クオータ制とは?導入のメリット・デメリット、企業に与える影響も解説
女性活躍の推進で注目されている「クオータ制」。日本では大きな課題となっていますが、既に大手企業では導入に動いている企業も。この記事では「クオータ制」の用語解説のほか、導入するメリット・デメリット、導入事例をご紹介します。「クオータ制」の導入が、ビジネスを成功に導くきっかけになるかもしれません。
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目次[非表示]
- 1.クオータ制とは
- 1.1.もともとは政治における制度
- 1.2.企業にとってのクオータ制
- 2.クオータ制のメリット
- 2.1.企業イメージの向上
- 2.2.女性社員のモチベーションアップ
- 2.3.ビジネスにおける競争力の向上
- 2.4.多様性により生まれる新たなアイデア
- 2.5.採用力強化につながる
- 3.クオータ制のデメリット
- 3.1.反対意見への対応が必要
- 3.2.運用負荷がかかる
- 4.クオータ制の導入事例
- 4.1.丸紅の総合職採用における事例
- 4.2.大東建託の管理職登用における事例
- 5.クオータ制は導入すべきか
- 6.まとめ
クオータ制とは
クオータ制とは、人種や性別、宗教などを基準として、現在社会的・構造的に不利益を受けている者に対して、一定比率で人数を割り当てる制度のことを指します。ここでは、ビジネス領域においても注目されるこの制度について解説していきます。
もともとは政治における制度
クオータ制は、もともと政治における男女格差を是正するための暫定的な施策です。「議員の四分の一を女性に」と誤解されることも多いですが、クオータ(quota)は、「割り当て、分配」という意味の英語です。議員候補者の一定数を女性と定め、女性議員を確保するために導入されてきました。女性活躍を推進する「ポジティブ・アクション」の一手法として注目を集めています。
企業にとってのクオータ制
クオータ制は様々な分野で用いられており、ビジネスにおいても活用されています。企業がさらなる成長を目指す上で、クオータ制導入などによる女性社員の活躍が必要だからです。クオータ制度の根幹には、女性の社会参画の推進がテーマにあります。社員の女性比率を高めるための取り組みの一例として、エン・ジャパンの事例をご紹介させてください。
人材業界大手のエン・ジャパンでは、社員構成比は5:5程度、さらに女性社員の職域は多岐にわたります。
▼エン・ジャパンの女性活躍推進の取り組み一例
- WOMenLABO:女性取締役がサポート役となり、女性が働きやすい環境・制度づくりを女性社員中心に推進
- スマートグロース制度:「ライフステージが変わっても仕事を頑張り続けたい」に応える新しい勤務体系を構築
- 復職ママセミナー:育休復帰予定者向けの特別セミナーを開催
このほかにも女性活躍を推進する様々な制度を整えています。各制度の詳細は、以下のサイトをご覧ください。
クオータ制のメリット
活発な議論がなされているクオータ制ですが、メリットやデメリットが気になる方も多いのではないでしょうか。まずここではメリットを解説します。
企業イメージの向上
国内全体で問題となっている女性活躍の推進ですが、実際の状況にもよるため、なかなか実現が難しいところ。そうした中で女性活躍を目指すクオータ制を導入できれば、「変革の姿勢を持っている」「社会問題に向き合っている」といった高い評価を得られるでしょう。
女性社員のモチベーションアップ
クオータ制の導入によって早々に実現されやすいメリットは、女性社員の意欲向上です。女性が幅広い職種にチャレンジし、管理職を担うことができる環境でなら、女性社員はさらにモチベーション高く働けるでしょう。そうなれば、事業の生産性も向上していきます。
ビジネスにおける競争力の向上
内閣府男女共同参画局のアンケート調査によれば、7割近くの機関投資家が、女性活躍情報を活用する理由として「企業の業績に、長期的に影響がある情報と考えているため」と回答。女性活躍の推進は企業の成長につながると考えられており、投資判断にも影響してくるのです。
▼投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由
引用元:内閣府男女共同参画局『ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究(概要版)』
多様性により生まれる新たなアイデア
例えば、これまで男性向けに商品を開発・販売してきた企業において、女性向け商品の展開による事業成長が見込めるなど。女性社員の雇用・採用、そして意見を聞くことで、新たなアイデアが発信されることで、新たなビジネスチャンスが生まれていきます。
また、多様性の実現には、リスク回避の側面もあります。例えば、ある企業が出す広告には、女性にとって望ましくない表現が含まれていた場合。意思決定層にも女性社員がいれば、事前に気づくことができ、意見を挙げられたかもしれません。
採用力強化につながる
クオータ制の導入によって、女性活躍を推進していることを分かりやすくアピールができます。さらに、実態として女性が活躍しやすい環境・制度が整っていることで、女性応募を集めやすくなるでしょう。
少子高齢化や労働人口減少により、今後ますます採用が難しくなると言われています。女性応募を獲得しやすいというのは、企業が継続的な人材獲得を目指す上で、大きな強みとなるのではないでしょうか。
クオータ制のデメリット
新たな制度を取り入れようという中で、もちろんデメリットがあることも事実です。ここでは、クオータ制導入時のデメリットを見ていきます。
反対意見への対応が必要
女性活躍を推進するクオータ制ですが、賛成意見を持っている方ばかりではありません。導入するとなれば、「本当に実効性のある取り組みとなるのか?」「性別よりも実力に目を向けるべきでは?」「逆差別につながる可能性がある」など、制度に対して疑問視する声が社内で上がることも想定されます。こうした反対意見にもきちんと耳を傾け、メリット・デメリットを整理して検討していく必要があるでしょう。
運用負荷がかかる
例えば、女性管理職が出産するとなった場合、代わりとなる人材が必要になります。管理職クラスの人材を採用・育成するのは容易ではありません。さらなる企業成長を目指して新しい取り組みを行なう上で、負担がかかることはあらかじめ了承しておかなければならないでしょう。
クオータ制の導入事例
大手企業の中には、クオータ制の導入を宣言している企業も。ここでは、実際の事例をご紹介します。
丸紅の総合職採用における事例
従来、商社では総合職のほとんどが男性でした。そこで、大手総合商社の丸紅では、事実上のクオータ制導入にいち早く乗り出しています。
2021年の新卒採用時に「3年以内に女性比率を40%~50%に引き上げる」と発表。商社ビジネスは将来的に消えてしまう。だからこそ、新たなビジネスチャンスを開拓していかなければならない―――こうした危機意識が、「同質的な集団からの脱却」を目指すきっかけとなりました。
実際に、採用における女性比率の引き上げを目指すだけではなく、若手の海外勤務や国内外事業会社での現場実戦経験を必須化するなど、様々な取り組みを実施。女性からの応募が増えたこともあり、年々社内の女性比率は上がってきています。
参考:丸紅『女性活躍推進の新たな方針について』
大東建託の管理職登用における事例
大東建託では2021年から、業界で初めてクオータ制を導入した女性育成プログラムが始まっています。同社実施のアンケートで最も回答が多かった「自信がないから昇進を辞退する」という点を解消するため、新たな教育プログラムを設けています。
課長昇進に向けたプログラム(チーフ職)
▼キャリアデザインセミナー
▼管理職候補者研修
▼女性活躍勉強会
▼異業種交流会
他にも、専門委員会の設置、上司向け研修の導入など、様々な施策に取り組む中で見られたのが、「優秀な人材を登用する」から「資質のある人物を発掘する」という方向性へのシフト。女性の活躍推進を目指す上で、まずは活躍人材を育成するという手立てもあるのです。
参考:大東建託株式会社『【女性活躍推進】建設業界初「クォータ制」を導入した女性育成プログラム始動』
クオータ制は導入すべきか
筆者としてはクオータ制の導入をおすすめします。以下では、導入することによって、企業にどんな変化が起こるのかを解説していきますので、ぜひご検討ください。
中小企業の半数以上は女性管理職比率「5%以下」
エン・ジャパンのアンケート調査によれば、中小企業の6割以上が女性管理職比率「5%以下」と回答しています。女性の管理職登用がなかなか進んでおらず、多くの企業にとって課題となっています。
▼「貴社の女性管理職比率はどのぐらいですか?」への回答結果
引用元:エン・ジャパン『中小企業350社に聞いた「企業の女性活躍推進」実態調査 2023』
先駆者として注目される企業に
女性社員の積極雇用・採用により、企業成長が促進されるのはもちろん、企業として革新的な姿勢を示すことにもなります。先駆者となれる今だからこそ、存在感を発揮できるはずです。さらに、SNSやプレスリリースでのアピールなど、女性活躍に関する積極的な発信ができれば、さらなるブランディングとも成り得るでしょう。日本ではまだまだ前例が少ないクオータ制。ぜひ早くから導入してみてはいかがでしょうか。
まとめ
導入により、様々なメリットが生まれるクオータ制。取り入れるためには、女性を積極的に採用していくことが重要です。
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