呼ばれている契約方法は、民法上の「請負契約」のことです。請負契約は「企業が依頼した業務を、請負人が完遂させたら報酬を支払う」という契約です。たとえば、請負契約には以下のような業務内容が該当します。
- Webメディアの記事作成
- 企業ホームページのロゴ作成
- 企業パンフレットのデザイン
請負契約を締結した際に、「請負人が業務を完遂させられなかった」あるいは「成果物・納品物に瑕疵があった」といった問題が生じた場合、委託側には請負人に修正をお願いしたり、契約を解除したりする権利があります。
ただし請負契約は「業務が完遂された」「成果物が納品された」といった場合に、請負人へ報酬を支払う契約であるため、業務が完遂・納品されるまでの過程については、基本的に委託側で指示を出せません。
請負契約の場合、委託側は請負人に対して指揮命令権がないため、業務完遂までの過程に細かく指示を出すと、法律に抵触する恐れがあるので注意しましょう。
委任契約とは?
委任契約とは「業務を遂行すること」に対して報酬を支払う契約のことです。請負契約とは異なり、業務の完遂や成果物の納品を報酬の基準とはしません。
たとえば依頼内容が「チラシをデザインする」という業務である場合、請負契約では請負人がデザインを完成させ、納品されたものに問題が無ければ報酬を支払います。
しかし委任契約では、デザインが完成している/していないにかかわらず、「チラシのデザインを遂行したこと自体」に対して報酬が発生するというイメージです。
また委任契約は、依頼する業務内容が、法律行為に該当する場合に適用される契約です。たとえば以下のような業務内容が、委任契約に該当します。
- 弁護士に裁判の手続きなどを依頼する
- 税理士に確定申告の書類作成などを依頼する
準委任契約とは?
準委任契約も委任契約と同様に、「業務を遂行すること」に対して報酬を支払います。ただし準委任契約は、依頼する業務内容が法律行為に該当しない場合に適用されます。
「業務内容が法律行為に該当する場合は委任契約、該当しない場合は準委任契約である」と覚えておくとよいでしょう。準委任契約に当たる業務内容の例は、以下の通りです。
- 経営コンサルタントに企業分析を依頼する
- 運送業者に遠方へ送りたい荷物を運んでもらう
- 外部業者に自社のレジシステムの保守点検を依頼する
業務請負と業務委託のメリット
続いて業務請負(請負契約)と、委任契約・準委任契約のメリットを解説します。業務を委託する側から見た、各契約の主なメリットは以下の通りです。
業務請負(請負契約)のメリット
委託側から見た請負契約の主なメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 専門性の高い業者へ業務を依頼できる
- クオリティの高い成果物の納品が期待できる
- 業務の完遂や成果物の納品までの工数を管理する手間が省ける
前述したように、請負契約は請負人が「業務を完遂させた・成果物を納品した」といった場合に報酬を支払う契約です。納品された成果物に瑕疵があった場合、委託側は請負人に対して、修正や契約解除を申し出る権利があります。
つまり請負人としては、業務をしっかりと完遂させなければ報酬が貰えない契約ということです。そのため請負契約で仕事を受託している業者は、一般的に「一定以上のクオリティで業務遂行できる業者である」と考えられます。
専門性が高く、業務経験やスキルが豊富で、完成度の高い成果物を仕上げられる可能性が高いでしょう。また請負契約は、基本的に業務完遂までの過程を委託側が細かく指示できないため、工数管理の手間が自然と省ける側面もあります。
委任契約・準委任契約のメリット
委託側から見た委任契約の主なメリットは、法律行為に該当する難しい業務を専門家へ依頼できる点です。自社の人員だけでは難易度が高く大変な業務を、専門家へ依頼することにより、自社の従業員がコア業務へ専念できるようになります。
また、委託側から見た準委任契約のメリットは、請負契約と比べて業務内容の柔軟性が高いという点が挙げられるでしょう。準委任契約は業務の完遂や、成果物の納品を目的とした契約ではなく、「業務を遂行すること自体」を目的とした契約です。
そのため、契約期間中に委託したい業務の内容や作業方法などが変更になった場合も、柔軟に対応してもらえます。中長期的な業務を委託するのにも向いている契約方法といえるでしょう。
業務委託契約書に明記すべき内容
自社の業務を外部業者へ委託するときは、必ず業務委託契約書を締結しましょう。業務委託契約書に明記する主な内容は、以下の通りです。
- 委託する業務内容・業務範囲
- 業務委託の契約期間
- 指揮命令権の所在
- 成果物の権利の帰属
- 損害賠償の範囲
- 契約解除の事由
- 情報の取り扱い
- 成果物の修正回数・修正範囲
- 報酬の金額・支払方法・支払のタイミング
なお、業務委託契約書の内容や、業務委託契約を締結する際の流れなどは、以下の記事で詳しく解説しています。業務委託について、より知識を増やしたい方は、あわせてご覧ください。
▼業務委託とは? 請負契約・委任契約との違いやメリット、注意点などを紹介
業務委託をするときは偽装請負に注意
自社の業務を外部業者へ委託する際は、偽装請負とならないよう注意が必要です。ここからは偽装請負について、わかりやすく解説します。
偽装請負とは?
偽装請負とは「契約上は請負であるものの、受託側の実際の働き方が、労働者派遣と同様になっている状態」を指す言葉です。
たとえば請負契約を締結して業務を委託した際、「請負人に対する指揮命令権がないにもかかわらず、委託側が業務完遂までの過程に細かく指示を出して従わせている」といった状況が偽装請負に該当します。
偽装請負は違法行為であるため、委託側・受託側の双方に悪意がなくとも、罰則の対象となってしまうので注意しましょう。厚生労働省は、偽装請負のよくあるパターンを以下のように説明しています。
<代表型>
請負と言いながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行ったりしています。偽装請負によく見られるパターンです。
<形式だけ責任者型>
現場には形式的に責任者を置いていますが、その責任者は、発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じです。単純な業務に多いパターンです。
<使用者不明型>
業者Aが業者Bに仕事を発注し、Bは別の業者Cに請けた仕事をそのまま出します。Cに雇用されている労働者がAの現場に行って、AやBの指示によって仕事をします。一体誰に雇われているのかよく分からないというパターンです。
<一人請負型>
発注者と受託者の関係を請負契約と偽装した上、更に受託者と労働者の雇用契約も個人事業主という請負契約で偽装し、実態としては、発注者の指示を受けて働いているというパターンです。
引用:厚生労働省 東京労働局「あなたの使用者はだれですか? 偽装請負ってナニ?」
偽装請負をしないための対策
業務委託契約に慣れていない場合、悪意がないまま偽装請負をしてしまう可能性があります。偽装請負を防ぐためには、以下のような対策が必要です。
- 偽装請負に当たるケースを把握する
- 契約書に指揮命令権の所在をしっかりと明記する
- 業務請負や業務委託に関する正しい知識をつける
- 現場関係者に偽装請負を防ぐための研修や講習などを実施する
- 業務現場の担当者に対して、業務の実態を定期的にヒアリングする
まとめ
業務請負や業務委託について、契約の違いやそれぞれのメリット、注意点などを解説しました。業務委託契約とは、民法上の「請負契約・委任契約・準委任契約」の総称です。
各契約にそれぞれ異なるルールやメリットがあるため、どの契約を活用して業務委託するかは、慎重に検討する必要があります。
また、業務委託を募集するためには、契約内容にも注意が必要です。法律に抵触しないよう気を付けなくてはならないほか、求人の書き方も一般的なものとは異なるため難易度が高くなります。
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