2025年問題とは? 企業への影響や実施するべき対策を解説
近年、ニュース番組などで「2025年問題」という言葉を耳にする機会が増えています。2025年問題とは「団塊の世代」が後期高齢者となって、日本社会が超高齢化することにより、医療や介護福祉など多くの分野に影響が出るという社会問題です。
2025年問題は、少子高齢化が進む日本にとって避けて通れない問題です。しかし企業としては「具体的にどんなことが起こるの?」「企業がやるべき対策は何?」と戸惑う場合も多いでしょう。
そこで本記事では、2025年問題についてわかりやすく解説します。
- 2025年問題が社会に及ぼす影響
- 2025年問題が企業に及ぼす影響
- 企業が実施するべき対策
上記の内容を解説しますので、今後の方針策定にお役立てください。
目次[非表示]
- 1.2025年問題とは?
- 2.2025年問題の社会への影響
- 2.1.社会保障費の負担増加
- 2.2.医療・介護業界の人材不足
- 2.3.さまざまな業界の後継者不足
- 2.4.ビジネスケアラーの増加
- 3.2025年問題の企業への影響
- 3.1.人材確保の難易度が上昇
- 3.2.事業の後継者不足
- 3.3.既存体制の維持が不可能に
- 4.企業が実施するべき2025年問題の対策
- 4.1.労働環境の改善
- 4.2.M&Aを活用した事業継承
- 4.3.DXによる業務効率化・生産性向上
- 4.4.外部リソースの活用による人手不足解消
- 5.まとめ
2025年問題とは?
2025年問題とは「団塊の世代」が後期高齢者となって、日本が超高齢化することにより、医療や介護福祉など多くの分野に影響が出る社会問題です。
団塊の世代は1947年~1949年生まれの世代で、第一次ベビーブームの頃に誕生しました。日本の人口構成比で大きなボリュームゾーンを形成しており、さまざまな業界の成長をけん引してきた世代でもあります。
2025年は人口のボリュームゾーンを占める団塊の世代が、75歳以上の後期高齢者となるため、あらゆる分野で人材不足などの課題が生じるとされています。厚生労働省では、2025年に以下のような変化が起こると発表しています。
- 高齢者の人口比率が増加
- 認知症高齢者の急速な増加
- 首都圏など都市部の高齢者人口の増加
- 高齢者世帯(一人暮らし・高齢夫婦のみ世帯)の増加
参考:厚生労働省「今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢化社会像~」
2025年問題の社会への影響
続いて、2025年問題が社会へ及ぼす主な影響を4つ解説します。
社会保障費の負担増加
社会保障費とは「年金の受給額・生活保護費・医療介護の自己負担分以外の給付額」といった国や地方公共団体が支出する費用の総称です。人口の高齢者比率が増えると、高齢者層に年金や医療介護を提供するための社会保障費が増加します。
2025年は日本の人口における後期高齢者の割合が増加するため、高齢者層に対して支出される社会保障費も大幅に増加すると予想されます。
しかしその一方で、社会保険料を支払い、社会保障制度を支えている現役世代は減少します。増加する社会保障費を、減少している現役世代で支える状況となるため、「従来通りの社会保障制度を今後も維持できるか」「いかにして現役世代の負担を軽減させるか」が課題となっています。
医療・介護業界の人材不足
2025年以降、75歳以上の後期高齢者が急増するため、医療や介護業界の人材不足も懸念されています。後期高齢者は、ほかの世代に比べて病気・けがのリスクが高くなるためです。
また、認知症などにより自力で日常生活を送ることが困難となり、介護を必要とする高齢者も増えるでしょう。
医療・介護業界はただでさえ慢性的な人手不足が問題となっているため、後期高齢者が増加すれば、現状のサービス体制を維持できなくなる恐れがあります。
さまざまな業界の後継者不足
2025年問題により人材不足に悩まされる業界は、医療・介護だけではありません。少子高齢化社会では、労働を担う現役世代が減少するため、さまざまな業界で労働力不足が起こり、事業継承や技術の伝承が難しくなります。
後継者がおらず、廃業せざるを得なくなる事業者も増えるでしょう。人材不足によって多くの企業が衰退し、日本経済の全体的な悪化を招く可能性もあります。
ビジネスケアラーの増加
ビジネスケアラーとは、仕事をしながら家族や同居人などの介護をする人のことです。2025年問題が起こると、後期高齢者の増加にともない、全国的にビジネスケアラーが増加するといわれています。
ビジネスケアラーのなかには、仕事と介護の長期的な両立が難しくなり、離職を余儀なくされる人もいます。ビジネスケアラーが増えることで離職者が急増したり、労働者の生産性が低下したりすると、日本経済にとっては大きな損失となります。
2025年問題の企業への影響
次に、2025年問題が企業へ及ぼす主な影響を見ていきましょう。
人材確保の難易度が上昇
社会の少子高齢化が進むと、労働力人口が減少するため、企業は人材を確保するのが難しくなります。企業同士の採用競争が、今までよりもさらに激化するでしょう。
人手不足が特に懸念されている業界は、次の4つです。
- 運送業界
- 建設業界
- 医療・介護業界
- IT業界(ITエンジニア)
上記は今後、人材不足が特に深刻化すると予想されている業界です。労働者の待遇や就労環境を改善して人手を集めたり、DXによる業務効率化を実施したりするなどの対策が求められています。
事業の後継者不足
人材不足の深刻化は、事業継承にも影響があります。さまざまな事業で後継者が不足するため、現在の代表者や幹部役員の退職を機に、廃業する事業者が相次ぐ可能性があるのです。
また人材不足には、技術やノウハウの継承が難しくなるという問題点もあります。建築業界など、ベテランの技術を若手へ継承することが重要な業界においても、十分に技術継承できないままベテランが退職してしまうケースが増えるでしょう。結果的に、業務の質が低下する恐れがあります。
既存体制の維持が不可能に
2025年問題のなかには「2025年の崖」と呼ばれる課題もあります。2025年の崖とは、経済産業省が2018年に「DXレポート」で提唱した概念のことです。
DXレポートでは、2025年以降に起こる問題として、以下のような事柄が指摘されています。
- さまざまな産業でデジタル技術が活用されている一方、既存システムが複雑化・老朽化・ブラックボックス化している
- 既存システムが抱えている問題を解決できない場合、業務のDXが妨げられ、最大12兆円の経済損失が出る可能性がある
既存のシステムが抱えている問題を解消し、業務のDXを推進できなければ、業務効率化や生産性向上が難しくなります。その結果、従来通りの組織体制を維持できなくなるでしょう。
組織体制の崩壊により、企業の競争力が衰退する可能性もあるため、全従業員のITスキル・知識のアップデートが必要となります。
企業が実施するべき2025年問題の対策
ここからは前述した2025年問題の影響を踏まえて、「企業が実施するべき2025年問題への対策」を4つ解説します。
労働環境の改善
2025年問題によって、人材不足が加速化します。その結果、企業間の採用競争が激化するので、人材を確保するためにさまざまな工夫を講じる必要があります。
- 長時間労働の是正など、働きやすい労働環境を整備する
- 給与や休暇制度、福利厚生など労働者の待遇を改善する
- リモートワークを導入するなど、多様な働き方ができる体制を構築する
上記のような対策を講じることで、求職者から選ばれやすくなり、新たな人材を採用しやすくなるでしょう。加えて、社員の定着率が向上すれば、自社から貴重な人材が流出してしまう事態も防ぎやすくなります。
M&Aを活用した事業継承
M&Aとは「Mergers(合併)& Acquisitions(買収)」の略です。広義な意味合いとして、企業の合併・買収・提携までを指す場合もあります。
親族や従業員内で後継者が見つからず悩む企業のなかには、M&Aを活用して第三者へ事業を継承するケースも見られます。M&Aを使うことによって、廃業を避けられる可能性があるので、検討してみるとよいでしょう。
中小企業庁では、後継者不足に悩む中小企業の代表者に対して、M&Aのマッチング支援を実施しています。ただし、事業継承には平均して5~10年ほどの準備期間が必要であるため、M&Aを活用するにしても、専門機関へ早めに相談したほうがよいでしょう。
DXによる業務効率化・生産性向上
DXはデジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略です。企業がデジタル技術を活用して、業務プロセスの改善・組織の改革・商品サービスの改善などを実施し、競争上の優位性を高めていくことを指します。
2025年以降は労働人口が減少し、多くの企業で人材不足となるため、DXを推進して業務効率化・生産性向上に取り組む必要があります。既存システムを見直して、新たにDXを推進し、なるべく人手を削減できる体制を構築しましょう。
しかしDXを社内の人員だけで進めるのは、難易度が高いでしょう。外部の専門サービスを利用するなど、専門家と連携しながら進めていくのがオススメです。
外部リソースの活用による人手不足解消
企業の人材不足に対応する手段は、自社で採用を強化したり、社員の定着率を向上させたりするだけではありません。BPOを導入するなど、外部の人的リソースを使って、社内の人手不足に対応する方法も有効です。
BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシング(Business Process Outsourcing)の略で、業務プロセスを部分的に外部業者へ委託することを指します。
BPOを導入して業務プロセスを外部委託すれば、社内の人的リソースに空きが生じるため、社員がコア業務に注力しやすくなるでしょう。
また、各業務の専門業者へ業務委託することにより、社内の人員だけで行なっていたときよりも、業務の精度や速度が上がる可能性があります。BPOは企業の経営戦略としても有効なので、活用するとよいでしょう。
まとめ
2025年問題が社会に及ぼす影響・2025年問題が企業に及ぼす影響・企業が実施するべき対策などを解説しました。2025年には、日本の人口比率のなかで大きなボリュームゾーンを占める団塊の世代が、後期高齢者となります。
社会の超高齢化が進むことにより、あらゆる産業で人材不足となり、後継者不足などに悩む企業が続出するでしょう。企業間の人材採用競争も激化するため、人手を確保するためには、これまで以上の工夫が必要となります。
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