職務給制度とは? 職能給・基本給との違いやメリット、移行手順も解説


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職務給制度とは、社員の勤続年数や役職に関係なく、業務内容や成果に応じて賃金を決定する給与制度のことです。
 
職務給はいわゆる成果主義的な給与制度なので、勤続年数の短い若手社員と、勤続年数の長いベテラン社員でも、業務内容や成果が同程度であれば賃金も同じとなります。

欧米では広く普及している給与制度ですが、近年は日本でも導入する企業が増えてきています。本記事では職務給制度について、以下のような内容を解説します。

  • 職能給・基本給との違い
  • メリット・デメリット
  • 職務給制度への移行手順
  • 移行するときのポイント

 
「職務給制度って何?」「職務給への移行を検討している」という方は、ぜひ本記事を参考にしてください。


目次[非表示]

  1. 1.職務給制度とは?
    1. 1.1.職務給と基本給の違い
    2. 1.2.職務給と職能給の違い
    3. 1.3.職務給制度が注目されている理由
  2. 2.職務給制度の評価基準
  3. 3.職務給制度のメリット
  4. 4.職務給制度のデメリット
  5. 5.職務給制度に移行するための手順
    1. 5.1.各職務の給与水準を調べる
    2. 5.2.自社の給与制度を見直す
    3. 5.3.新しい給与制度を社員に周知する
    4. 5.4.賃金規定を変更する
  6. 6.職務給制度に移行するときのポイント
    1. 6.1.新入社員も職務に見合った給与とする
    2. 6.2.業務内容によっては減給となる可能性がある
    3. 6.3.一般的に職務給は基本給に含める
  7. 7.まとめ


職務給制度とは?

職務給制度とは、社員の勤続年数や役職に関係なく、業務内容や成果に応じて賃金を決定する給与制度のこと。いわゆる成果主義的な給与制度です。
 
職務給制度では勤続年数の短い若手社員と、勤続年数の長いベテラン社員でも、業務内容や成果が同じであれば賃金も同じとなります。もともとは欧米を中心に普及していた給与制度ですが、近年は日本国内でも導入する企業が増えています。


職務給と基本給の違い

職務給は社員の業務内容や、成果をもとに支給される賃金のことです。勤続年数にかかわらず、業務内容によって給与水準が決定され、そこから成果の有無に応じて賃金が変動します。職務給は成果次第で減給・増額となる給与制度なので、成果主義といえます。
 
対して基本給は、所定の労働時間をきちんと満たすことによって支給される賃金を指します。一般的に、基本給は社員の勤続年数によって上昇するので、年功序列制度に適した給与形態といえます。


職務給と職能給の違い

職務給と混同されやすい言葉に「職能給」があります。職能給とは、職務遂行能力を基準として賃金を決定する給与制度のことです。
 
職能給の基準となる職務遂行能力は、社員の勤続年数・経歴・スキルなどによって評価されます。つまり職能給は、年功序列制度と相性が良い給与形態ということです。
 
職能給は年功序列制度や、終身雇用制度と相性が良いため、日本企業で長らく主流となっていました。しかし職能給には、「社員の高齢化が進むと人件費が高額になる」「優秀な若手社員のモチベーションが下がりやすい」などの課題点もあります。
 
こうした課題点を解決するため、自社の社風や経営方針、社員構成などに応じて、職能給から職務給へ移行する企業も増えています。


職務給制度が注目されている理由

職務給制度は、もともと欧米を中心に普及していた給与制度でした。しかし次第に日本国内でも注目されるようになり、実際に職務給制度を導入する企業も増えてきています。
 
職務給制度が日本国内で注目されるようになった理由のひとつには、2020年4月に法改正によって導入された「同一労働・同一賃金」が挙げられるでしょう。
 
同一労働・同一賃金とは、「雇用形態にかかわらず、同じ仕事をしている人には同じ賃金を支払いましょう」というルールのことです。このルールは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者に、同じ企業内で不合理な待遇差が生じるのを防ぐために導入されました。
 
職務給制度は社員の業務内容によって賃金が決まる給与制度なので、同一労働・同一賃金のルールと相性が良く、多くの企業から注目される流れとなったのです。


職務給制度の評価基準

職務給制度は主に以下のような評価基準によって、給与が決定されます。

  • 職種
  • 業務内容・業務範囲
  • 業務内容の難易度
  • 業務の専門性の高さ
  • 責任の範囲や大きさ

 
職務給制度では、まず職種によってベースとなる給与水準が決定されます。定められた水準に対し、業務内容の難易度などに応じて、給与がさらに上乗せされていくイメージです。

難易度が高く、責任の重い業務ほど、上乗せされる賃金も高くなります。


職務給制度のメリット

職務給制度の主なメリットは、次の3つです。

  • 人事評価の公平感を保ちやすい
  • 採用活動で求職者へのアピールポイントとなる
  • 優秀な若手社員が実力や成果に応じてきちんと評価される

 
職務給制度は、社員の業務内容や成果によって給与が決まります。そのため「同じような業務内容なのに年長者のほうが高給となりやすい」という状態よりも、評価の公平感を保ちやすくなります。
 
高い成果を上げている優秀な若手社員が、実力に見合った給与をきちんと受け取れるため、モチベーションを保ちやすい点もメリットです。
 
また、仕事の成果が給与に反映される点は、企業の採用活動において、求職者へのアピールポイントとなります。仕事への意欲が高く、優秀な人材を採用できる可能性が高くなるでしょう。


職務給制度のデメリット

職務給制度の主なデメリットは、以下の3つです。

  • 成果が上がらないと給与も増えない
  • ジョブローテーションとの相性が悪い
  • 人事評価に手間がかかるので企業側の負担が大きい

 
職務給制度は、高い成果を出す社員の給与が増えやすい一方、「成果が出ない社員」や「同じ業務内容を続けている社員」の給与はなかなか上がりません。そのため一部の優秀な社員以外は、仕事へのモチベーションや企業への愛着が下がりやすい傾向があります。
 
また、業務内容に応じて賃金が決まる仕組み上、ジョブローテーションとは相性が悪い給与制度といえます。加えて、職務給は評価基準の設定や運用が、年功序列制度に比べると難しいので、企業側の負担が大きくなる点にも注意が必要です。


職務給制度に移行するための手順

ここからは職務給制度に移行するための具体的な手順を、4ステップに分けて解説します。


各職務の給与水準を調べる

給与制度を変更するときは、まず各職務の一般的な給与水準および、同業他社の給与水準を調査しましょう。

給与水準を調べるときは、厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」を確認するのがおすすめです。「賃金構造基本統計調査」では学歴別・産業別・企業規模別・雇用形態別などに分けた賃金の水準を確認できます。

また、厚生労働省が発表している資料以外にも、民間の研究機関などが公表している給与水準の資料もあります。調査の手間を省きたい場合は、人事のコンサルティングサービスに相談するのもよいでしょう。


自社の給与制度を見直す

続いて、調査した給与水準を参考にしながら、自社の給与制度を見直します。給与制度を見直すときは、以下の点を意識することが重要です。

  1. 制度見直しの目的を明確化する
  2. 現状の給与制度の課題点を洗い出す
  3. 課題点を解決できる給与制度を設計する
  4. 設計した給与制度をシミュレーションする

 
新しく設計した給与制度は、いきなり実行するのではなく、事前にシミュレーションしましょう。既存の社員を新しい給与制度に当てはめ、適切な結果となるまでシミュレーションを繰り返し、丁寧に見直しすることが大切です。


新しい給与制度を社員に周知する

シミュレーションに問題がなくなったら、新しい給与制度の運用開始に向けて、社員へ情報共有しましょう。
 
社員に対して、給与制度を職務給制度へ変える旨を説明し、十分な理解を得てから運用開始しないと、不安感や不信感をもたれる可能性があります。下記の4点は必ず説明し、社員から理解を得られるようにしましょう。

  • 職務給制度へ移行する目的と理由
  • 職務給制度における評価方法
  • 職務給制度の運用方法
  • 従来の給与制度からの変更点


賃金規定を変更する

従業員への周知まで完了したら、賃金規定を変更します。賃金規定を変更するときは、賃金規定変更届および、就業規則変更届を作成する必要があります。従業員や経営層から合意を得られたら、各書類を作成し、労働基準監督署に提出しましょう。


職務給制度に移行するときのポイント

続いて、職務給制度に移行するときのポイントを3つ解説します。


新入社員も職務に見合った給与とする

職務給制度は業務内容や成果により給与が変動する制度です。そのため入社歴の浅い新入社員だからといって、給与を低くするのは誤りとなります。
 
たとえ新入社員であっても、担当する業務の難易度や専門性が高いのであれば、見合った給与を支給するのが妥当です。
 
ただし「入社後、研修期間のみ簡単な業務を担当する」など、一時的に給与水準が低くなりすぎるケースがあります。そういった時は「期間限定で職能給の給与水準を当てはめる」などの調整を行なってもよいでしょう。


業務内容によっては減給となる可能性がある

職務給制度は以下の例のように、業務内容や成果状況によって減給となる可能性があります。

  • 業務での成果がなかなか上がらない
  • 業務内容が変わって責任が軽くなった
  • 業務内容が難易度の低いものへ変更になった

 
たとえば、職務給制度を導入したあとに人事異動を実施する場合、社員の了承なく業務内容を変更して減給になってしまうと、社員が企業へ不満を感じる可能性があります。
 
給与制度を自社の賃金規定にしっかり記載したうえで、異動前に社員にきちんと了承を得ることも徹底し、減給によるトラブルを防げるようにしましょう。


一般的に職務給は基本給に含める

職務給は、基本給のなかに含めて支給されるケースが多いものです。職務給を基本給のなかに含める場合は、残業代や退職金、賞与、欠勤控除などの対象となります。
 
ただし企業によっては、職務給を手当として支給する場合もあります。手当として支給するときも、残業代の計算をするときには、職務給を含める必要があるので気を付けましょう。


まとめ

職務給について基本給・職能給との違いや、メリット・デメリット、移行手順などを解説しました。職務給制度とは、社員の業務内容や成果によって賃金を決定する給与制度です。
 
職務給制度には「人事評価の公平感を保ちやすい」「優秀な若手社員が成果に応じてきちんと評価される」などのメリットがあります。
 
ただし職務給制度への移行は、慎重に行ないましょう。

  • 従来の給与制度の課題点を洗い出す
  • 職務給制度へ移行する目的を明確にする
  • 給与制度のシミュレーションを行なう
  • 社員にきちんと情報共有して十分な理解を得る

 
上記のような取り組みを行ない、社員とのトラブルなく、給与制度を移行できるようにしましょう。


ちなみに企業の採用活動において、職務給と職能給のどちらかが、一方的に不利となってしまうことはありません。職務給と職能給には、それぞれ異なるメリットがあるからです。
 
採用活動において肝心なのは、自社の給与制度を魅力的だと感じる人材に、求人で正しくアピールすることです。「自社の給与制度に適した人材を惹きつけたい」とお考えの場合は、『エン転職』をぜひご活用ください。
 
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