時間単位の有給(時間単位年休)とは? 基本的な内容やメリットなどを解説


「有給 時間単位」のイメージ画像


近年、厚生労働省が推進する「働き方改革」の一環として、有給休暇の取得率を向上させる取り組みが推奨されています。
 
有給休暇は、1日単位または半日単位で取得するのが一般的です。しかし企業によっては、従業員が有給休暇をより取得しやすくするため、時間単位で有給を申請できる「時間単位年休」を導入するケースも増えています。
 
ただし、時間単位年休を導入するためには、一定の条件を満たさなくてはなりません。本記事では、時間単位年休の基本的な内容や、導入するための条件、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
 
時間単位年休を導入するまでの大まかな流れも解説しますので、「制度の導入を検討している」「企業側にはどのようなメリットがあるの?」とお困りの方は、ぜひ参考にしてください。


目次[非表示]

  1. 1.時間単位の有給(時間単位年休)とは?
    1. 1.1.導入するためには労使協定の締結が必要
    2. 1.2.時間単位年休で支払う賃金の算出方法
    3. 1.3.1年間の取得上限は5日以内
    4. 1.4.有給休暇の取得義務の日数には含まれない
    5. 1.5.時間単位年休と計画年休の関係性
  2. 2.時間単位の有給(時間単位年休)のメリット
  3. 3.時間単位の有給(時間単位年休)のデメリット
  4. 4.時間単位の有給(時間単位年休)を導入する流れ
    1. 4.1.導入にあたり必要な条件を設定する
    2. 4.2.就業規則に時間単位年休を記載する
    3. 4.3.労使協定を締結する
  5. 5.まとめ


時間単位の有給(時間単位年休)とは?

時間単位で取得できる有給休暇を「時間単位年休」といいます。時間単位年休を導入している企業では、通常ならば1日単位または半日単位で取得する有給休暇を「1時間・2時間」といった時間単位で取得することが可能です。
 
時間単位年休は、2010年の労働基準法改正で、導入が認められるようになった制度です。有給休暇が取得しにくい状況を改善し、従業員のワークライフバランスを整えるため、多くの企業で活用されています。


導入するためには労使協定の締結が必要

時間単位年休を自社に導入するためには、労使協定の締結が必要です。厚生労働省では、時間単位の有給休暇を従業員へ付与するにあたり、以下の取り決めが必要としています。

実際に時間単位年休を導入する場合には、就業規則の定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定(労使協定)を締結する必要があります。


なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。
労使協定で定める項目は以下の通りです。
 
①  時間単位年休の対象者の範囲
対象となる労働者の範囲を定めます。仮に、一部の者を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
 
②  時間単位年休の日数
1年5日以内の範囲で定めます。
 
③  時間単位年休の1日分の時間数
1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。
1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。
(例)所定労働時間が1日7時間 30 分の場合は8時間となります。
 
④  1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数
2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。

引用:厚生労働省「事業主の皆様へ『仕事休もっ化計画』」


時間単位年休で支払う賃金の算出方法

時間単位年休は、1時間単位で取得できる有給休暇のことです。従業員が時間単位年休を取得した場合に、企業が支払う賃金は、以下の要素と計算式で求められます。

① 所定労働時間、労働した場合に支払う通常の賃金
② 平均賃金
③ 標準報酬日額
 
時間単位年休の1時間分の賃金=(①~③のいずれか)÷(その日の所定労働時間数)


①~③のどれを賃金計算のベースとするかは企業の任意です。ただし時間単位年休の賃金額の計算方法は、就業規則に明記する必要があります。


1年間の取得上限は5日以内

時間帯年休は、法律で「1年間の取得上限は5日以内」と定められています。5日を超えた分は、時間単位年休としてではなく、通常の有給休暇として取得する必要があります。


有給休暇の取得義務の日数には含まれない

2019年より、厚生労働省が推進する「働き方改革」の一環として、有給休暇の年5日以上の取得が義務化されました。しかし時間単位年休は、有給休暇の取得義務化の日数には含まれていないため注意しましょう。
 
時間単位年休を導入する場合、通常の有給休暇と、時間単位の有給休暇の2種類をそれぞれ管理しなくてはなりません。有給休暇の取得率の管理が複雑になるため、ITシステムを活用するなどして、間違いが生じないよう気を付けましょう。


時間単位年休と計画年休の関係性

計画年休とは、労使協定の締結により、企業が従業員の有給休暇の取得日をあらかじめ定められる制度のことです。通常の有給休暇は、企業が計画年休によって取得日を決定することが認められています。
 
しかし時間単位年休は、あくまでも「労働者が申請した場合に取得できる有給休暇」という位置づけであるため、計画年休に組み込むことは不可とされています。


時間単位の有給(時間単位年休)のメリット

続いて、時間単位年休を導入する企業側のメリット・デメリットを解説します。まずは企業側のメリットを詳しく見ていきましょう。
 
時間単位年休を導入する企業側の主なメリットは、以下の通りです。

  • 有給休暇の取得率向上につながる
  • 企業のイメージが向上する
  • 従業員のワークライフバランスを整えられる

 
時間単位年休を導入すると、従業員が1時間・2時間といった時間単位で、気軽に有給休暇を取得できるようになります。
 
日本社会には、従業員が有給休暇を取得しにくく、ワークライフバランスを整えるのが難しい企業が、未だに一定数あります。そのため「有給休暇の取得率が高い=従業員がワークライフバランスを整えやすく、働きやすい労働環境を整えている良い企業」というポジティブなイメージがつきやすくなるでしょう。


時間単位の有給(時間単位年休)のデメリット

時間単位年休を導入する企業側の主なデメリットは、以下の通りです。

  • 有給休暇の管理が複雑化する
  • 時季変更権が認められにくい
  • 通常の有給休暇の取得も促進する必要がある

 
前述したように、時間単位年休は法律で定められている有給休暇の取得義務の日数(年5日以上)には含まれません。そのため時間単位年休を導入する場合は、通常の有給休暇と、時間単位の有給休暇の2種類をそれぞれ管理する必要があります。
 
また、時季変更権が認められにくい点も、時間単位年休のデメリットといえます。時季変更権とは、企業側が従業員の有給休暇の取得日を、一定の条件下で変更できる権利のことです。
 
時季変更権は、労働基準法により「事業の正常な運営を妨げる場合にのみ」行使できると認められています。たとえば「繁忙期のため人員を減らすのが難しい場合」や「同じ日に多くの従業員が有給休暇の取得申請をして業務に支障が出る場合」などに限り、時季変更権が認められます。
 
しかし通常の有給休暇とは異なり、時間単位年休は1時間単位で取得する有給休暇であるため、事業へ与える影響が小さいと判断され、時季変更権が認められにくい傾向があります。


時間単位の有給(時間単位年休)を導入する流れ

ここからは、時間単位年休を導入する際の大まかな流れを解説します。制度を導入したいときは、以下の流れに沿って準備を進めるとよいでしょう。


導入にあたり必要な条件を設定する

まずは、時間単位年休を導入するにあたり、「取得できる対象者の範囲・取得可能な日数や時間数・取得可能な単位」などの条件を定めましょう。厚生労働省では、時間単位年休の導入において定めるべき条件を以下のように記述しています。

① 時間単位年休の対象者の範囲
対象となる労働者の範囲を定めます。仮に、一部の者を対象外とする場合には、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
 
② 時間単位年休の日数
1年5日以内の範囲で定めます。
 
③ 時間単位年休の1日分の時間数
1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。
1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。
(例)所定労働時間が1日7時間 30 分の場合は8時間となります。
 
④ 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数
2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。

引用:厚生労働省「事業主の皆様へ『仕事休もっ化計画』」


就業規則に時間単位年休を記載する

必要な条件を決定したら、自社の就業規則に時間単位年休について記載します。就業規則とは、従業員の待遇や労働条件などについて、社内の規則・ルールをまとめたものです。就業規則に明確な記載がないと、法律に抵触する可能性があるため注意しましょう。
 
就業規則には、前項で定めた時間単位年休の取得条件をもれなく記載します。そのほか「時間単位年休を取得した際の賃金の計算方法」なども明記しておきましょう。


労使協定を締結する

時間単位年休を導入するためには、労使協定を締結する必要があります。「労働者の過半数で組織する労働組合」または「労働者の過半数を代表する者」との間で、書面によって労使協定を締結しましょう。
 
なお厚生労働省によると、労使協定の締結は必須ですが、労働基準監督署への届出は不要とされています。ただし、時間単位年休を導入することによって、従業員の就業規則が変更となるため、社内報などを使って全従業員へ制度を周知徹底しましょう。


まとめ

時間単位年休の基本的な内容や、導入するための条件、メリット・デメリット、導入までの大まかな流れなどを解説しました。時間単位年休とは、労働者が「1時間・2時間」などの時間単位で取得できる有給休暇のことです。
 
時間単位年休には、以下のようなメリットがあります。

  • 有給休暇の取得率向上につながる
  • 企業のイメージが向上する
  • 従業員のワークライフバランスを整えられる

 
時間単位年休を導入することで「従業員が有給休暇を取得しやすく、働き続けやすい良い企業」というイメージがつき、企業としてのブランディングにも役立つでしょう。時間単位年休は、企業の魅力につながる取り組みといえます。


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