計画年休とは? 有給休暇との違いやメリット・デメリット、活用例も解説
計画年休とは、企業が自社の従業員に対し、計画的に有給休暇を取得させることができる制度です。計画年休を実施するためには、企業と従業員が労使協定を締結する必要があります。
近年、厚生労働省が推進する「働き方改革」によって、有給休暇の取得率を向上させる取り組みに注目が集まっています。そこで本記事では計画年休について、制度の詳細や設定方式、活用例、メリット・デメリットなどを解説します。
「従業員の有給取得率を改善したい」「有給休暇の日数を管理する手間を削減したい」などのお考えをお持ちの方は、ぜひ本記事をご一読ください。
目次[非表示]
- 1.計画年休とは?
- 1.1.計画年休と有給休暇の違い
- 1.2.計画年休の対象となる日数
- 2.計画年休の設定方式
- 3.計画年休の活用例
- 3.1.大型連休を設ける
- 3.2.ブリッジホリデーを設ける
- 3.3.機材等の一斉メンテナンス日を設ける
- 4.計画年休のメリット
- 4.1.有給休暇の取得率が上がる
- 4.2.有給休暇の取得日数を管理する手間が省ける
- 4.3.業務に支障が出ないように調整できる
- 5.計画年休のデメリット
- 5.1.労使協定を結ぶ手間がある
- 5.2.対象外の従業員に配慮する必要がある
- 6.計画年休の導入に向いている企業
- 7.計画年休の導入に向いていない企業
- 8.計画年休を導入する手順
- 8.1.就業規則への記載
- 8.2.計画年休の付与方式を決定
- 8.3.労使協定を締結
- 9.まとめ
計画年休とは?
計画年休とは、企業が自社の従業員に対して、計画的に有給休暇を取得させることができる制度です。計画年休を導入している企業は、従業員の有給休暇の取得日をあらかじめ指定できます。
ただし計画年休を実施するためには、企業と従業員の間で労使協定を締結し、就業規則にも計画年休を導入していると明記する必要があります。
計画年休と有給休暇の違い
前述の通り、計画年休は有給休暇の取得率を向上させるための制度です。つまり計画年休は、「有給休暇の取得方法のひとつ」ということになります。基本的に有給休暇をいつ取得するか、また何日取得するかは、従業員本人に委ねられています。
しかし「職場に有給休暇を取得しにくい雰囲気がある」「繁忙期の人手を確保したいため、閑散期にまとめて有給休暇を取得してほしい」など、何らかの理由で企業が有給休暇の取得を管理・促進したほうがよい場合、計画年休は有効な手段といえるでしょう。
また、有給休暇の取得方法には、時間単位で取得できる「時間単位年休」もあります。時間単位年休について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
▼時間単位の有給(時間単位年休)とは? 基本的な内容やメリットなどを解説
計画年休の対象となる日数
企業が指定できる有給休暇の取得日数には、限度があります。企業は従業員の有給休暇の全日数から、5日分を除いた日数のみ、取得日をあらかじめ指定することが可能です。
たとえば、ある従業員に有給休暇が12日付与されている場合、企業は7日分を計画年休として指定できます。
計画年休の設定方式
計画年休には「一斉付与方式・交代制付与方式・個別付与方式」という3パターンの設定方式があります。ここでは各方式について詳しく解説します。
一斉付与方式
一斉付与方式は、従業員全員に対して、同じ日に計画年休を付与する方式です。全従業員を一斉に休ませても問題がない業種・職種に向いています。
交代制付与方式
交代制付与方式は、プロジェクトチームや部署など複数人のグループごとに、交代で計画年休を付与する方式です。社員の数が多くて一斉に付与するのが難しい場合や、操業・営業を一斉に止められない場合に適しています。
個別付与方式
個別付与方式は、計画年休を個人ごとに付与する方式です。操業・営業を止められない事業内容で、なおかつ複数人のグループごとに休みを取るのも難しい企業に適しています。
ただし、有給休暇の取得日数や取得日を個別で管理する手間がかかるため、有給休暇付与計画表を作るなど工夫する必要があります。
計画年休の活用例
計画年休は、有給休暇の取得率を向上させるための制度ですが、以下のような活用の仕方もできるので、ぜひ参考にしてください。
大型連休を設ける
計画年休を使って、有給休暇を連続して取得することにより、大型連休を設けられます。計画年休で大型連休をつくる活用方法は、年末年始休暇や夏季休暇などの休暇制度をまだ設けていない企業に適しています。
ただし、年末年始休暇や夏季休暇は本来、有給休暇ではなく「特別休暇」として扱うのが一般的です。特別休暇がすでに設けられているにもかかわらず、有給休暇へ置き換えてしまうと、従業員にとっては「不利益な労働条件の変更」に当たります。安易な変更はできないので注意しましょう。
ブリッジホリデーを設ける
ブリッジホリデーとは、日曜日や祝日の間に挟まれた平日を、休日にする制度のことです。計画年休をブリッジホリデーとして活用することにより、従業員が連続で休息できるタイミングを増やせます。
ゴールデンウイークやシルバーウイークなど、祝日が多い期間の平日に計画年休を割り当て、ブリッジホリデーとして使うケースがよくあります。
機材等の一斉メンテナンス日を設ける
計画年休は製造業などで、業務を停止して、機材等を一斉メンテナンスしたい場合にも役立ちます。計画年休を一斉付与方式にして、従業員全員を同じタイミングで休ませれば、機材等の使用を一斉に停止し、メンテナンス日を設けられます。
計画年休のメリット
ここからは計画年休のメリット・デメリットを解説します。まずはメリットを詳しく見ていきましょう。
有給休暇の取得率が上がる
計画年休のもっとも大きなメリットは、従業員の有給休暇の取得率が向上することです。2019年から厚生労働省により、企業に対して「年次有給休暇の年5日間の取得義務」が課されるようになりました。
2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
引用:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
計画年休によって、企業側があらかじめ有給休暇の取得日を指定する場合も、上記の「年5日取得義務」に含まれます。何らかの理由で従業員が休みづらい環境である場合、計画年休を導入して有給休暇の取得日を指定することにより、ルールを遵守しやすくなるでしょう。
有給休暇の取得日数を管理する手間が省ける
「有給休暇をいつ・何日取得するか」といった判断は、基本的に従業員の自由です。しかし従業員個人の判断に任せていると、企業としては「年5日取得義務」のうち何日取得されたのか、有給休暇の日数管理が難しくなるでしょう。
計画年休には、こうした有給休暇の取得日数を管理する手間を省けるメリットがあります。たとえば有給休暇が10日以上付与されているうち、5日分を計画年休として取得日を割り振り、残りの5日分は従業員個人が自由に取得日を決められるようにすれば、日数管理の手間を省きながら「年5日取得義務」を果たすことが可能となります。
業務に支障が出ないように調整できる
繁忙期など業務が忙しいタイミングで、複数の従業員が有給休暇を取得すると、仕事が回らなくなってしまいます。計画年休を導入すれば、制度の範囲内で企業が有給休暇の取得日を決められるため、閑散期など業務に支障が出ない時期を狙って、従業員に有給休暇を取得してもらうことが可能となります。
計画年休のデメリット
続いて、計画年休の主なデメリットを2つ解説します。
労使協定を結ぶ手間がある
計画年休を導入するためには、企業と従業員が労使協定を締結しなくてはなりません。労使協定では主に、以下のような項目を定めます。
- 計画年休の対象者
- 計画年休の付与方法
- 計画年休の変更手続きについて
- 計画年休の対象となる有給休暇の日数
- 有給休暇の付与日数が少ない従業員に対する扱い
また、計画年休がある旨を就業規則に明記し、労働基準監督署へ届け出る手間もかかります。計画年休を実施するための必要な手続きがあることを念頭に置いておきましょう。
対象外の従業員に配慮する必要がある
計画年休の対象外となる従業員にも、配慮する必要があります。たとえば「計画年休の対象者に連続して有給休暇を取得させている間、計画年休の対象外となる従業員の業務負担が極端に増えてしまう」といった状況は望ましくありません。
計画年休によって有給休暇の取得日を指定するときは、制度の対象者と対象外の従業員が、どちらも安心して勤められるように注意しましょう。
計画年休の導入に向いている企業
計画年休の導入に向いている企業の特徴は、以下の通りです。
- 従業員個人の判断で有給休暇を取得するのが難しい企業
- 有給休暇の「年5日取得義務」をクリアするのが難しい企業
- 年末年始休暇や夏季休暇などの「特別休暇」がまだ設けられていない企業
「従業員個人の判断に任せていると、なかなか有給休暇の消化が進まない/年5日取得義務を果たすのが難しい」という企業は、計画年休を導入したほうが、有給休暇の取得率が向上するでしょう。
また、年末年始休暇や夏季休暇などの「特別休暇」がまだ設けられていない企業も、計画年休の導入に適しています。ただし「活用例」の項目で述べたように、特別休暇がすでに設けられている場合、有給休暇への安易な変更はできないので注意しましょう。
計画年休の導入に向いていない企業
計画年休の導入に向いていない企業の特徴は、以下の通りです。
- 有給休暇の取得率がすでに高い企業
- 従業員個人の判断で有給休暇を取りやすい企業
- 年末年始休暇や夏季休暇などの「特別休暇」がきちんと設けられている企業
計画年休は、企業側が従業員の有給休暇の取得日を指定する制度であるため、強制力があります。有給休暇の取得率がすでに高く、従業員個人の判断で休みを取りやすい企業は、計画年休を導入すると従業員から不満が出る可能性があるでしょう。
計画年休を導入する手順
最後に、計画年休を導入する手順について解説します。計画年休を導入するときは、以下の3ステップで手続きを進めましょう。
就業規則への記載
計画年休は、就業規則へ明記する必要があります。就業規則における年次有給休暇の条文に、計画年休について記載しましょう。
以下の文章は、就業規則の規定例です。条文を考案する際の参考にしてください。
年次有給休暇の計画的付与に関する就業規則の規定(例)
(赤字部分が該当)
(年次有給休暇)
1.採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
(表省略。本ページの冒頭に記載した「通常の労働者の付与日数」の表と同じになります。)
2.前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
(表省略。本ページの冒頭に記載した「週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数」の表と同じになります。)
3.第1項又は第2項の年次有給休暇は、労働者があらかじめ請求する時季に取得させる。ただし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。
4.前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。
引用:働き方・休み方ポータルサイト「計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き」
計画年休の付与方式を決定
先述したように、計画年休の付与方式には「一斉付与方式・交代制付与方式・個別付与方式」の3パターンがあります。どの方式が自社に適しているかは、事業内容や業務内容によって異なります。自社に合う方式を採用しましょう。
労使協定を締結
続いて、労使協定を締結します。労使協定では、主に以下のような内容を定めます。
▼計画年休の対象者
計画年休を付与する時季に、「育児休業・産前産後休業により休業することが判明している人」や「定年退職などにより退職が決まっている人」については、計画年休の対象外とします。
▼計画年休の付与方式
「一斉付与方式・交代制付与方式・個別付与方式」のなかから、自社に適した付与方式を選び、付与する日にちも定めましょう。
▼計画年休の変更手続きについて
計画年休を付与する日が、のちに変更される可能性がある場合は、変更手続きについても定めておきます。
▼計画年休の対象となる有給休暇の日数
年次有給休暇のうち5日分は、従業員が自由に取得できる日数を保障しなくてはなりません。5日分を超える日数について、計画年休として付与することを定めます。
▼有給休暇の付与日数が少ない従業員に対する扱い
新しく採用された従業員や、パート・アルバイトなどの非正規雇用労働者などで、5日を超える年次有給休暇が無い人には、以下のいずれかの措置をとります。
- 一斉の休業日を有給の特別休暇とする
- 一斉の休業日に対して、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う
まとめ
計画年休について、制度の詳細や設定方式、活用例、メリット・デメリット、導入手順などを解説しました。計画年休を導入すると、従業員の有給休暇の取得日を、企業があらかじめ指定できるようになります。
計画年休には「有給休暇の取得率向上につながる」「有給休暇の日数を管理する手間が軽減される」などのメリットがあります。しかし、すでに有給休暇の取得率が高い企業は、計画年休を取り入れることによって、従業員から不満が出る可能性もあります。
自社に計画年休を導入すべきかどうかは、有給休暇の取得率や、自社の業務内容・事業形態などによって慎重に決めるとよいでしょう。
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