求人募集・採用で年齢制限はNG!例外ケース・制限をしないで採用するコツ
社会の少子高齢化が進み、採用市場は若手人材の確保が難しくなっています。「求めている年齢層からの応募がなかなか来ない」とお悩みの人事・採用担当者は多いでしょう。
採用において、年齢制限をすることは原則禁止されています。
本記事では、採用時に年齢制限が原則禁じられている理由とともに、「年齢制限が例外として認められるケース」「年齢制限を設けずに求める人材を採用するコツ」も解説します。求人の書き方や打ち出し方にお悩みの方は、ぜひ本記事をチェックしてください。
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目次[非表示]
- 1.求人募集・採用での年齢制限
- 1.1.求人募集・採用で年齢制限が禁止である理由
- 1.2.年齢制限を設けないことのメリット
- 2.年齢制限が例外として認められるケース
- 2.1.例外事由1号:定年年齢を上限として採用する場合
- 2.2.例外事由2号:法律により年齢制限が設けられている場合
- 2.3.例外事由3号イ:長期勤続によるキャリア形成のため若手人材を採用する場合
- 2.4.例外事由3号ロ:技能継承のため特定の職種・年齢層を採用する場合
- 2.5.例外事由3号ハ:芸術・芸能分野で特定の年齢層を採用する場合
- 2.6.例外事由3号ニ:特定の年齢層の雇用を促進する施策の対象者を採用する場合
- 3.年齢制限を設けずに求める人材を採用するコツ
- 3.1.事業内容や業務内容を詳しく、わかりやすく記載する
- 3.2.必要なスキルや業務経験を詳しく、わかりやすく記載する
- 3.3.どんな人柄・考え方の人に向いているか記載する
- 3.4.求職者の背中を押す内容を盛りこむ
- 3.5.試用期間を設けてミスマッチのリスクを抑制する
- 4.まとめ
求人募集・採用での年齢制限
2007年10月1日に雇用対策法が改正され、採用時に年齢制限を設けることが原則禁じられました。それまでは企業の努力義務でしたが、法改正により「事業主は年齢に関係なく1人ひとりの能力や適性を判断して採用し、働く機会を均等に与えなくてはならない」と明確に定められたのです。
求人募集・採用で年齢制限が禁止である理由
採用における年齢制限が原則禁じられた背景には、少子高齢化があります。年間出生率の低下にともなう労働人口の減少が懸念されているなか、日本が経済成長するためには、「個人が年齢に関係なく活躍の場を得られることが重要だ」と厚生労働省によって判断されました。
年齢制限の原則禁止により、高齢者や中高年フリーターなどのいわゆる「採用弱者」をつくらない社会を築き上げようという意図があります。
参考:厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」事業主の皆様へ
年齢制限を設けないことのメリット
年齢制限を設けないことで、採用を行う企業側にとってのメリットになることがあります。
例えば、応募数の増加に期待できます。年齢制限を設けないことで求めるターゲットの幅が広がるため、応募数の増加につながります。採用難易度の高い現在の市況下で採用成功するためには、応募をより多く獲得することも重要なことですので、年齢制限を設けずに間口を広げることは、採用成功に近づくための手段の一つになり得ます。
年齢制限が例外として認められるケース
採用時の年齢制限は「原則禁止」とされていますが、例外として認められるケースがあります。例外となるケースを下記で詳しく解説します。
例外事由1号:定年年齢を上限として採用する場合
「定年の年齢を上限として、上限年齢未満の人材を対象に採用する場合」なおかつ「期間の定めのない労働契約で採用する場合」は、年齢制限が認められています。たとえば定年60歳の企業が、期間の定めのない労働契約で、60歳未満の求職者を対象に募集・採用する場合は年齢制限可となります。
(応募資格に記載してOKなパターン)
■「正社員雇用」の募集
└60歳未満の方(定年が60歳のため)
ただし、定年年齢を上限として募集・採用する場合でも、以下のケースはNGです。
NGパターン |
NGパターンの例 |
労働契約の期間が限定的である |
契約期間3年の労働契約で募集(定年60歳) |
応募の上限年齢と定年年齢が異なる |
60歳未満の人を募集(定年65歳) |
応募の下限年齢がある |
50歳以上60歳未満の人を募集(定年60歳) |
業務の習得に一定期間が必要という理由で応募の上限年齢を下げる |
○○の習得に3年間必要なので、57歳の人を募集(定年60歳) |
例外事由2号:法律により年齢制限が設けられている場合
労働基準法やその他の法律によって、年齢制限が設けられている業務は、採用時も年齢制限が認められています。
(応募資格に記載してOKなパターン)
■「警備員」の募集
└警備業法の規定により18歳以上の方/深夜勤務があるため18歳以上の方
法令 |
対象となる年齢 |
労働基準法第62条:危険有害業務 |
18歳以上の人が就業可能 |
警備業法第14条:警備業務 |
18歳以上の人が就業可能 |
例外事由3号イ:長期勤続によるキャリア形成のため若手人材を採用する場合
長期勤続によってキャリア形成を図るため、期間の定めのない労働契約の対象として若年者等を募集・採用する場合にも、年齢制限が認められています。
この場合の若年者等とは、基本的に「35歳未満の人」です。また、企業が定年を定めている場合、勤続期間が極端に短くなる上限年齢を設定することはできないため、上限年齢はおおむね45歳未満が目安となります。
例外事由3号イは、「新卒で社員を採用し、長期雇用するなかでキャリア形成を図る」という日本の雇用慣行があるなかで、雇用情勢の悪化により正社員での就職が厳しくなり、望んだキャリア形成が難しくなった人に配慮した事由です。
そのため「対象者の職業経験を不問とする」「新卒者以外の者については、新卒者と同等の処遇とする」などの制限が設けられています。
(応募資格に記載してOKなパターン)
<未経験者歓迎>
■30歳までの方
└若年層の長期キャリア形成を図るため、年齢を制限した募集を行なっています。
※若年層の長期キャリア形成を目的として年齢制限を行なう場合、職業経験を不問とした募集となるため、「経験者歓迎・経験者優遇」など「経験者を求める文言」は求人に記載できません。
例外事由3号イで認められるケースと、認められないケースの例を以下の表にまとめました。例外事由3号イの趣旨は「企業で若年者を長期雇用し、人材育成すること」なので、特定の業務経験や、経験がないと取得できない資格免許を応募条件に定めることは禁止されています。
認められるケース |
認められないケース |
35歳未満の人を募集(高卒以上・職務経験不問) |
35歳未満の人を募集(契約期間3年間。更新あり) |
35歳未満の人を募集(要普通自動車運転免許) |
35歳未満の人を募集(営業経験3年以上) |
令和●年3月大学卒業見込みの人を募集 |
18歳以上35歳未満の人を募集 |
例外事由3号ロ:技能継承のため特定の職種・年齢層を採用する場合
「技術・ノウハウ継承の観点から、特定の職種において労働者が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、なおかつ期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」に年齢制限を設けて採用することも、例外的に認められています。
特定の職種とは、厚生労働省が定める「職業分類の小分類もしくは細分類」または総務省が定める「職業分類の小分類」で確認でき、電気通信技術者やホームヘルパーなどが該当します。
特定の年齢層とは「30~49歳のうち、特定の5~10歳幅の年齢層」です。また、「相当程度少ない場合」とは、同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して、労働者数が1/2以下である場合を指します。以下の図のようなイメージです。
出典:厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」事業主の皆様へ
たとえば「電気通信技術者として30~39歳の人を募集」する場合は、社内の電気通信技術者の年齢構成が以下のような状況であれば、例外的に採用時の年齢制限が認められます。
年齢 |
人数 |
20~29歳 |
15人 |
30~39歳 |
3人 |
40~49歳 |
10人 |
例外事由3号ハ:芸術・芸能分野で特定の年齢層を採用する場合
俳優など芸術・芸能分野で、表現の真実性を求めるために特定の年齢層を採用する場合も、年齢制限ができます。「演劇で子どもの役があるため、●歳以下の子どもを募集する」などのケースが該当します。
例外事由3号ハで認められるのは、あくまでも表現の真実性を求める必要がある場合のみです。そのため、「イベントコンパニオンとして25歳以下の人を募集する」など、特定の年齢層を対象とした商品・サービスの提供が目的の場合や、芸術・芸能分野に該当しない場合は、年齢制限が認められません。
例外事由3号ニ:特定の年齢層の雇用を促進する施策の対象者を採用する場合
「60歳以上の高齢者、就職氷河期世代の不安定就労者・無業者または特定の年齢層の雇用を促進する政策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる人に限定して募集・採用する場合」にも年齢制限が認められています。例外事由3号ニにより、年齢制限が認められるケースは以下のとおりです。
- 60歳以上の人を募集
- 就職氷河期世代(昭和43年4月2日~昭和63年4月1日生まれの人)を募集
- (人材開発支援助成金の対象者として)15歳以上45歳未満の人を募集
年齢制限を設けずに求める人材を採用するコツ
ここからは、年齢制限を設けずに求める人材を採用しやすくするコツを5つ解説します。年齢制限を設けずに採用活動をすることは、企業にとって人員補充の難易度が上がるように感じてしまうかもしれません。しかし、求人の書き方など工夫次第で、希望する人材を自社求人へ集めやすくなるので、ぜひ下記をチェックして採用にお役立てください。
事業内容や業務内容を詳しく、わかりやすく記載する
自社求人に適した人材からの応募を集めるためには、事業内容や業務内容など、仕事に関する情報を詳しく、なおかつわかりやすく記載することが大切です。求職者が求人情報を読んだとき、「この仕事に就いたらどんな働き方になるのか」を鮮明にイメージできるような書き方にしましょう。
求人を書くときは、以下のポイントを意識すると、求職者が働き方をよりイメージしやすくなります。
- どんな事業をしている会社なのか?
- 募集している業務内容は何か?
- 基本的な業務量はどの程度か?
- 取り扱う商品やサービスの特徴は?
- 対応する顧客の特徴は?
必要なスキルや業務経験を詳しく、わかりやすく記載する
仕事の内容だけでなく、必要なスキルや業務経験なども詳しく、わかりやすく記載しましょう。自社で採用したい人材にもっていてほしいスキルや業務経験を詳しく説明しておけば、対象となる求職者が求人を読んだときに、「これは自分に当てはまる募集内容だ」と感じてもらえる可能性が高くなります。
たとえば事務職を募集する際、「PCの操作スキルが必要です」と簡単に説明することもできます。しかし、「PowerPointやWord、Excelなどを使って資料を作成していただきますので、オフィスソフトの操作スキルが必要です」とより具体的に記載した方が、対象となる求職者に刺さる求人となるでしょう。
どんな人柄・考え方の人に向いているか記載する
自社の文化や社風、企業理念に合わない人を採用すると、周囲に馴染めず早期退職されてしまったり、社内の人間関係に悪い影響が出てしまったりするリスクがあります。求人には業務内容や必要なスキル・経験などに合わせて、「どんな人柄・考え方・価値観の人に向いている仕事なのか」もわかりやすく記載しましょう。
求職者の背中を押す内容を盛りこむ
求人に求職者の背中を押す内容を盛り込むことも大切です。「自分に当てはまる応募条件だけど、実際にできるかどうかが不安…」と応募するか迷っている求職者の背中を押すような内容があれば、求める人材からの応募を増やせる可能性が高くなります。
自社の応募条件に該当する求職者から「自分にもできそう!」と感じてもらうために、以下の内容を求人情報にプラスするとよいでしょう。
- 入社の時点でもっていてほしい知識
- 入社後の教育・研修制度の内容や流れ
- 新入社員が独り立ちするまでの期間
- 入社後、はじめに担当する難易度の低い業務内容
試用期間を設けてミスマッチのリスクを抑制する
なるべく書類選考や面接の段階で求職者を見極められるのがベストですが、求職者の能力や人柄のすべてを選考中に判断するのは至難の業です。企業と求職者のミスマッチのリスクを抑制するため、本採用前に一定の試用期間を設けるのもよいでしょう。
試用期間があれば、企業側は「本当に自社で求めている人物像かどうか」を判断しやすくなります。求職者側は「自分に適した会社かどうか・働きやすい環境かどうか」などを実際に働きながら判断できるため、試用期間は双方にメリットがあるといえます。
ただし、試用期間があまりにも長いと、応募の段階で求職者から敬遠される可能性があるので注意しましょう。試用期間は3ヶ月程度が一般的です。
まとめ
採用における年齢制限は原則禁止されていますが、定年年齢を上限として採用する場合など、例外的に年齢制限が認められているケースもあります。
しかし例外的に認められているケースでも、「年齢制限は可だが職業経験は不問とすること」など、さまざまな規制があるため、違反しないよう注意する必要があります。厚生労働省の資料を確認しながら、規制の範囲内で求人をつくるようにしましょう。
年齢制限を設けずに求める人材を採用しやすくするためには、募集の段階で求人情報に「業務内容・必要なスキル・求める人柄などをわかりやすく記載する」「求職者が応募しやすくなるような内容を盛り込む」などの工夫をすることが大切です。
求人に工夫を施し、試用期間を設けてミスマッチのリスクを抑制すれば、年齢制限を設けずに求める人材を確保できる可能性が高まるでしょう。
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