服務規律とは? 就業規則との違いや定めるべき内容、企業が関与できる範囲
服務規律とは、会社で働くうえで、従業員が守るべきルールのことです。服務規律は社内の労働環境を整え、トラブルを防止するために重要視されています。
本記事では服務規律について、わかりやすく解説します。服務規律と就業規則の違いや、服務規律で定めるべき内容、会社が命令できる範囲などを詳しくご説明しますので、社内環境を整備するための参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.服務規律とは?
- 1.1.服務規律と就業規則の違い
- 1.2.服務規律が必要とされる理由
- 2.服務規律で定めるべき内容
- 2.1.労働者が遵守すべき義務
- 2.2.服装・身だしなみに関する規定
- 2.3.ハラスメントに関する規定
- 2.4.SNSの利用に関する規定
- 2.5.会社設備・施設の利用に関する規定
- 2.6.遅刻・早退など勤怠の規定
- 2.7.秘密保持義務・個人情報保護
- 2.8.兼業・副業に関する規定
- 2.9.競業避止義務について
- 3.服務規律によって会社が命令できる範囲
- 3.1.服務規律で会社が従業員へ命令できる範囲
- 3.2.パワハラに該当する可能性がある範囲
- 4.まとめ
服務規律とは?
服務規律とは、会社で働くうえで、従業員が守るべきルールのことです。会社が服務規律を定め、従業員が従うことにより、社内の秩序が保たれます。
服務規律は社内環境を整え、トラブルを防止するために重要です。細かい内容は会社により異なりますが、一般的には服務規律によって、以下のようなルールが定められているケースが多くあります。
- 指揮命令系統に従うこと
- ハラスメントの禁止
- 勤怠に関するルール
- 副業・兼業の可否について
- 秘密保持義務・個人情報保護
- 会社の設備・備品の利用ルール
- 服装や頭髪など身だしなみのルール
- SNSにおける機密情報の書き込み制限 など
服務規律と就業規則の違い
服務規律と似ている用語に「就業規則」があります。就業規則とは、従業員が守るべきルールや、労働条件などをまとめた規則集のことです。
服務規律は、就業規則の一部に当たります。そのため就業規則のなかで「第〇章 服務規律」のように記載される場合が多くあります。
また就業規則には、労働基準法で必ず明記すべきと定められている「絶対的必要記載事項」と、制度などを導入した場合に明記すべきとされている「相対的必要記載事項」が記載されます。
絶対的必要記載事項には、賃金・労働時間・労働期間などが該当します。相対的必要記載事項には、賞与や表彰制度などが該当します。
なお就業規則は、常時雇用労働者が10人以上である場合、必ず作成して労働基準監督署へ届け出なくてはなりません。
服務規律が必要とされる理由
服務規律の主な目的には、以下の2つが挙げられます。
- 社内の秩序を維持する
- コンプライアンス遵守への意識を高める
服務規律の作成は、会社の義務ではありません。しかし、服務規律をきちんと定めることにより、社内の秩序が保たれてトラブルを抑止できる効果があります。
社内の就労環境が整備されれば、従業員が働きやすくなるため、業務効率が良くなり生産性も向上するでしょう。服務規律は社内の秩序を維持し、従業員が気持ちよく働ける環境を整えるために、重要な要素であると考えられています。
服務規律で定めるべき内容
ここからは、服務規律で定めるべき内容を9つ解説します。服務規律の内容は、基本的に企業が任意で決められますが、「何を定めればよいか分からない…」とお困りの場合は、まず以下の9点に関するルールを決めるとよいでしょう。
労働者が遵守すべき義務
労働者が遵守すべき義務には、「誠実労働義務・職務専念義務・企業秩序遵守義務」があります。それぞれの概要と例を以下にまとめましたので、参考にしてください。
誠実労働義務 |
責任感をもって誠実に労働すること ▼誠実労働義務の例
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職務専念義務 |
勤務中は職務に専念すること ▼職務専念義務の例
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企業秩序遵守義務 |
社内の風紀秩序を維持すること ▼企業秩序遵守義務の例
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服装・身だしなみに関する規定
業務に支障が出ないようにするため、企業が従業員の勤務中における服装・身だしなみを、服務規律によって制限することが認められています。
たとえば、飲食サービス業や食品製造業において、衛生面に注意するため爪や髪などを清潔に保つこと。勤務中は指定の作業服を身につけることなどは、服務規律によって制限可能です。
接客業ではお客様に不快感を与えないようにするため、派手な頭髪や華美なアクセサリーを禁止する場合もあります。ただし、従業員のモチベーション低下を招く恐れがあるため、身だしなみを過度に制限しないよう注意しましょう。
ハラスメントに関する規定
厚生労働省によりパワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントへの防止対策が、事業主へ義務づけられています。服務規律でハラスメントに関する禁止規定を設け、社員へ周知徹底させましょう。
また、ハラスメントを禁止するだけでなく、従業員が被害にあったとき相談できる窓口を設置し、その利用に関しても規定する必要があります。
SNSの利用に関する規定
SNSでの情報漏洩や会社への誹謗中傷などにより、取引先や従業員とトラブルになる事例が増えています。
従業員のプライベートでの言動を、会社が完全に制限することはできませんが、業務に支障をきたさないよう、仕事に関する範囲で規定を設けることは可能です。トラブルを防ぐため、以下のような規定を設けておきましょう。
- SNS等インターネットで会社や従業員を誹謗中傷しない
- SNS等インターネットで会社や顧客の情報を漏洩しない
- 自社のSNSアカウントを使って個人的発信をしない
会社設備・施設の利用に関する規定
勤務時間中だからといって、会社設備や施設を好き勝手に使用されると、業務に支障が出る可能性があります。服務規律には、会社設備や施設の利用に関するルールも記載しておきましょう。
たとえば「無許可で会社の備品を持ち出さない」「許可なく会社施設を長時間利用しない」などが会社設備・施設の利用規定に該当します。
遅刻・早退など勤怠の規定
服務規律には、従業員の勤怠に関するルールも、記載しておく必要があります。たとえば「遅刻・早退・中抜け・欠勤などが発生する際は、原則として上長に事前申請する」などの規定を設けましょう。
また、服務規律や就業規則には、遅刻・早退・中抜け・欠勤の際に賃金を控除する旨を記載しておきます。原則として「ノーワーク・ノーペイ」であるため、本来は賃金控除の旨を記載する必要はありませんが、従業員とのトラブルを防止するため、明記したほうがよいでしょう。
秘密保持義務・個人情報保護
従業員が企業や顧客の情報を漏洩しないよう、秘密保持義務・個人情報保護について定めましょう。たとえば秘密保持義務・個人情報保護の規定には、以下のような例が挙げられます。
- 企業や顧客の機密情報を外部へ漏洩しない
- 業務に関係のない情報を不当に取得しない
- 退職するときは在職中に得た機密情報を速やかに返却する
兼業・副業に関する規定
近年は会社に勤めながら副業したり、兼業したりする労働者が増えています。労働者には職業選択の自由があるため、会社が副業・兼業について完全に制限することはできません。
ただし、自社での業務に支障が出ないように、ある程度は規定を設けられます。たとえば「兼業や副業をする場合は、会社に事前申請して許可をとる」「副業・兼業は業務に支障をきたさない範囲で行なう」などのルールを定めるとよいでしょう。
競業避止義務について
競業避止義務とは、企業が競争を避けるため、従業員に対して競合他社への転職を原則禁止することです。自社の機密情報漏洩などを防止する目的もあるため、多くの企業が競業避止義務を設けています。
しかし前述したように、労働者には職業選択の自由があります。企業が競合他社への転職を一切禁じるのは難しいため、「競業禁止する期間・職務・地域・業務内容」などは、合理的範囲に留める必要があります。
服務規律によって会社が命令できる範囲
服務規律は、社内の秩序を維持するために重要なものです。ただし、会社が服務規律によって従業員へ命令できる範囲には限りがあります。
服務規律で会社が従業員へ命令できる範囲
本来、従業員には自己決定権があるため、髪型や髪色、爪の長さ、メイクなどは、従業員一人ひとりが自己表現をどのようにするか自由に判断できます。そのため、服務規律によって会社が従業員へ命令できる範囲は、以下のような内容に限られます。
- 社内の秩序維持を目的とした規定
- 業務内容に対して合理的な範囲の規定 など
たとえば、社内秩序の維持を目的とした規定には、ハラスメントの禁止や勤怠のルールなどが当てはまります。
業務内容に対しての規定には、「飲食業において、衛生面を担保するため爪の長さを適切に保つこと」「製造業の現場において、巻き込み事故を防ぐため服装(袖や裾の形状等)を指定すること」などが該当します。
パワハラに該当する可能性がある範囲
原則として、服務規律違反における処分の妥当性とパワーハラスメントは、別という扱いとなります。しかし以下のような場合は、従業員が訴訟を起こした際、裁判によって「パワーハラスメントに該当する」と判断される可能性があります。
- 業務内容に対して合理的な理由がない規定を強いること
- 事業者の好みにより従業員の身だしなみを強制すること など
上記のように事業者が職場での優位性を用いて、従業員へ過度なルールを強いたり、不当な懲戒処分を下したりすると、ハラスメントに該当する可能性があるため注意しましょう。
まとめ
服務規律と就業規則の違いや、服務規律で定めるべき内容、会社が命令できる範囲などを解説しました。服務規律とは、会社で働くうえで、従業員が守るべきルールのこと。服務規律を定めることにより、社内の秩序が保たれ、従業員が安全に気持ちよく就業できる環境を整えられます。
ただし過度な規制を強いると、従業員のモチベーション低下を招いたり、ハラスメントと判断されたりする可能性があるため注意しましょう。服務規律を設けるときは、業務や職務に対して合理的な範囲でルールを定めることが大切です。
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