内定取り消しは違法?法律上の見解、事例、適法の場合の取り消し手順も紹介

「内定取り消す」のイメージ画像


社会通念上、新卒・中途採用に関わらず、内定取り消しは安易に行なわれるべきものではありません。しかし、この記事をご覧になっている中には「どうしても内定を取り消さないといけない」といった事情がある方もいることでしょう。
 
そこで本記事では、「内定を取り消すことは違法か」「違法になる/違法にならない具体的なケース」「取り消しが認められる場合の対応手順」などをご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.「内定取り消し」とは?
  2. 2.内定を取り消すのは違法?
    1. 2.1.法律上の見解
    2. 2.2.内定取り消しの要件
  3. 3.内定取り消しが違法なケース
    1. 3.1.内定者の性格が印象と異なった場合
    2. 3.2.他の社員と馴染めていない場合
  4. 4.内定取り消しが違法でないケース
    1. 4.1.経歴詐称があった場合
    2. 4.2.犯罪行為が行なわれた場合
    3. 4.3.重大な病気・障害となった場合
    4. 4.4.留年となった場合
    5. 4.5.必要資格を取得していなかった場合
    6. 4.6.経営状況が悪化した場合
  5. 5.内定取り消しの手続き手順
    1. 5.1.取り消し理由の検討
    2. 5.2.ハローワークへの通知
    3. 5.3.取り消し予告・解雇予告手当の支払い
  6. 6.まとめ


「内定取り消し」とは?

そもそも内定を出すということは、「一種の労働契約が成立した」とみなされるものです。そのため使用者の内定の取り消しは、労働契約の解約ということになり、法的には「解雇」に相当するとされます。
 
使用者は内定者に対して労働契約の「解約権」を持っていますが、実際に取り消しが認められることはそう多くありません。なぜなら内定取り消しは内定者に「不利益」を甘受させることになるため、合理的な理由がある場合に限られるためです。
 
内定者は内定をもらった後、就職活動や転職活動を終わらせ、他社に入社する機会を放棄して入社に備えるのが普通です。つまり、使用者が一方的に内定を取り消すことで、内定者は大きな不利益を被ります。そのため、内定取り消しは無制限に認められておらず、後述する条件のもとに限られているのです。


内定を取り消すのは違法?

上記では法律上、内定を取り消すことは「解雇」にあたるとお伝えしました。実際、内定取り消しの法的な見解が気になっている方が多いのではないでしょうか。この章では「内定を取り消すのは違法かどうか」を解説します。


法律上の見解

結論からお伝えすると、法律上の見解としては、内定取り消しはむやみに行なって良いものではありません。ただし、「合理的な理由」がある場合のみ、取り消しが認められるケースもあります。客観的に見て合理的な理由もないのに内定を取り消した場合、「解雇権濫用法理(労働契約法16条)」によって違法・無効とみなされる可能性があります。


内定取り消しの要件

大日本印刷事件判決最高裁大法廷昭和54年7月20日判決を参考にすると、内定取り消しは以下の要件をすべて満たす場合に限り、認められます。


採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。


三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決にて、もう少し詳しく説明されているため、そちらも引用します。

企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至つた場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。



すなわち、内定取り消しの法的な要件は、「内定を出したときには知りようがない、継続雇用することが難しい合理的な理由が、調査結果や試用中の勤務態度などから分かったときのみ、内定を取り消せる」ということになります。
 
ただし、ここでいう「継続雇用することが難しい合理的な理由」にはかなり厳しい制限があります。ここからは、内定取り消しが違法なケース・違法でないケースを見ていきましょう。


内定取り消しが違法なケース

内定の取り消しが違法となる場合とは、どのようなシチュエーションでしょうか。内定後の企業で発生しそうな場面をいくつかご紹介します。


内定者の性格が印象と異なった場合

例えば「内定者の性格が、選考時の印象と違う」となった場合、内定の取り消しは認められない可能性が高いです。選考段階できちんとコミュニケーションを取っていれば性格を把握することはできたかもしれません。したがって「採用内定当時に知ることができない」「知ることが期待できない」とはならないため、この場合の内定取り消しが合法だと認められるのは難しいでしょう。


他の社員と馴染めていない場合

たとえ内定者が他の社員や内定者と馴染めておらずとも、内定の取り消しはなかなか認められないでしょう。実際、ほかの社員と馴染めるかどうかは選考段階で判断しづらいことであり、コミュニケーションの問題で業務が上手くいかないことも十分に想定されます。しかし、内定者自身の問題行動などがない限り、「馴染めなかった」ことは内定者の責任ではありません。そのため、他の社員と馴染めていない内定者の内定取り消しは、違法とされる可能性が高いです。


内定取り消しが違法でないケース

次に、違法でないケースを見ていきましょう。ただし、あくまでこういったケースが違法でないとされる場合が多いという話であり、「下記のケースに当てはまれば全て違法でない」というわけではないため注意してください。


経歴詐称があった場合

証明書類の偽造などで、虚偽の経歴を伝えられていたケースは、内定取り消しの原因と認められる場合があります。
 
選考時に候補者が証明書類を提示して伝えてきた経歴内容は、企業からそのまま信用されることが多いでしょう。そのため、経歴詐称があった場合には、内定の取り消しが違法でないとされる可能性があります。特に「業務上欠かせない経歴」「学歴」などの詐称はその可能性が高いです。反対に、選考・業務との関係性が薄い経歴の詐称については、内定取り消しの対処が難しいかもしれません。内定取り消しの可否は、詐称された経歴の重大性によって決まります。


犯罪行為が行なわれた場合

万が一、内定者が「内定後」に犯罪行為を行なった場合、内定取り消しの原因となることも。内定出しの前の犯罪行為については、事前に伝えられていれば選考段階で考慮できます。しかし「内定後」となると考慮できず、企業のイメージ低下につながる可能性が高いため、内定の取り消しが認められることがあります。


重大な病気・障害となった場合

もし内定者が「内定後」に重大な病気や障害となった際には、内定取り消しもやむを得ないでしょう。そもそも「問題なく業務を遂行できる」という前提で内定が出されるため、その前提が成り立たなくなってしまえば、内定取り消しの原因として認められる可能性があります。なお、「内定後の病気・障害が軽微」「業務に支障がない」といったケースでは、内定取り消しは認められない可能性が高いです。


留年となった場合

新卒採用において、内定者が予定通りに学校を卒業できなかったケースも、内定を取り消す原因となりえます。内定者は入社後に「職務への専念義務」を負うことになりますが、学校に在籍しながらその責務を果たすことは難しいため、内定取り消しが認められるでしょう。しかし、このケースも程度の問題で、例えば「勤務後、夜間に少し通えば卒業できる」「卒業必要単位をほぼ取り切っており、ほとんど通学しなくて良い」といった場合は取り消しできないこともあります。


必要資格を取得していなかった場合

内定の条件に「業務で必要な資格を入社前に取得しておくこと」があり、実際に取得していなかった場合は内定取り消しもやむを得ません。企業としては入社後、資格を活かして働くことを期待して内定を出しているため、その前提に応えられないとなると、内定取り消しが認められる可能性が高いです。


経営状況が悪化した場合

  • 企業の維持・存続のために、本当に人員整理が欠かせないこと
  • 退職者の募集、出向など整理解雇を避けるための努力をしていること
  • 解雇対象者の選び方に妥当性があること
  • 解雇の必要性やその規模、方法、基準などについて、解雇対象者に納得してもらえるよう努力していること

 
内定後、企業の経営状況が悪化し、経営危機に陥った場合、内定取り消しが有効となることがあります。ただし上記「整理解雇の4要件」を満たしているかが考慮され、「業績が悪化したが経営危機に至らない場合」は取り消しできないケースもあります。


内定取り消しの手続き手順

前述の通り、内定取り消しは安易に行なわれるべきものではありません。しかし、これまでに紹介してきたケースなどに該当し、やむを得ず取り消さなければならない場合もあるでしょう。そこで、ここからは内定取り消しの手続き手順についてご紹介します。


取り消し理由の検討

内定取り消しが前章でご紹介した要件に当てはまっているかどうか検討しましょう。安易な内定取り消しは内定者とのトラブルにつながり、相手に不利益を被らせるだけではなく、企業が大きな負担を負ったり、大幅なイメージダウンにつながったりといったリスクも考えられます。顧問弁護士のアドバイスを受けるなど、慎重に検討していきましょう。


ハローワークへの通知

厚生労働省の指針により、新卒採用の場合は公共職業安定所(ハローワーク)への事前通知が必要です。内定を取り消す方向となった場合には、所定の手順で速やかにハローワークに通知を行ないます。なお、新卒採用での内定取り消しは一定の条件を満たすと厚生労働省による公表も行なわれるため、その点も留意しましょう。


取り消し予告・解雇予告手当の支払い

内定取り消しは前述の通り「解雇」に該当します。そのため企業は労働基準法20条により、「30日以上前の解雇予告」または「解雇予告手当の支払い」が義務となっています。内定者の入社まで30日以上ある場合は内定取り消しの予告通知を、30日を切る場合はすぐに予告通知を行ない、足りない日数分の平均賃金を手当として支払う形になります。


まとめ

内定取り消しは違法なのか?違法になる、違法にならないケースは?――この記事では、内定取り消しとその法的な見解についてお伝えしてきました。前述の記載通り、内定取り消しは特定の条件下においてしか認められないため、よっぽど条件に合っていない場合、内定取り消しを行なわないほうが良いでしょう。
 
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